子ども達が独立して、妻の介護をされた後のようすを独白する、ブログがあり、最近のシニアの転居事情を考えさせる内容のようで興味深く読みました。
「一人暮らしでは、広いだけの古びたキッチンで自炊する気も起きません。しかし、外食しようにも、住宅地の中には数軒の飲食店しかなく、その多くが、夕方5時を過ぎると店じまいしてしまいます。結局、住宅地内で賄える夕食は、コープの寿司パックかお弁当屋さんの限られたメニューしかありません。夏は蒸し風呂のような暑さ、冬は隙間風の通るだだっ広い木造住宅の中での暮らし、いやでも1日3回直面する食事の極めて限定されたメニュー・・夢のマイホーム生活はこんなはずでは無かったのに、どこでどう狂ったのでしょう。ついに私は音を上げざるを得ませんでした。
ちょうどその頃、神戸の都心で勤めていた娘が賃貸マンションを出て、落ち着いた住まいを考えたいと言い始めました。自宅からバス便での通勤は現実的に無理で、勤務先の近くで賃貸暮らしをしていたのです。そんなことがキッカケで、都心の三宮周辺での物件探しを始めました。その時、たまたま目についたのが、現在の私の住まいとなったマンションでした。誰の案内もなく、いきなり現地を訪れた私は、一味違う外観に惹きつけられ、マンションのコンシェルジュさんに声を掛け内部を案内してもらいました。2月下旬の未だ寒さの厳しい頃でしたが、エントランスを入るや空調の効いた応接スペースに入るマンションの暖かさが印象的でした。
駅から徒歩10分というロケーションも文句ありませんでした。驚いたのは、その価格で、バブル崩壊後、下落を続けた郊外住宅地の旧住宅の売却資金の半分程度という水準だったのです。つまり、郊外住宅地の普通サイズの一戸建て住宅とほぼ等価と言うことです。
この十分に充実した設備を備えたマンションがこの格安な水準なのは、充実した共用施設が主としてシニア層をターゲットとしており、その分、やや管理費がかかることもあってか、購買層として住宅需要の中心である子育て世代のファミリー層が入ってこないのが特色といえます。
百貨店、数多くのスーパー、数々のショッピング=ビル、四方八方に伸びる地下街、等々、一体いくらの店舗があるのか、計測することすら不可能です。飲食店舗の数とジャンルの多さも圧倒的です。元町駅周辺まで含めると、その数は膨大なものになるでしょう。しかも、そのほとんどが遅い時間まで店を開け、賑わっています。書店、映画館、図書館、イベントホール、博物館、等の文化施設も言うまでもありません。銀行、証券会社は勿論、市・区役所、旅券事務所すら揃っています。この地区に無いものを挙げる方が難しいでしょう。」
この方は、心機一転されて、新しい場所での再スタートをされました。60代から70代の世代には1980年代から90年代前半にかけて、職住接近を諦めざるを得ず、通勤1時間を超える郊外の一戸建てを購入した人が多い。
そうした一戸建ては基本的に2階建てだが、年齢とともに階段の上がり下りがつらくなる。また坂の多い地域では、その上り下りがつらい。
若いときよりも行動範囲が狭くなっているので、駅を使う頻度は少なく、現実的には買い物や病院に近いことがポイントとなる。
富裕層の場合、マンション移転は相続対策の意味もある。
相続税の資産評価では「小規模宅地の特例」として、相続人が親の所有していた家に住んでいる場合、240平方メートル以下に限って、評価額が大幅に低くなる。このためそれまで住宅地で広い家に住んでいた場合は、都心のマンションに住み替えることが相続対策にもなる。手元に多額の現金預金がある場合も、そのままにしているよりマンションを購入するほうが、相続の際の評価額が低くなる。
では、マンションと違って『土地という資産』があるのだから高く売れるはずが、今じゃ、そうもいきません。確かに、東京23区をはじめ大阪、名古屋などの都市圏であれば、土地の資産価値は今でも高いものです、が・・・。最近では駅からの距離が、徒歩7分以内(1分80m計算で560m以内の距離)でないと、希望価格で売るという対象になりにくい、バスしか通っていない場所は、売るのは難しいでしょう。郊外の一戸建てが不動産ならぬ、更地に撤去費がかかるだけの「負動産」になる。そうなる前に売ってしまいたい。これがマンションへ住み替えたいというシニアたちの決断をさせる要因になっているわけです。
家はそのまま所有していても多くのお金がかかる。都市郊外部の住宅地であれば、ちょっとした戸建て住宅であれば、固定資産税は都市計画税などを含めれば年間で15万円ほどかかる。家の管理や庭木の剪定などの費用もばかにならない。ましてや古くなった家を解体すれば解体費は一軒あたり、大きさにもよるが150万円から200万円もかかる。ひな壇になっている高台だと重機を使うため300万円とも言われる。解体後はちゃんと活用しなければ固定資産税は翌年から住宅用の特例が外され、敷地面積200平方メートル以下であれば、税額は6倍に跳ね上がってしまうことになる。親の世代が効率の住宅ローンの返済に耐えてやっと手に入れたマイホームが、皮肉なことに子供たちにとっては、ただその土地を維持管理するだけで毎年100万円もの負担を強いられる「負動産」になる可能性があるのだ。
ただ、全く売れないわけではありません。一戸建てを購入するのは子育て世帯。緑豊かな公園が隣接していたり、庭付き一戸建てで伸び伸びと子育てしたいと考える人も一定数いるからです。
さて、古屋の木造住宅は20年間で当初の20%の評価額まで償却され、あまり担保評価を認められないと考えられます。住宅ローン控除は年40万円(上限)の税金が控除されるものですが、住宅ローン控除を受ける条件は、木造住宅の場合築20年以下です(ただし、耐震性能について証明書などを取得すれば控除可)。 築30年の物件でも、通常のローンは組めるといわれてはいますが、金融機関によっては担保評価額がゼロとなり、ローン自体組めい可能性があります。
2018年09月04日
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