現在、65歳以上の高齢者が総人口に占める高齢化率は52%、2016年度の島の出生者数は僅かに43人で、同期間の死亡者数が474人。全国でも有数の高齢化した街である。人口は減少の一途で、このままでは将来的には街の存続すら危ぶまれる。人口流出が激しく、島内を巡る道路沿いには、一見して空き家とわかる老朽化した家屋が目立っていた。総務省の『住宅・土地統計調査』(※2013年度)によると、島内の空き家数は4840戸で、全住宅数に占める空き家率は約37%。全国平均の約13%を大きく上回る。
人口減少という難題から、将来を悲観的に考えてしまいがちな島であるが、行政組織の周防大島町は至って元気がよい。また、島内にある唯一の高校が周防大島高校だ。山口県内の新規事業コンテストに、ここの生徒や教職員が参加し、工夫を凝らした島の新事業の絵姿を思い思いに自由な発想で語っていた。
2015年12月、周防大島町は国や県の戦略を受けた町独自の『まち・ひと・しごと創生総合戦略』を逸早く発表。具体的な施策として掲げたものの内、@産業振興A観光産業の育成B地域資源を活用した起業支援及び商品の販路拡大――といった施策は、どの地方でも見られる内容だったが、これらに加えてC日本版CCRC(※継続ケア付き定年退職者コミュニティー)の周防大島版を立ち上げるといったユニークな施策も打ち出した。「高齢化という課題をネガティブに捉えず、街の活性化に役立てよう」という意欲的な取り組みだ。周防大島の日本版CCRCは、ともすると若者の定住にばかり視線が移りがちな地方創生戦略の中で、現実を踏まえた戦略として注目を集めている。例えば同島では、医療や介護を“地域資源”と位置付け、医療介護サービス提供の充実化を図っている。島外から多くの高齢者を呼び込むことで仕事を創出し、結果的に若者の定住にも繋げようとする施策だ。空き家についても、必要な改修を施した上で定住希望者に提供したり、島内の施設を起業家に貸し出したりする支援体制も整えている。厚生労働省は2025年に向け、高齢者が住み慣れた地域で人生の最期を迎える“地域包括ケアシステム”を整備する構え。 同じ時期に向け、周防大島が具体化させるCCRCの効果も期待できそうだ。
参照:東洋経済「人の逃げる街・集まる街」(3/5)
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