芸に生きて、芸で人生の最後を闘った人だから、その人の高みの域に到達した話術、人を楽しませるだけでない深みの芸を貴んだ。
酸素吸入のチューブを着けて高座上がった、それは師匠の粋に反したけれど、それでも客席は一杯だった。
ウマイのだ、苦を楽にしてみせる話術が凄い、だれも到達できない域だった。笑点は円楽師匠の頃より、なんだかチャンネルを合わせてしまい、
笑させてもらった。さすがの長寿番組で、円楽(5代目)の独演を曳く継いだ後、飄々と司会をこなし、周囲を唸らせ、長寿番組に引きたてた。
弱点をさらけ出せる人は、実に強い人だ。
自分の弱さをさらけだせる人は、たとえば、自分のウマくない姿をネタにできるような人だ。
隠さずに、それをネタにして笑いをとるような人。
逆に、弱さをさらけだせずに、強がっている人は、本当は弱い人。
強がっている人は、「虚勢をはる」「ツッパる」「背伸びをする」「カラ威張りする」「見栄をはる」人だ。
自分の弱さを隠してしまう人は、見栄をはる人だ。
松岡修造は 『弱さをさらけだす勇気』(講談社)で、次のように書いている。
テニスの現役を卒業してから20年がすぎました。
その間にいろいろな方々とお会いしてきたなかで、「本当の意味での人の評価は、目に見える成功だけでは測れない。いちばん大事なことは、その人がどう生きているかなんだ」と、心から思うようになりました。
世の中には、地道にがんばっているのに結果が出ず、評価されない人たちがたくさんいます。
えば、早朝から部活に出ていき毎日欠かさず練習ノートを書いているのに、いつも1回戦で負けてしまう子供たち。
勉強や仕事に一所懸命取り組んでいるのに、トップになれず、目立たない人たち。
能力はあるのに日の目を見るチャンスに恵まれない人たち…。
自分の「弱さ」と向き合えば、僕たちはもっと成長していけると思います。
自分の弱さと向き合うときに、注意してほしいことがひとつあります。
それは、他人と自分を比べないことです。
「あの人みたいに強くなりたいな」と思える身近な人を目標にして頑張るのはいいけれど、その人と比べて「自分はダメだ」なんて思ってはダメ。
とくに、まわりから高く評価されている人たちと自分を比べてはいけません。
周囲の評価とは関係なく、みんな一所懸命に頑張っている。
そこは平等なんだという意識でいるほうが、自分自身の心の状態を、より正確にとらえることができるようになるはずです。
成績がいい、何かの賞を獲った、社会的に高いポジションにいる、といった人たちだけが「強い人、成功者」なのでしょうか。
僕は、そうは思いません。
でも、地道な努力を続けることは、それ自体人間としての強さであり、僕から見ればすごいことをやっているんです。
みんな、それぞれに「人生のチャンピオン」!
僕は心から尊敬しています。
人と自分を比べず、いま、このときに自分のベストをつくす…。
そういう人たちを、僕はこれからも応援し続けます!
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松岡は、日本人男子初のATPツアーシングルス優勝、ダブルス1勝した。 1995年ウィンブルドン選手権男子シングルスで日本人男子として62年振りにグランドスラムベスト8に進出した人物である。また現在、ウィンブルドン選手権では日本人男子最後のベスト8進出者となっている。2015年に錦織圭に抜かれるまで、ウィンブルドン選手権での通算7勝は日本人最多の記録であった。
現役引退後はジュニア選手の指導やテニス大会の運営、日本テニス協会の理事を務めるなど引き続きテニスに携わりつつ、スポーツキャスター、タレント、日本オリンピック委員会スポーツ環境専門委員、ミズノスポーツ振興財団顧問などとしても活動している。
身長188cm、体重85kgの恵まれた体躯で、東宝第11代社長となる実業家の松岡功と、元宝塚歌劇団の星組男役スターであった千波静との間に三人姉弟の次男として生まれる。父方の曾祖父は阪急電鉄や宝塚歌劇団などの阪急東宝グループ創始者の小林一三であり、親族に多くの実業家を持つ家系の中で育った。 実は父親の功は元テニス選手であり、甲南大学在籍時に全日本学生テニス選手権大会で単複優勝し、デビスカップ日本代表に選出。1955年の全日本年間ランキングでは宮城淳と加茂公成に次ぐ3位を記録する国内トップ選手の一人であった。家業を継ぐため大学卒業を機にテニスとの関わりを一切絶ち、家庭でテニスの件は全く話さなかった為、松岡はテニスを始めた当初父がデ杯代表選手であったことを知らなかったという。しかし、こうした世界で成果をモノにする難しさを良く知る両親が大反対されて、テニスの道を歩みだすのは、すべてが松岡の熱意と出会いが大きい。弱さと強さをよくよく体現し、子供たち育成にも力をいれる、まさに心の強い爽やかなスポーツマンである。
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