2017年07月17日

CMメディアにみられる男女役割の固定概念の是非

 タレントの壇蜜さんが夏バテ気味のゆるキャラを涼しい宮城に連れて行き、ウミガメに乗って県内を旅するという設定。たびたび壇蜜さんの唇のアップが映し出され、「ぷっくり膨らんだ、ず・ん・だ」「肉汁とろっとろ、牛のし・た」「え、おかわり? もう〜、欲しがりなんですから」と特産品が紹介され、「あっという間にイケちゃう・・・」という言葉で終わります。

 批判について、同県の村井嘉浩知事は10日の定例記者会見で「可もなく不可もなくというようなものは関心を呼ばない。リスクを負っても皆さんに見ていただくものを、と思った」「どんどん厳しいことを言って、(動画への)アクセス数を増やしていただきたい」。県観光課の担当者も「『表現が刺激的すぎる』などの批判も多く寄せられていますが、話題となったことで、多くの方に見ていただいているとプラスに受け止めている」と話しました。

 海外でも「炎上」になるケースがある一方、従来型の男女像にとらわれない描き方も広がっています。

 マイクロソフト社が16年3月に公開した動画「きみは何を作る?」では、知られざる女性科学者たちの功績を紹介。米航空会社ジェットブルーは母の日に合わせた動画で、機内で赤ちゃんが泣くと次回の搭乗で料金が割引になる設定で、子連れ客を応援するCMを流しました。また、今年2月、米国で最も年間視聴率が高いとされる「スーパーボウル」のテレビ中継のCMで、ドイツの自動車メーカーアウディが男女の賃金格差をテーマにした「Daughter(娘)」を放映。同社の賃金格差解消の取り組みをPRし、動画サイトのユーチューブで1200万回以上再生されました。

■新しい表現 探る作り手

 発信者自身もメディア表現を問い直し始めています。東京大学で5月、「メディアと表現について考えるシンポジウム」が開かれました。

 共働きの子育て世帯向けに情報を発信している「日経DUAL」の羽生祥子編集長は、パソコンに「ママ」と入力すると「パパ」と変換されるシステムを編集部で使ってみた体験を紹介しました。すると、「パパが毎日ご飯を作って、パパが子どもの担任の先生と話し合って、さあ、明日からもパパが頑張って!」と、記事がまるで父親ばかりに頑張るよう促す内容になって驚いたそうです。「男女を入れ替えてみることで、おかしさに気づくことがある。そういう草の根運動を日々やっています」

 メディアでの表現は、私たちの暮らしとも深く関わっています。

 タレント、エッセイストの小島慶子さんは、テレビ番組で出演者の容姿や性的指向について「ブスとかオネエとか、『(使うのは)あり』という製作現場の理屈が、本当に社会に共有されているのか」と疑問を呈しました。「メディアでの会話は学校や職場で再生産され、番組と同じ文脈で使われるとは限らない。いじめやハラスメントにもなる。誰にとっても心地よい社会になるために、どんな表現がふさわしいのか、考えることをやめず、探っていきたい」 メディア企業だけの問題ではありません。「子育て支援の冊子には母子だけの写真が使われる一方で、イクメンイベントは花盛り」。ジャーナリストの白河桃子さんは、自治体の発信にみられる典型的な問題点を指摘しました。ある県の婚活ガイド本には「女性は受け身の性」などと書かれていて、回収騒動に。イクメンの指南書では、妻が働くという設定がない事例もあったそうです。企業や自治体から炎上防止の助言役を頼まれることも増えたといい、「どうすればみんなが不快にならないコンテンツの発信やチェック機能がもてるのか、考えたい」と呼びかけました。

 一方で、多様性への配慮は表現の自由を狭めることにつながらないでしょうか。ニュースサイト「ハフポスト日本版」の竹下隆一郎編集長は「逆に表現の幅を広げるのでは。言っていいこと、やっていいことが変わってきた中で、格闘し、新しい表現をする。作り手の腕の見せどころだ」と述べました。

■美化が現実を固定する 大妻女子大・田中東子准教授

 メディアのジェンダー表現に「ノー」が突きつけられる背景について、大妻女子大の田中東子准教授(メディア文化論)に聞きました。

     ◇

 「炎上」の背景の一つに、女性が直面する現実を美化することで、それを変革するのではなく、保持する機能を果たしてしまうという構図があります。作り手は女性を好意的に表現しているつもりなのに、受け手の女性は「ワンオペ育児」のつらい現実を突きつけられたり、努力しているのに「もっと頑張れ」と言われたりしているように感じてしまう。

 一方、今月問題になった二つの事例は、制作者側の「炎上してでも注目されたい」という意図すら感じてしまいます。短期的に見ればアクセス数が増えて成功、かもしれませんが、ネット動画は世界中から見られる。一企業や自治体の問題にとどまらず、「こういう表現が通用する国なんだ」と受け取られ、日本のイメージ低下にもつながりかねません。

 欧米では広告にフェミニズムの視点を採り入れたフェムバタイジング(femvertising)という造語が注目され、新しい女性イメージを提示する表現が次々と生み出されています。日本でも表現のあり方についてまだまだ思考する余地があるのではないでしょうか。(聞き手・三島あずさ)

     ◇

 今回「ジェンダーとメディア」というテーマを皆さんと議論したいと思ったのは、わたし自身の悩みからです。慣れ親しんできた価値判断、記事の切り口や文中表現について、本当にこんな書き方を続けていていいのかと、数年前から思い始めたのです。一つが、性別を巡る表現や切り口でした。今週中にも同じテーマで朝日新聞デジタルのアンケートを始めます。新聞も含め、メディアが発信する表現のありようを一緒に考えられたらと思います。(錦光山雅子)

     ◇

ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするか、ファクス03・5541・8259、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「ジェンダーとメディア」係へ。
posted by Nina at 00:00| 千葉 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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