そこで、加齢制御医学を専門とする白澤卓二・順天堂大学大学院教授は、100歳を超えても元気な人について調べ、「共通するのは長寿遺伝子が働いていることにあり、長寿遺伝子を活性化させ、健康寿命を延ばす条件もわかってきた」と、話す。実際に人間の長寿遺伝子が特定されたわけではないが、白澤氏は、100歳を過ぎてなお現役スキーヤーだった三浦敬三氏(故人)をはじめ、多くの“健康長寿者”に会い、体の状態や食事、生活習慣などから、長生きの秘密を研究してきた。それらを簡単にいえば、健康寿命を延ばすには、「(1)カロリーコントロール、(2)運動、(3)前向きな考え方が不可欠」と、白澤氏は特に食事について注目している。
カロリーコントロールの必要性は動物実験で実証されている。長寿遺伝子「Sir2」を発見したマサチューセッツ工科大学(MIT)のガレンチ教授によれば、餌を制限した酵母菌や線虫のほうがSir2が活性化され、寿命も50%延びたという。「1日のカロリー摂取の目安としては、厚生労働省の日本人の食事摂取基準を参考に、栄養バランスは崩さず、腹七分から八分に抑えるべき」と白澤氏は言う。腹八分目の食事が長寿遺伝子を活性化させ、健康寿命を延ばすわけだ。
また、老化を抑えるのに必要なのが抗酸化物質の摂取である。人間の体内では、ミトコンドリアでブドウ糖などの栄養と酸素からエネルギーがつくり出されるが、ミトコンドリアが漏出する酸素が活性酸素に変化し、細胞やDNAを傷つけ、老化を促進してしまう。つまり、活性酸素の無毒化・除去ができれば、老化を防げるということになる。
特効薬はないが、日常的にできる対策の一つが抗酸化作用のある成分、食品を取ることである。特に重要な成分が3つある。まずビタミンE。脂肪の酸化を食い止める効果がある(ただし、脂溶性ビタミンのため、必要以上に取ると体内に蓄積されてしまい、注意が必要だ)。2つ目がビタミンC。活性酸素を消し去る力がある。3つ目にコエンザイムQ10。ミトコンドリアの膜に含まれる補酵素で、抗酸化力が強く、ビタミンEの抗酸化作用を助けることが知られている。
「植物や動物は紫外線から身を守るために、抗酸化物質を蓄えている。抗酸化力の強い食べ物をしっかり取ることをお勧めしたい」と白澤氏は言う。βカロテンが豊富なニンジン、ビタミンCが豊富なブロッコリー、リコピンが豊富なトマト、アスタキサンチンの豊富なサケの切り身など、抗酸化力の強い食品はいろいろある。「食材を購入するときには、色の濃いものや、過酷な自然環境で育ったものを選ぶとよい」(白澤氏)。
前述の長寿遺伝子発見者のガレンチ氏の食事は野菜中心で、ブロッコリーを積極的に取っているそうだ。ブロッコリーには、ビタミンのほかに、発ガン物質の活性化を抑えるイソチオシアネートやインスリンを助けるクロムなどさまざまな有効成分がある。厚生労働省が掲げる「1日に野菜5皿、果物2皿」の目安は、重量でいえば、野菜350グラム、果物200グラム。参考までにニンジン1本100グラム、リンゴ1個250グラムである。
(5)に「お酒を飲むなら赤ワイン」と書いたが、これは脂っこいものを食べているのに心臓病が少ないというフレンチパラドックスのことだけではない。ハーバード大学のシンクレア博士は、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールが長寿遺伝子に直接働きかけ、酵母菌の寿命を延ばしたという研究を発表している。 もっとも、アルコールの取り過ぎは問題。米国のガン研究財団は「ガン予防の15ヵ条」で、男性は1日2杯以下、女性は1杯以下に(1杯はビールで250ミリリットル、ワインで100ミリリットル)と定めている。
長寿遺伝子を活性化させるために、食事と並んで重要なのが運動だ。運動は定期的、継続的に行なうことだ。「脂肪に含まれるアディポネクチンというホルモンは、血管修復や脂肪燃焼作用があるが、太った脂肪細胞からは分泌されなくなってしまう。つまり、脂肪細胞を太らせないようにしなければならず、生涯にわたって運動する必要がある」(白澤氏)
興味深いことに、運動は何歳から始めても遅過ぎることはないという。たとえば水泳。体力や泳力は年齢とともに低下していくが、「練習によって開発される能力は高齢になっても向上することが専門家のあいだで確認されている」(白澤氏)。
社会全体で考えても、急速な高齢化が進む日本にあっては、不健康な期間が延びると、介護費用、医療費用が膨大なものになる。現在、年金、介護、医療などの社会保障は現役世代(20歳〜64歳)2.4人で一人の老齢者(65歳以上)を支える「騎馬戦型」となった。これが、30年後の2050年には、現役世代1.2人で1人を支える「肩車型」になると予想される。ごく大雑把にいって、現役世代の5割を保証しようとすると、現役世代はお給料の半分50%を社会保障に回さないといけなないということだ。このような社会は持続可能とは言えまい。
