ただし、日韓関係に大きな影響を与える問題について韓国側が軽く考え、日本側が過剰反応する構図がなくなったわけではない。その典型が慰安婦問題である。慰安婦問題に対する関心は今や、韓国より日本の方が高い。日本のことを知らない韓国の政府当局者やメディア関係者にそう言うと必死に否定するけれど、そうした反論は「被害者である韓国の方が強い思いを持っていて当然だ」という思い込みから出ているものにすぎない。日韓の状況をきちんと比較して反論してくる人には会ったことがない。
韓国世論に絶大な影響力を持っていると言われることの多い「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、旧韓国挺身隊問題対策協議会=挺対協)」にしても、実態以上に評価されている面がある。この団体は今年初め、青瓦台(大統領府)サイトのシステムを使って電子署名集めをしたのだが、結果は30日間で20万人という目標を大きく下回った。団体幹部は「平昌冬季五輪の期間中だったから大々的な署名集めをしなかった」と釈明したが、集まったのは、1919人だったのである(署名集めの経緯については毎日新聞サイト「政治プレミア」のコラム「挺対協は過大評価されていないか」https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20180727/pol/00m/010/004000d で詳しく紹介した)。
その結果もあるのだろうか「慰安婦の日」の式典では文在寅大統領が演説で、2015年の日韓合意に直接は言及せずに「この問題が韓日間の外交紛争につながることを望まない」と語った。むしろ、「慰安婦問題は韓日間の歴史問題にとどまらず、人類の普遍的な女性の人権の問題だ」「私たち自身と、日本を含む全世界が反省し、二度と繰り返さないという教訓にすることで、初めて解決できる」と訴えた。不可逆的に、未来に向けてとの合意を、文大統領が結果的に踏襲していた事になった。国民の感情を煽ることも、国際社会の認識が韓国政府寄りになることもないとの状況になりつつある。また、これまで韓国国民が過去の事実としての慰安婦問題を知ったうえで、且つ日本政府が、韓国に国家賠償をまったくしていこなかったという、軍政政権の朴政権時代からの刷り込みも単に鵜呑みをするのでもなくなったということだろうか。
日韓合意ですべて解決したとは言えないものの、この夏にあっては、北朝鮮との国交問題が浮上して、新たな歴史認識が始まっている最中に、日本に対して辛辣に再交渉を求めるようなことはしない、従来の姿勢を改めた形で強烈に触れないという事を示した。この問題を荒げる形で深く立ち入る考えを持っていないことの再確認だとも言える。
日本の新聞の中には「国内の求心力維持に『歴史カード』を使い続ける姿勢を改めて鮮明にした」と評価するものがあったけれど、これは的外れである。むしろ、韓国社会における日本への憎悪感が低下、それを国民の感情を揺さぶるのに政権をまとめる求心力として利用する程の効果を対日外交に期待するのは難しくなっているからだ。
そうしたことから、今年に初めて国家記念日「慰安婦の日」であったが、韓国メディアも文大統領の演説を報じたものの、ほとんどの新聞は5面や6面で取り上げた程度だった。慰安婦問題に熱心な進歩系紙「ハンギョレ新聞」でさえも、社説で取り上げた主要紙はゼロだったのであった。
参照:WEDGE Infinity(8月17日)
【ジュネーブ=三井美奈】国連人種差別撤廃委員会の対日審査は17日、2日目の会合が行われた。日本政府代表の外務省の大鷹正人・国連担当大使は、慰安婦問題をめぐって会合中に委員から「性奴隷」という表現が使われたとして、「事実に反し、不適切」だと抗議した。
これに対し、鄭鎮星委員(韓国)は「性奴隷という言葉は1990年代から国連機関で使われている」と反論した。
日本側は、アジア女性基金を通じて元慰安婦への償い金支給や福祉支援を行ってきたと説明したが、鄭委員は「基金は徹底的な調査なしに設立された。償い金受け取りの拒否は難しかった」と述べた。
また、2015年の日韓合意で両国が「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したとする日本の主張に対し、ガイ・マクドゥーガル委員(米国)は「政府間の合意で、個人の要求を消すことはできない」と発言。慰安婦への謝罪が必要だと主張した。マルク・ボシュイ委員(ベルギー)も「政府間の合意で解決はできない」と述べた。
大鷹大使は、女性を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の話がもとにあり、それを正義の報道と思い込み取材して繰り返し報道した朝日新聞が誤認を認めて謝罪した経緯があったが、さらに韓国系、中国系の反日運動家の思惑に適って慰安婦問題が世界的に広がったことに言及した。
不正確な情報が流布したことで「双方にとって、事実認識の誤解で溝をさら深めるという不幸な側面があった。この新聞は、裁判の経過を経ながらも事実認識に遅れがあったものの、21世紀において正式に誤報であったとの公表し、新聞販売部数に影響も考えられたが、不正確な報道で世間をほんろうしたとの謝罪をした」と述べ、委員に客観的評価を求めた。
会合では、さらに人種差別的なヘイトスピーチへの対策、アイヌの人々の権利保護を求める声も出た。
委員会は今回の審査を踏まえ、30日に日本への勧告を公表する。
参照:産経デジタル8/17
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