各地で豪雨被害がおきて、交通網が寸断され、市民生活への多大な影響が出ている。
同じ水の問題で、考えなくてはいけないのが市町村が主に担う水道事業は人口減などを背景に赤字体質の常習化です。今までのように行政に一任するだけではこれまで以上に係る経費は捻出しきれない予測なので、どう水道インフラを再構成していくのか。かねてから、麻生財務大臣は、水道事業民営化を公言していました。衆院厚生労働委員会は今7月4日、市町村などが手掛ける水道事業を広域化する水道法改正案を与党などの賛成多数で可決。5日の衆院本会議で可決し、参院に送付する方針だ。広域化や民間企業の参入を促すことで経営を効率化し、水道管の老朽化対策などを急ぐ。改正案は、複数の市町村で事業を広域化して経営の効率化をはかるため、都道府県が計画をつくる推進役を担う内容です。法改正を踏まえ、給水人口が少ない市町村と事業統合する中核都市への助成を拡充するなど、市町村などが経営する原則は守りつつ、民間企業に運営権を売却できる仕組みも盛りこんでいます。
しかし、水道事業に限っては、@労働者を非正規に置き換える、A水道料金を値上げ、などが起きても、水栓のその先を選ぶという選択肢のあるわけはなく、通常の市場経済の民営化の利点よりは地域独占状態になっていく弊害が考えられます。企業が料金引き上げが必要だと言えば、ノーと言いにくくなります。『これだけのコストがかかった』と上乗せすれば、料金に改定を鵜呑みにさせられる可能性があるわけです。それが収益につながらないとなったら民間企業は事業を撤退して、水道事業が破綻してしまうしなどが考えられます。水道を民営化を先行した多くの国々で、水道の「再公営化」が湧き起こっています。これまでの水道事業は、なるべく安い料金でサービスを提供するよう、基本的に儲けない℃幕ニで、だからこそ公的機関が運営してきました。それを民間企業が儲かるモデル≠ノ変えることをゆうせんするようになると弊害が起きる」との指摘がされます。
89年から水道の民営化を始めた英国では、その後の10年間で水道料金が値上がりし、水質検査の合格率が85%に低下。漏水件数も増え、何百万もの人々が水道を止められたケースがあります。しかもその間「株主配当」や「役員特別報酬」は十分に支払われたという事です。99年のブレア政権となって水道料金の引き下げが行われた。すると経営が悪化した民間企業は、次々に外国資本に買収・合併され、水道事業が金融ギャンブル≠フ投機対象となっていったのです。英国のウェールズでは、地元投資家が設立した非営利事業団体(責任有限会社Glas Cymru)が水道会社(米国資本)を買収。非営利形態で「利潤をすべて再投資にまわす」運営することにしました。
また、二大水道メジャーと呼ばれる多国籍企業「スエズ社」「ヴェオリア社」の本拠地であるフランス・パリでは、85年から09年のあいだに水道料金が265%上昇しました。 パリの場合、およそ30%の収益が企業内留保金に消えたそうです。当然、メンテナンスも縮小再生産になります。それでも効率よく、非熟練のアルバイトのような人をやとうことが増えれば、それだけ事故が増えてもおかしくありません。そこでフランス・パリでは、2010年に水道を再び公営化した際、「Obsevatoire」という組織を設立し、市民が代表を担い、事業者のマネジャーや技術担当者が参加しながら、水道事業や水問題について議論する場をつくりました。それまでは企業秘密によって不透明だった投資計画や財政報告も公開され、内部データベースにアクセスできる権限も市民に与えられました。その結果、45億円のコストを削減し、水道料金を8%下げることに成功。効率化を再公営化≠ナ実現させました。こうした動きは、過去15年間に86以上の地域で生まれているといいます。
他方、ドイツのベルリンなどで再公営化しても、高くなった水道料金は払わざるをえない現実です。安全な水道が安価に提供されるのが当たり前ではないという事実に、まず市民が気づかなければならないと思います。その上で、変化する地域の実情にあった水道をともにつくり直していく覚悟をもち、開かれた議論を求めていく必要があります。
たとえばブラジルのポルトアレグレでは『参加型予算』といって、市民たちが区域ごとに公共事業の優先順位を話し合って決めています。そうした市民参加は、スペインやインドの一部でも行われています。もし日本でも実現できたら『水は命にかかわることだから、一日一人100リットルまでは無料で使えるようにしよう。その代わり、市民ボランティアが一部の仕事を担って支出を削減しよう』など、優先順位を変更して効率化ができる。行政もどんな浄水システムを入れるかなどを市民にもっと相談していく必要があります。このように水という公共サービスの分野では「非営利の法人だけが参入できるようにする」など、市民が水道事業を理解して、知恵を出し、声をあげていかないと解決はむずかしいところにきています。
参考HP:http://bigissue-online.jp/archives/1065126975.html
2018年07月05日
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