ゲーテは「人間の最大の罪は不機嫌である」と言ったという。
心理学者のチクセントミハイは、時間を忘れて何かに集中している状態を「フロー」と呼んでいます。フローの状態になると、少ないエネルギーで高いパフォーマンスを生み出せます。フローが最高潮に達した状態は「ゾーン」や「ピークエクスペリエンス」と表現され、いわゆる無我の境地のことです。アスリートが驚異的な記録を出したり、奇跡的なプレイをしたりするときは、ゾーンの状態で無理なくハイパフォーマンスを実現しているのです。
チクセントミハイのフローの定義を私はもっと単純に、「機嫌がいい心の状態」をフロー、「機嫌が悪い心の状態」をノンフローと呼称しています。揺らがず・とらわれずの心の状態です。集中、リラックス、ワクワクは少しずつニュアンスが異なるとしても、すべて「機嫌がいい」状態としてくくることができます。
もう一方のノンフローも同じことです。揺らいで・とらわれている心の状態です。落ち込んでいるのもノンフローですが、ムカついているのもノンフローです。「落ち込んでいる」と「ムカついている」は厳密には異なる状態ですが、日本語ではどちらも「不機嫌」と表現できます。
フローにもノンフローにもいろいろな感じがあって、程度の差もあります。けれど、少なくともフローなほうにいけば、何をやっても機能は上がって行動の質は良くなるし、ノンフローなほうへいけば全体の質は落ちます。たとえば、見返りなどなくても、自分が何かを与えて相手が喜んでくれるという事実だけでフローになれる。具体的に何かを与えなくても、何かを与えようと考えているだけでフローになれる。
日本人にはもともと、物に頼らなくても心の平和や幸せを自分の中につくり出していく心の働きが備わっているのです。「思いやり思考」「応援思考」「感謝思考」
これが、考える「与える3原則」です。
思いやりをモノやお金で表すのではなく、「ただ思いやりを持とう」「ただリスペクトしよう」と考えているだけで気分が良くなってきます。
与える思考の王道が「応援」です。
ほとんどの人は、応援は相手のためにするものだと思い込んでいます。
しかし、本来の応援とは、人を応援することで自分自身の心にエネルギーを生み出すこと。
つまり、機嫌良く生きるための人間の叡智なのです。
感謝思考と思いやり思考も同じです。
「ありがとう」を形にしたり「ありがとう」の気持ちを言葉にしたりするのではなく、「ただありがたいな」と考える。神社へお参りしたとき、願い事をするのではなく、日々の暮らしの無事に感謝して手を合わせると、とても心が落ち着いてきます。お墓参りや仏壇に手を合わせるときも、特別な理由はなくても「ご先祖様ありがとうございます」という気持ちを念じていると、清々しい気持ちになるのではないかと思います。ただ無心に敬い、ただ無心に感謝する。
こうやって人は、自分の心にエネルギーをつくり出し、自分の糧にしているのだということです。
2017年12月20日
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