世田谷区においては介護を主とする特別養護老人ホーム、老人保健施設の数は少なく、ある区内の特別養護老人ホーム(100人収容)は建設の際に約100億円の費用がかかっており、またその運営費も多大で区には大きな負担となっています。そのために新しい入所施設を多く建てる事が出来ません。区内には介護が必要な人、医療が必要な人に対する入所・入院場所が少なく、やむを得ず一般病院に長期入院をせざるを得ないのです。
都内の病院は全国統一料金のもとで経営は非常に厳しく、減収は直接病院の存続に影響します。このようにやむにやまれぬ理由で一般病院では3ヶ月以上たつと退院をお願いしているわけです。 病院に入院していて3ヶ月たつと、患者さんや家族の方が希望してもよほど重症でないかぎり転院を求められます。
どうしてなのでしょうか。
現在70才以上の老人は老人医療費でまかなわれています。病院は一般病院 療養型病床群 介護力強化病院に分かれ、その他の入所施設には特別養護老人ホーム 老健施設があります。 入院費は入院時医学管理料 看護料 入院環境料 その他からなっています。そのうちの入院時医学管理料と看護料が入院期間が長くなればなるほど安くなる逓減システムとなっています。これは必要がないのに家族の都合等で入院している、いわゆる社会的入院を是正するためにという理由で行われています。
次に在宅療養での費用の概算を見てみましょう。
主治医による訪問診療費が1回ごとに8300円ですが、自己負担分を考慮すると1割の方で830円、2割の方で1660円、3割で2490円になります。
少なくとも月に1〜2回は訪問診療が必要になります。
また訪問看護を受ける場合、介護保険で受ける時には、30分未満1回474円、30分以上1時間未満の場合は834円、それに初回加算300円、特別管理加算500円など加算がかかってきます。
がん治療である場合は、この訪問診療費以外に医学総合管理料などの加算があり1回42000円ですが、自己負担分を考慮すると、1割の方で4200円、2割の方で8400円、3割の方で12600円かかってきます。
医療保険で訪問看護を受ける場合は週3回、1回5500円ですが、自己負担分を考慮すると1割の方で550円、2割の方で1100円、3割の方で1650円になります。
その他、緊急時加算が2850円、管理療養費が7400円、24時間対応体制加算が月1回5400円の自己負担分となります。
他に、介護保険でベッドや車いすをレンタルで使用した場合はベッド、マトレス、ベッド柵、テーブルなどで1500〜3000円程度。車いすが500円〜1000円程度かかります。ご家族の介護負担の軽減のため、ヘルパーさんを利用すると30分身体に関わるサービスで、1回266円、30分以上1時間未満で、1回に421円かかってきます。また、訪問診療費に加え、居宅療養管理加算が1回500円、月に2回まで請求され月2回以上訪問診療を受けた場合は1000円必要となります。
☆次に末期がんで緩和ケア病棟に入院した場合、医療費ですが、1日49260円かかります。
自己負担が3割の場合は14778円、2割の場合は9852円になります。それに食事療養費(食事代)が360円/1食がかかってきます。
その他、部屋代の差額ベッド代金がかかります。緩和ケア病棟は無料の個室もありますが、有料の個室も多く、安くても1日5000円程度はかかります。
単純に計算しますと、自己負担が3割の患者さんでも14778円×30日で一か月約45万円になります。
つまり、施設利用の個室料金が非常に高いのです…。
しかし、割引があります。
70歳未満であれば高額療養費が適応されますので、一般的な所得がある場合は月の医療費は82000円程度、食事療養費360円×3食で1日1080円×30日で32400円となります。合計、一か月あたり約11万円の費用が必要となります。4か月目からは医療費が減額され44100円となり、食事療養費と合わせて一か月約80000円になります。70歳以上であれば健康保険が適応されるため、医療費は月に44100円程度となり、食事療養費の32400円を加えて一か月約80000円の費用が必要となります。
その他、部屋代の差額ベッド代金、寝衣のレンタル料、電気使用量、テレビカードなど負担はどんどん増えます。
個室料金は1日5000円だったとしても、上記のような料金が積み重なっていくと合計で一か月15万円は超えるでしょう。
また、ご家族が毎日、病院に通われるとするとご家族の交通費、食費等も必要であり、精神的に様々な負担が大きくなり、ご家族の体調管理も重要になってきます。
終末期医療にどれくらいの医療費がかかるかという調査は、いろいろな方法で行われており、その結果にばらつきがあります。2007年に財務省がまとめた資料によると、お亡くなりになる1ヵ月前までにかかった医療費を、終末期医療費として捉えた場合、死亡前の1ヵ月にかかる1人当たりの終末期医療費の平均額は、112万円という結果になっています。ターミナルケアの方針や治療内容にもよりますが、治療費に加えて、入院には部屋代や寝具代、差額ベッド代などの費用がかかります。特に部屋代は、個室を使った場合、健康保険の適用外となり全額自己負担となりますので健康保険以外の出費もあるということは頭に入れておいた方がいいかもしれません。
この数字に、2013年に医療機関でお亡くなりになった70歳以上高齢者の数約80万人をかけると、単純に計算して1年間にかかっている終末期医療費は約9,000億円。2013年の国民医療費は約42兆円となっていますので、医療費のうち多くの金額が終末期医療費として使われているかが分かります。
さらには、終末期医療というのは正確には、「お亡くなりになる一ヵ月前」と決められるものではなく、長い場合は半年ほどの期間となりますので、実際はこの試算よりも多い金額となっていると見込まれており、国の財政的には、終末期医療費は頭を悩ませる問題となっているのです。
こうした医療費問題からも、国の介護・医療政策が“施設から在宅へ”という流れになっているのです。多くの高齢者が自宅でのターミナルケアを希望することも理由のひとつではありますが、医療費の削減という意味でも、ターミナルケアを在宅で行うということが進められるのは致し方ないことなのかもしれませんね。
後期高齢者医療制度によって、75歳以上の高齢者の窓口医療費負担は一割と決まっています。これは、終末期医療についても同様です。病院で、最期のときを迎えるまでにかかった治療費やベッド代の一割を、本人が負担することになります。
いざ手術なども伴う入院となれば、医療費は数十万円かかってしまうこともあります。そう聞くと、心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、医療費については、本人負担の上限額が決まっており、1ヵ月の上限が4万4,400円(外来に関しては1万2,000円)となっていますので、終末期医療費本人負担額がそれ以上になることは基本的にはありません。また、低所得者の場合、所得に応じてこの金額から更に上限額が下がっていきますので、何千万円というような高額な負担を心配する必要はないと言えるでしょう。
2018年07月27日
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