毎月の支出は平均26万3718円で、毎月の実収入は20万9198円──。
金融庁の金融審議会が5月22日にまとめた「高齢社会における資産形成・管理」報告書案に記された、年金収入で暮らす夫婦世帯(夫65歳以上・妻60歳以上)における平均的な支出月額の数字だ(出典は総務省「家計調査」、2017年)。夫の年金211万円の世帯では国民健康保険料・介護保険料が合わせて年間19万360円となる(横浜市のケース)。一方、住民税がギリギリ課税される年金212万円の世帯では、保険料は合わせて25万2280円。年6万円も負担額が違ってくるのです」(税理士の犬山忠宏氏)
報告書案にはその内訳が詳しく記されているが、その中にいくつも「払わなくていいお金」が潜んでいる。税・保険料をわずかでも減らす手段があるのを利用しない手はない。
まず着目したいのが、毎月2万8240円の「非消費支出」だ。非消費支出とは、総務省の用語解説によれば〈税金や社会保険料など原則として世帯の自由にならない支出〉とある。健康保険料も介護保険料も「死ぬまで払い続けるお金」である(75歳以降は後期高齢者医療制度)。“減らせない支出”のような印象を受けるが、大きな間違いだ。むしろ、税・保険料をいかに賢く減らすかが、定年後の“支出改革”の第一歩となる。
この際に自分の年金額を確認し、年211万円を少し超えているなら、受給開始を前倒して毎月の年金額をあえて減らす「繰り上げ受給」も選択肢になってくる。非課税世帯になると、住民税がゼロになるだけではなく、社会保険料の負担も大きく圧縮できるからだ。
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退職金は、「一括」なら手厚い「退職所得控除」が適用され、一般的な水準であれば所得税はゼロで済む。「分割」で受け取ると毎月の税・保険料の天引きが増えてしまうことがあるので、ちょっとした注意で「非消費支出」を増やさないことだ。
ほかにも、介護している親と「世帯分離」すると介護負担が減る。75歳未満であれば、子供の健康保険の扶養に入って、健康保険料の負担をゼロにすることもできる。減らせる支出を調べて、払わなくて済むお金について、よく知ることが賢い老後といえそうだ。
公益財団法人生命保険文化センターによると、ゆとりある老後を送りたい場合には、「平均で月に35万円程度は必要であると考えられている」とある。もし、厚生年金の受給がある予定であっても、受給額以上に支出する可能性もあるので、自分たちで老後資金を貯めておく必要もあるという。
2019年06月14日
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