『中国新聞』(1/11)の社説に「悪化する日韓関係 冷静な対話で修復図れ」という文章が掲載された。内容は下記のようなもので、現状分析をした上で、この大事な時期に日本の地方新聞社として明快な建設的論説を発表して印象に残った。これまでの事の次第をかいつまんで紹介してもいるので、参考にもなる。
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海上自衛隊の哨戒機が韓国艦から危険なレーダー照射を受けたとされる問題、その以前に起きていた戦時中の元徴用工らへの賠償を命じた韓国最高裁の判決を巡る確執で昨年末は日韓関係がきわめて悪化。それ以前の昨年11月には慰安婦問題の日韓合意に基づいて設立された財団については、大統領が代わってしまうと解散する方針を表明した。日本が拠出した基金による元慰安婦への支援事業が実施できなくなった。
韓国の元徴用工判決で原告側の申請が認められ、日本企業が韓国内で保有していた資産が差し押さえられる事になった。元徴用工側が差し押さえた資産を売却する手続きに入るようなことになれば、経済活動は不可能になり、両国の関係の泥沼化は避けられないだろう。
賠償問題は1965年の日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に解決された」というのが日本政府の立場である。今回の判決に「日韓関係の法的基盤を根本から覆す」と警鐘を鳴らし、適切な措置を講じるよう韓国政府に求めていたが、方向性すら示されなかった。日本政府は対抗措置として国際司法裁判所(ICJ)に提訴する構えだ。これ以上事態を深刻化させないためにも、韓国側は政府間協議に応じるべきではないか。協議をきっかけに、何とか関係修復に向けた流れをつくりたい。
両国間には課題が山積している。12月におきた海上自衛隊機への火器管制レーダーの照射問題は、ミサイルなどの発射直前に照準を目標に合わせるために行う。不測の事態を招きかねない危険な行為であり、看過できないことであり、日本側が抗議するのも当然である。日本側が「証拠」とする動画を公表すれば、韓国側も反論の動画公開で応じ、かたくなに反発する韓国側の姿勢は理解に苦しむ。その時点で韓国側が経緯や事実関係を丁寧に説明し、再発防止策を議論すれば、問題がここまで大きくなることはなかったはずだ。
北朝鮮の核・ミサイル開発問題をはじめ、北東アジアの平和と安定に向け、両国は緊密に連携し合わなければならない関係にある。冷静な対話を基本に、粘り強く関係修復を図っていかなければならない軍事機密も絡み情報が限定的なためか、謝罪や処分を求める感情的な議論に終始しているようにさえ映る。事を起こしてた当人が相手に謙虚さを求めるようでは、対立構図をエスカレートさせるばかりで、引くに引けない状況を加速させている。ここで、長いアジアの歴史を持って、双方の知恵者が局面を転換させるような取り組みが提示させられるよう求められる。
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河野外相は「日韓の姉妹都市で交流を中止する動きが散見される」と指摘。政府間が問題を抱えている時こそ市民レベルで友好関係を維持していくことが重要とし、文化やスポーツを通じた交流を続けるよう呼び掛けた。一連の判決で、韓国側の交流中止といった具体的影響が出始めている点を憂慮し、「韓国政府には速やかに対応していただくよう期待したい」と強調。未来志向の日韓関係を目指す動きに水を差さないようくぎを刺した。
北風に太陽というイソップ寓話があるが、賢明に対処してこそ未来があるというものだ。日韓の両国民は韓国のメディアや組織がどう動くのか、その背景や構造を読み解くべきだ。彼らは、日本政府の一挙手一投足を北風のように身構えて反発してくる。韓国の若い世代も時のリーダーに振り廻されるものの、金大中大統領以降に日本文化の解禁政策をしてからは韓国国民も日本文化を公然と取り入れられるようになった。ただただ韓国政府が反日を掲げて急場しのぎの便法にしてきたか、そんなことばかりを調べるだけでは賢明な対応ではない。国際法で認められた経過処理を承認することを拒むリーダーであっても、21世紀において、そうしたリーダーの言動がどのような背景で弄されているか、検索して調査をするだけで、事実が突き詰められていく、そういう時代だ。であるから、賢明な市民は、我が身と将来を考えて、未来志向で解決すべき道を探すべきであろう。21世には平和的解決を望むなら、方向は見出されるものである。時代を経て生き残ってきた末裔である私たちのDNAに平和や助け合うことの重要性が刻まれてきたはずなのだ。民主的な社会を願う市民社会にあって、時代に不似合いなリーダーが出現する事もあるわけだけなので、その考えを糺すようにしていくのが21世紀の市民社会なのである。
安倍晋三首相も文大統領もそれぞれ、21世紀にあって当然ながら「未来志向」の日韓関係の構築を強調している。不毛な対立を続けても、何らプラスにはならない。まず両国がなんらか意思疎通を図り、関係を修復する重要性を確認し合う必要がある。
追記につづく・・・・
他方、『河北新聞』(1/8)の社説「日韓関係泥沼化/韓国側の主張は説得力欠く」は日本側に非がないことを強調し、冷静に対処すべきと次のように書かれたものであった。
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二つの問題のいずれもが韓国側に端を発し、日本側には少なくとも非難されるような落ち度はない。日本としては引き続き、国際法と国際常識に基づいて、冷静な対応を重ねるほかはあるまい。
レーダー照射は昨年12月20日午後、石川県の能登半島沖の日本海で韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に対して行った。誤射ではなく意図的な照射だとみて間違いない映像が防衛省公開の動画で明らかだ。
韓国側の説明はこれまで二転三転し、先日公開した反論の動画でも照射を否定するような新たな証拠は含まれていない。哨戒機が駆逐艦に向かって威嚇的な低空飛行をしたという韓国側の主張も説得力に欠ける。
誤射であれば、現場での哨戒機と駆逐艦の無線のやりとりで解決できた問題だ。意図的な照射であれば、極めて危険で重大な事案だが、日本側が抗議した時点で、韓国側が事実関係を説明し謝罪すれば、これほど大きな問題には発展しなかったろう。
韓国のこの問題に関する対応は極めて不可解であり、違和感を禁じ得ない。信ぴょう性に乏しい主張からは、韓国が感情的な反発に終始しているようにさえ映る。
もう一つの問題、元徴用工判決に関しても解決の糸口は見えない。賠償問題は1965年の日韓請求権協定によって解決済みなのは周知の通り。元徴用工に対する損害賠償の主体は韓国政府自身であり、事実、昨年12月20日、新たに元徴用工や遺族ら約1100人が損害賠償を求めて提訴した相手は、韓国政府だ。
請求権協定に基づき日本が提供した経済協力資金は、元徴用工らへの個人補償としては十分には使われなかったという原告側の主張は、これまでも指摘されてきた。元徴用工への個人補償はあくまで韓国の内政問題だ。
日本政府は国際司法裁判所(ICJ)への提訴を指すものとみられる。この問題に対して韓国側が主体的な対応を明らかにしていない以上、安倍首相が言及した対抗措置の内容は不明だが、淡々と法的な措置を取るのはやむを得まい。
一方のレーダー照射問題は日韓の防衛当局者による実務協議の開催が模索されているが、曖昧な妥協はするべきではない。国際社会が納得できる、国民の目に見える形での明快な決着が望まれる。
2019年01月19日
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