今年1月、勾留理由開示手続きで東京地裁に出廷した日産のカルロス・ゴーン前会長も手錠・腰縄姿だった。辣腕経営者のイメージと、逮捕後初めて公の場に見せたみじめな姿との落差に世界も衝撃を受けたようだ。日本では、法廷で被告が手錠・腰縄姿で入退廷する光景は、これまであまり問題にされてこなかった。だが海外メディアには異様な光景に映るようだ。英フィナンシャル・タイムズ紙は同月9日、「ゴーン事件は日本の司法制度を裁判にかける」の見出しで「人質司法」問題を紹介するとともに、ゴーン被告につけられた腰縄も法廷の光景として話題を呼んだと伝えている。
刑事裁判を傍聴すると目にする、手錠と腰縄で拘束された犯罪者然≠ニした被告の姿。かつては当たり前の光景とされてきたものの、弁護士らの間では「(江戸時代の)市中引き回しに等しく、人権上問題がある」との声が高まっている。大阪弁護士会が2015年10月から2年間実施したアンケートでも、多数の被告らが「言いたいことが言えなくなる」「罪人と思われていると感じた」と返答していた。5月下旬に法廷での拘束を問題視した訴訟の判決があった。大阪地裁は「配慮を欠く」と裁判所の責任を明らかにする画期的な判断を示した(共同通信=大阪社会部・武田惇志)
09年からスタートした裁判員裁判では裁判員に拘束具を見せない運用がなされているが、大阪弁護士会のアンケートに回答した被告ら26人のうち、21人が手錠・腰縄姿を傍聴人に見られることに恥辱を感じ、16人が裁判官に見られると「罪人と思われていると感じた」と答えている。
そもそも、刑事手続きを定めた法律である刑事訴訟法は「公判廷においては、被告人の身体を拘束してはならない」と明確に規定している。これに対し、国は「公判廷とは裁判官が開廷を宣言し、閉廷を告げるまで」と主張。法廷ではあるが、入退廷する時間は「公判廷」とはならないとの解釈に立っている。大須賀裁判長もこの点は国と同様の解釈をしている。
だが、お隣の韓国では状況が異なる。韓国の刑事訴訟法にも日本とほぼ同じ条文があり、公判廷での身体拘束を禁じている。韓国の法廷を視察した弁護団によると、被告人は法廷外の待機室で拘束具を外されてから入廷し、退廷後も待機室で拘束されるようになっており、条文に忠実な運用といえる。また、EUでも法廷内での拘束具使用は拘束具を見えないように各国に指示する指令が出されているという。
日本でも最高裁は、特段の事情が認められる場合に限り、公判廷が始まる前に拘束具を着脱できるとしている。つまり例外を認めているのだが、個々の裁判官の判断次第となっており、実際は弁護人が申し入れても聞き入れられない場合が多い。
出典:全国新聞ネット
2019年06月07日
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