しかし、在宅介護の行き着く先、つまり、人が最期のときを迎える場所がどこか、という観点から分析すると、在宅介護の環境が充実してきたにもかかわらず、自宅で死を迎える人の比率は12%程度にすぎない。つまり、約9割近い人が病院や高齢者施設で死を迎えていることになる。
在宅医療とは、命の長さではなく、質を求める医療である。長寿を目指すのではなく、天寿をかなえる医療といえる。在宅医のいる家庭では、介護を受けている高齢者が肺炎になったとしても、あわてて病院に入院させる必要がない。在宅医の訪問診療と看護師の訪問看護を上手に利用することで、自宅でも治療が受けられるからだ。高齢者の場合、1週間ほどでも病院で入院生活を送ると、環境の変化が原因で認知症の初期症状を発症するケースも少なくない。介護と医療の上手な使い手になることによって、高齢者の介護環境は飛躍的に改善されることは間違いない。
例えば肺炎で2週間、一般的な病院に入院すると、入院基本料だけで、自己負担額が6万9762円(3割負担)かかる。これに、差額ベッド代金や食事、おむつ費用などの経費を加算すると10万円近い費用は覚悟しなければならない。これに対して、在宅医療を利用した場合、在宅時医学総合管理料に往診費用、訪問看護利用費を含めても自己負担額は、月額2万7555円(3割負担)程度に抑えることができる。これに、介護保険サービス利用によって生じる自己負担額(サービス利用料の1割)がかかるが、住み慣れた自宅、地域での暮らしを継続できることを考えれば、そのメリットは大きい。
参照:プレジデントオンライン http://president.jp/articles/-/149
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