自動車業界に、EV化と言う大変革が押し寄せています。EVとは「Electric Vehicle(エレクトリック ビークル)」の略で、そのまま「電気自動車」と訳されます。バッテリーに充電された電気の力で、モーターを動かして車を駆動させます。電気自動車もハイブリット車も電力でモーターを動かしている点は同じです。
しかし、電気自動車と異なりハイブリット車は電力で動かすモーターに加えガソリン車と同様にガソリンを使用してエンジンも動かしています。またハイブリット車はエンジンを動かすことによって蓄電も行なっています。
すでにボルボは、2019年以降に発売するすべての車種を、EVやハイブリッド車(PHV)にすると発表しました。フランスは2040年以降ガソリン車とディーゼル車を禁止すると宣言、それに続いて英国も 2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると表明しました。ノルウェー議会は、2025年までに排気ガスを排出しないゼロエミッション車の比率を、100%に高める目標を策定しています。大気汚染の深刻な中国政府も温暖化ガス抑制のために、EVを強力に推進しています。
日産は、電気自動車(EV)とも一般的なハイブリッドとも違う動力方式のレンジエクステンダーEVを開発。レンジエクステンダーEVは純粋な電気自動車とは違い、エンジンでの発電から給電しています。またレンジエクステンダーEVが通常のハイブリッド車と違うのは、レンジエクステンダーEVが基本動力を電気に置いているのに対し、ハイブリッド車は基本動力をガソリンに置いています。つまり、レンジエクステンダーはこの電気自動車とハイブリット車の中間的な動力方式により、効率の良い発電を行い、通常のハイブリッド車よりも燃費が良く、EVの欠点である走行距離を伸ばすことを可能としています。
しかし、トヨタのハイブリッド車は、アメリカでも中国でも、エコカーとしてはすでに認められていません。
EV車ではラジエーターからエンジン、ミッション、ディファレンシャルギヤ、マフラーまで不要です。ですから、これらに関連している企業は大打撃を受ける事になります。それに代わって、電池に関連する企業、駆動モーターに関連する企業には、新たに自動車部品産業として大きなチャンスが回ってきます。
巨大な自動車産業の構造が変わります。ガソリン車やハイブリッド車はなおしばらく存続しますが、自動車自体の構造が、すり合わせが重要な機械部品の集合体から、モジュール構造のパソコンのような構造に一部とはいえ変わる公算です。この構造変化で、今後の中国やインドにおいても、EVは容易に生産できることになります。パソコン産業や電機産業が経験したモデルが、自動車業界の中に入り込んで来ることが予測されます。
ハイブリッドと燃料電池車に次世代の自動車産業を重ねてきたトヨタ自動車でしたが、ここに来て、世界の趨勢をみると、戦略ミスであったと認識せざるを得ません。トヨタ内の経営方針で水素自動車の開発に没頭、経済産業省も水素社会の展開にのめり込んできました。
世界の自動車業界で水素自動車を推進してきたのは、日本くらいでしょう。このまま路線を修正しないと、井の中の蛙、もしくは、ガラパゴス化です。過去には、シャープの「亀山モデル」という液晶がこれにあたります。パナソニックの黒が綺麗と言う「プラズマディスプレイ」にのめり込んで崩落した事例が重なります。トヨタもここにきて経営方針を変え、EVの開発にも本腰を入れ始めました。経済産業省も遠い将来はともかくここから5-10年はEV重視と修正し始めています。
パソコンと違い、自動車は人の生き死にに関わります。また、製造設備の転換に莫大な資金が必要です。さらに、エンジンの開発・生産に数多くの人が関わってもいます。リチウムは希少資源でリチウム電池の供給にも制約があります。このため、EV化が一気に進むことはないと見られますが、危機感を持って、事業モデルの修正に取り組むことが欠かせません。トヨタがこのチャレンジに成功するかどうか、自動車産業の日本経済に占めるウエートの高さを考えると、国家的な課題となります。ここ1-2年の動きが極めて重要と言えるでしょう。
2017年08月10日
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