参照:『週刊ダイヤモンド』(大坪稚子)
老年期の日常的な介護・介助を必要としない健康寿命、つまり自立した日常生活を普通に送れる生存期間の世界ランキングの順位で日本は2位で75才、1位はシンガポールの76才、3位はキプロスの74才・・・・。この2012年の統計によるランキングの最下位はシエラレオネの39才です。このランキングには、男女のランキングマップもあります。
もっとも健康寿命に対する考え方が各国で大きな差が有って、同一レベルで比較できるものではないようでもあります。
http://top10.sakura.ne.jp/WHO-WHOSIS-000002R.html
https://syukatsulabo.jp/article/1516
ちなみに、WHOの発表によると、2015年の世界全体の平均健康寿命は63.1歳でした。アメリカは意外にも健康寿命は短く、世界ランキングでは第36位でした。平均寿命に関しても、他の先進国に比べて第31位と低いです。近年、生活習慣、特に食生活の見直しが叫ばれ、健康志向の人々が増えてきていますので、健康寿命の変化も期待できるのではないでしょうか。アイスランド、オーストラリアはともに、平均寿命や健康寿命のランキングは毎回上位に入っています。直接的には関係していないのかもしれませんが、WHOの発表では、両国ともに、PM2.5濃度が低い国の世界ランキング1位(アイスランド)と3位(オーストラリア)です。空気が綺麗な環境で安心して生活できることが健康維持に一役かっているのではないでしょうか。
2015年の都道府県別の健康寿命ランキングでは、男女ともに第1位は山梨県で男性が72.52歳、女性が75.78歳という結果となっています。2010年の調査では、男性は愛知県、女性は静岡県で、山梨県は男性が第5位、女性が第12位でしたので、大きく順位を上げたことになります。
スイスは健康寿命、平均寿命ともに、ヨーロッパのランキング1位の国です。日本国内でも長野県や山梨県など高地に住む人々は健康寿命や平均寿命が高い傾向があります。これは山岳地帯であるスイスでも同じことが言えるかもしれません。スイスは医療サービスが高水準なのですが、高い水準の医療うけるためには非常に費用が掛かります。そのため、健康を維持するために、精神面だけでなく、経済面・生活面でも自立したお年寄りが多いと言われています。
2016年の統計で、平均寿命の世界一となったのは香港。北京市も2016年、北京戸籍住民の平均寿命は、前年比で0.08歳延びて82.03歳に達した。2009年の80.47歳と比べると、北京市戸籍住民の平均寿命は1.56歳長い、しかし、中国全体の平均寿命ランキングでは香港、北京市のようなわけではなく、経済、または教育格差がある。
平均寿命とは、何歳まで生きたかの平均値なので、さほどバラつきはないと思える。その香港の様子をレポートした記事があった。香港政府は実は、香港は1997年の中国返還の頃は、平均寿命が今ほど高かったわけではない。男性76歳、女性81歳と、現在より5歳以上も低かった。そのため、政府によって2000年から健康促進プロジェクトを行ってきた。禁煙運動を行ったり、公共施設や体育館を増やし、結果的に老人も運動できている。
同プロジェクトでは高齢者支援にも積極的に行ってきた。政府は年間(1人当たり)2000香港ドルの「医療チケット」を配布したり、75歳以上の低所得の老人には基本的な医療費を無料にしてきた。公共住宅への優先的な入居や家賃補助なども行っている。香港の医療水準は高く、街中の漢方店も充実している、香港では97年の返還以前、150年以上もの間、イギリスの植民地だったため、システムや制度はイギリス流に整えられており、ビジネスや日常生活も適度に近代化されてきた。
香港政府の地道な取り組みと、もともとの生活習慣がうまくマッチしたことが「長寿世界一」という“快挙”へとつながったのだろう。そのほかに、香港では65歳以上を対象に「長者カード」というものを発行するようになった。高齢者のためのカードで、一定の条件をクリアしていれば、誰でももらえる老人生活手当だ。条件とは(1)カードの申請前の1年間、継続して香港に居住していること (2)香港居民として7年以上経過していること (3)資産や月収額など一定の条件(資産が多すぎないこと)をクリアしていること。これらを満たしていれば、積み立てなどしていなくても、誰でも月額2490香港ドル(約4万円)を支給してもらえる。それ以外に、70歳以上を対象に、「生果金(くだもの代)」と呼ばれる手当もあり、これは(1)と(2)をクリアしていれば支給される。「長者カード」との二重取りはできないが、こちらも月額1290香港ドル(約2万円)ほどもらえるため、老人同士、頻繁に飲茶にも通うことができるだけのお小遣いになる。
