2018年のノーベル平和賞受賞者、ナディア・ムラドを取り上げた映画『ナディアの誓い』が公開されることになった。ナディアはISIS(イスラム国)による虐殺と性奴隷から逃れた23歳のヤジディ教徒である。2014年8月までイラク北部の小さく静かな村、コチョ村で母と兄弟姉妹達と幸せに暮らしていた。しかし、ISIS(イスラム国)がやって来て、少数民族ヤジディ教徒の虐殺が始まる。ナディア達も捕らえられ、母親と6人の兄弟は殺されてしまう。殺されるだけではなく、捕まった少女や女性は戦利品として売買や交換の対象となった。彼女は性奴隷として3ヶ月扱われた末、脱出に成功し、ドイツに逃れる。故郷を奪い、家族も殺したISISの虐殺を止め、まだ捕らえられている同胞や、世界中の性暴力被害者のため、彼女は表舞台に立ち続けることを決意する。痛ましい体験を、苦しみながらも繰り返しジャーナリスト、政治家、そして外交官に訴え続けた。そしてナディアは残された同胞のため、2015年12月の国際連合安全保障理事会でISISの虐殺や性暴力についての証言を行い、やがては同郷の人々の希望の存在となっていく。映画は柏キネマ旬報(高島屋S館)でも3月9日(土)〜3月15日(金)上映される。
映画と言えば、2017年の冬、ハリウッドの有名映画プロデューサーからのセクハラ被害を告白した女性たちの行動が、翌年には「Me too運動(私もです)」と名付けて、性的被害を受けたこと黙っていないで告発する、女性ばかりが泣き寝入りする性的上下関係を告発して世界を変えなくては世の中は変わらないのだとの認識が広まっていた。日本でも2018年6月28日、BBCが強姦されたと被害告発した伊藤詩織さんを取材した「Japan’s Secret Shame(日本の秘められた恥)」が英国内で放送した。伊藤さんは2015年4月に著名ジャーナリストの山口敬之氏に強姦されたと、警察に被害届を出した。最初の記者会見を開いたのは、2年後の2017年5月。山口氏の逮捕令状が出たにもかかわらず逮捕が見送られ、証拠不十分として不起訴処分となったことへの不服を申し立てる内容であった。番組ではその会見以降、伊藤氏がSNSなどで激しい中傷や非難を受け続けていることなども紹介している。
お隣の韓国では、翌年1月に女性検事が、検察庁の上司からのセクハラ被害告発をきっかけに、政界、芸能、文化界など業界ジャンルを問わず波紋を広げてきた。韓国で女性検事が検察幹部からのセクハラ被害を訴えた報復で左遷されたと明らかにしたことを機に「私も被害者だ」と名乗り出て加害者の責任を問う声が急速に広がっている。セクハラの背景にある男性中心の組織文化を正そうとする動きも始まり、大統領直属の国家人権委員会が2日、独自調査を始めた。
名乗り出たのは徐志賢検事(44)で、2000年に同僚の親族の葬儀後にあった食事の席で、法相に随行していた検事の安兌根・法務省政策企画団長(当時)から長時間下半身を触られたと、1月下旬に検察内のインターネット掲示板で明らかにした。検察内で日常的に先輩らから「忘れられない夜にするから俺と寝ろ」などと侮辱された経験も書き、末尾にセクハラ告発の象徴になったツイッターのハッシュタグの「#MeToo」を付けた。さらに、JTBCテレビの取材に、被害を上司に訴えた後、慣例に照らすと異様な転勤辞令を受けたと話した。
さらに韓国の「Me too運動」忠清南道の前道知事安熙正(アン・ヒジョン)氏は、廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の最側近も務めたスター政治家であった。秘書の女性が安氏から2017年6月から8カ月間、4回にわたって性的暴行を受けたとテレビで主張した。複数のセクハラ行為もあったという。主に海外出張の際に被害を受けたという。安氏は自身のFacebookを更新し、「すべて、私の過ちです」と全面的に認めた上で、3月6日知事を辞職。また、全面的に政治活動を中止することを表明していた。
その後、ソウル西部地裁は8月14日午前、判決公判で、安氏の性的暴行容疑に対して「無罪」を言い渡した。
判決が報じられた後日、ソウル都心では数万人単位規模のデモ集会が行われた。「無罪」を言い渡した裁判部は、「現行法上の限界」を理由に、未だ立場を変えていない。したがって、当初「司法部も有罪だ」と声高に叫んだ国民たちの目は、国会へと向けられた。「現行法上の限界」であるならば、「現行法」を改正しなければならない。
特に今回批判の対象となっているのは、安前道知事が所属していた与党「ともに民主党」である。無罪判決直後、「ともに民主党」を除く各党は一斉に論評を通じて、判決に対する強い遺憾の意を示している。そこで「性犯罪者を庇護する司法部も共犯」、「安熙正が無罪なら、司法部が有罪だ」をスローガンに、「(今回の無罪判決によって)性暴力被害の告発が、消極的になってはならない」と主張した。
また、韓国では先月、毎年ノーベル文学賞候補として名が挙がる“国民詩人”高銀(コ・ウン)氏(84)のセクハラ疑惑も浮上し、大騒動になっている。朝鮮日報によると、京畿道水原のオリンピック公園内に設置されていた高氏作の慰安婦被害女性への追悼詩碑が、先月末に撤去されたことが明らかになったという。
韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「安氏、高氏の疑惑が事実だとして、地位も名誉もある人を何がセクハラに走らせたのか。それは一にも二にも彼らの名声です。韓国人のセクハラは典型的なパワハラ系です。上司から部下、教師から生徒、牧師から信徒、まれに実の父から娘といった、立場の上下を利用した形で行われます。たとえば、大学教授が女子学生に『単位は心配いらない。その代わりに…』と関係を迫ることなど珍しくないそうです」と指摘する。儒教のゆがんだ解釈からか、韓国では『先生』と呼ばれる人は無条件で偉いと思いたがる風潮があり、この立場の上下が明確にできてしまう構造があるという。
韓国でセクハラといえば、朴槿恵被告(前大統領)の初訪米に随行した報道官が在米韓国大使館のインターンの女性にセクハラを行い、問題になったことがあった。但馬氏は「彼にしてみれば、大使館の見習い学生ごときだから、大統領付きの報道官であるオレの相手をして当たり前、と思っていたフシがある。米国暮らしが長いインターンにはそれは通用しなかったというわけです」と話している。
参照:2018/2/22(共同)
https://www.sankei.com/world/news/180202/wor1802020040-n1.html
2019年02月07日
この記事へのコメント
コメントを書く