今回は2018年4月に発表された男性の平均寿命(2015年度のデータから)は女性より短いというのは定説ですが、そのなかでも男性の平均寿命の長いまちトップ10を見てみると、あることに気づかされます。 長生きできるまちには共通項が見られます。
10自治体のうち、6自治体は東京都、神奈川県にありますし、女性の場合も5自治体が首都圏です。さらに以下の順位を見ていくと、首都圏以外でも大都市圏が中心になっていることが分かります。しかも、都心部の自治体ではなく、首都圏の場合は横浜市青葉区、川崎市麻生区、東京都世田谷区、横浜市都筑区など、いずれも都心へのアクセスは良く、便利な場所ではあるものの、緑や自然もある地域なのです。
医療以上に長生きに関係するのは、歩くのに向いたまちかどうかです。「歩く」ことが健康に貢献するのです。国土交通省が定めたまちづくりにおける健康増進効果を把握するための歩行量(歩数)調査のガイドラインによると、1日1時間以上歩いている人は、30分未満しか歩いていない人よりも1カ月にかかる平均の医療費が15%ほど低いそうです。
身体だけではありません。精神的な健康も大事でしょう。そのために必要なのは周囲の人たちとのコミュニケーションです。具体的には、趣味や地域活動など。もちろん、元々多趣味な人であれば問題ありませんが、高齢に至って新たに何かを始めたいという場合であれば、「始めやすい環境であるかどうか」がポイントになります。
最近は「(人との)つながりが寿命を左右する」という研究も行われています。長生きしたければ、定年で途切れてしまう会社での人間関係以外にも、地域活動や趣味などを通じた地元での人間関係も意識して作っておいたほうが良いのかもしれません。
郊外にマイホームを建てたサラリーマンが高齢化とともに、便利な駅前のマンションへ住み替える動きが広がっている。「郊外の一戸建て」が売却して「都心型のコンパクトなマンション」への買い直しするか、空家のままに、子どもたちと共有の都心に近いエリアに住み替えとなるのです。このように若くて元気いっぱいの子供たちとドライブするにも駐車場のある戸建は、広さにおいても有難いものでしたが、郊外の立地条件が場合によって日々の暮らしに重くのしかかってくるのです。その根底にあるのは、郊外の一戸建てに住み続けた場合に予想されるリスクです。10年後、車の運転ができなくなることを考えると、とにかく便利なところにしたいと強く思いました。夫婦の趣味は、映画や演劇を観に行くことなんです。都心に出る機会が多いので、帰りがラクだとうれしいですね。あと、家庭を持った子どもたちが、それぞれ都心近くに住んでいることも重なって、子どもの近くで過ごせたらという思いも加わりました。
ガイド:不安はありませんでしたか?
Nさん:あげたらキリがありません。(笑)ひとつあげるとすれば、長年築き上げたコミュニティーと別れる寂しさは大きかったですね。これから都会でのマンション暮らしの中、これだけ良好な人間関係が築けるのだろうかと不安も感じています。
小さな木が彩っていた庭も、木々が大樹に育ち、春から秋にかけては草取りや冬には落ち葉掃き、時に雪かきなどが重労働に感じられます。自宅前の掃除やゴミ当番などは義務みたいなものです。 足腰が衰えてくるにしたがって、病院やスーパーに行くのに車では行きにくくなりがちです。転倒をきっかけに長い距離を歩けなくなったり、要介護状態になったりすることも起こりえます。掃除機を手にして階段を上り下りが辛くなる。窓の数も部屋数に比例して多く、拭き掃除もひと苦労です。子どもが巣立った後の空き部屋は特に使い途もなく、それでいて換気や掃除の負担はなくなりません。
地方圏の不動産は価値が落ちやすく、いざというときに売れない可能性があります。そうした市場性を考慮すると、売却できるうちに都心部のマンションを買う。都内のJR中央線・国分寺駅前に建設中の「シティタワー国分寺ザ・ツイン」は昨年、第1期の70戸が即日完売した。分譲する住友不動産によると、契約者のうち60代が約2割、70代も1割弱を占め、50代を含めると半分強に上った。
マンションの購入層は30〜40代が中心だが、最近の都心や駅前物件は50代以上が多い。国分寺ザ・ツインも購入者の過半数が駅周辺や沿線の一戸建てに住む。
都心部は家賃が高いので、年金生活ではとても住めないと考えていたら、都心部には公的な賃貸住宅のストックが豊富にあり、リーズナブルな家賃で借りることもできます。とくに湾岸エリアは公的な賃貸住宅が多く狙い目です。また、自治体によっては高齢者への家賃補助を行っているところもあります。こうした制度をうまく活用すれば、年金生活者だからといって都心部を選択肢から外す必要はありません。
最近は地域医療を支えていた基幹病院の経営が悪化し、廃業したり医師を雇えなくなるケースがあります。そうしたリスクを考えると、やはり複数の総合病院があるエリアのほうが安心できます。東京都でいうと、総合病院は千代田区(同1位)、文京区(同2位)、新宿区(同6位)、港区(同7位)といった都心部に集中していて、都下は少ない。周辺の丘陵地には住宅街が広がる。京王電鉄はそうした坂の街からの移住を見込む。実際、地元の多摩市内からの転居が約3割を占め、沿線を含めると8割に達する。
いずれ車の運転が難しくなることを考えると、徒歩圏内に食料品店があることは欠かせない条件です。また毎日夫婦だけの食事をつくるのは意外に面倒なので、リタイア後は外食の機会が増えます。このとき駅前はチェーン店ばかりで、いつも似たようなメニューというのは寂しい。商店街が発展していて、食の自由度があるエリアがおすすめです。
首都圏でまずおすすめしたいのは、東京都文京区です。前述した通り、文京区は総合病院が多く、医療の充実度では都内屈指。医療だけでなく教育施設が多いせいか、治安がよく、地域コミュニティも排他的な印象はありません。
神奈川県藤沢市は工場跡地を利用したスマートシティ構想を進めています。スマートシティ自体が住みやすさにつながりますが、それ以上に、こうした町ぐるみの仕掛けで人口が増える効果が大きい。滋賀県大津市も京都・大阪はもちろん、名古屋にも約1時間で行ける交通の便が魅力です。奈良県生駒市は大阪市内へのアクセスがよく、それでいて地価が比較的安いため、いま続々とファミリーが家を建てています。人が流入してくれば店が増えて生活利便性が高まるし、行政の財政基盤が強化されて行政サービスの質もよくなります。気候も過ごしやすいこともあり、今後人気が高まるでしょう。
関西圏でいうと、兵庫県芦屋市近辺は外せません。伝統的に関西は職住近接ではなく、良好な住宅地が都心から離れています。その中でも芦屋市は医療機関や行政サービスが充実していており、山側はグレードが高いので、経済的に余裕のある人は選択肢に入れてもいいでしょう。
紹介した町は、現役世代にとっても住みやすい町ばかり。リタイア後の暮らしを見据えていまから移り住むのも、悪くない選択かもしれません。
2018年09月17日
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