東洋哲学の重要概念である太極思想を取り入れた太極拳が、健康法として取り入れる人が多く、血流をよくする、内臓のバランスを整える、筋力アップ、リラックスできる、などのメリットが指摘されている。ひとりで鉄棒などの運動器具を使って身体を鍛えている人など、とにかく香港の早朝の公園は老人たちが目立つ。しかし、陸続きの中国でも、太極拳の人々が公園、空き地に見かけるし、漢方も薬膳、ウーロン茶があるにも関わらず、平均寿命は
とにかく人間関係に頭を悩ますことが非常に多い。システムや社会的な制度がまだ完全に整っていない中国は、個人的な人間関係やコネで問題を解決しなければならないことが多く、いつも人に気を遣って生活するのが普通だ。相手のメンツを重んじたり、重んじられたりする機会が多く、人間関係が常に生活の中心にある。医療水準も、近年は急激によくなってきているものの、人口が多すぎるため、評判のいい病院では順番待ちが長すぎて、VIP待遇の人以外は、適切な医療をすぐに受けられないこともある。
太極拳などで一汗流した後、それぞれの仲間と飲茶(ヤムチャ)に繰り出すのが「定番コース」になっている。飲茶はその名の通り、お茶を飲みながらシューマイやえび餃子などの点心を食べる広東地方独特の食文化。香港の飲茶は世界中の観光客を惹きつける魅力があり、主にランチで食べる人が多いが、香港や広東省では「早茶」(ジョーチヤ)といって、地元では朝から飲茶を楽しむ人もいる。
老人たちにとっては、お茶や点心だけでなく、“おしゃべり”が楽しみの中心だ。円卓でそれぞれの顔を見ながら、思い思いの点心を注文。ここでのおしゃべりタイムが延々1〜2時間は続く。会話の内容は息子や娘、孫の自慢話や家族の健康問題、他の友だちのウワサ話など、たわいないことだが、とにかく大きな声でよくしゃべる。「早茶」が終わったら自宅に戻るか、再び公園へ。あるいは麻雀に繰り出す人も……。 香港の老人の行動に共通しているのは「適度な運動」と「コミュニケーションとストレス発散」、そして、何といっても大事なのは「コミュニティ」が存在することだ。
家にいても息子夫婦や娘夫婦は働きに出ていていないし、香港のマンションの部屋は狭い。東京のような一軒家はほとんどなく、庭もない。だから、必然的に「外へ、外へ」と出ていかざるを得ないのだが、それが返って健康には功を奏している。マンションの敷地内にある小さい広場や公園、街市(市場)に行けば、必ず誰か知り合いがいて、老人同士の会話が弾む上、必然的に自分の足で歩くことになる。斜面に建つマンションだと階段が多いが、その上り下りだけでもかなりの運動量だ。
土地が狭い香港では、両親と一緒に暮らしていなくても、実家の至近距離に住んでいるのが普通。週末は親孝行のため「一家で食事をすること」を前提に暮らしているという人もいる。だから週末になれば、家族とともに、また飲茶に出掛けるという人がとても多い。香港の週末は、どこのレストランでも、5人以上の家族連れで満席だ。記念日でもないのに、10人以上でワイワイ食事している姿もよく見かける。結果、老人の「孤食」が少ないのだ。いわば「週に一度は子どもたちと宴会をしている」ようなもので、家族間のコミュニケーションがある。狭い土地でゴミゴミしているという印象もあるが、それが逆にいいことでもあり、こじんまりとしていて、古くからの付き合いやコミュニティが壊れないまま残っているのだ。
同じ都市に住んでいても、中国の都市は巨大なので、子ども夫婦の家は遠く、週に一度でもそれぞれの顔を見ることがない人も多い。中国でもマンション内に老人のためのサークルがあるが、急激に経済成長したことにより、建設工事のための立ち退きも多く、横丁が取り壊されたり、引っ越しを余儀なくされることによって、老人同士のコミュニティが断絶しているところもある。中国の公園でもダンスや太極拳をしている人はいるが、ひとりでポツンと椅子に座っている老人も少なくない。このように、とにかく香港の老人は誰かと会話していたり、誰かと一緒に食事をする機会が多いのが特徴といえる。
地域のコミュニティを残しつつ、人間関係が中国ほど濃すぎないのも、香港のよいところ。むろん、中国の影響も強く受けており、「医食同源」の考え方は残っているが、西洋と中国、どちらも程よくミックスされているのが香港なのだ。こうしたことが香港の長寿を支えているのではないだろうか。
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