この所、気温上昇で食中毒の出所までがこれまでと違ってきて特定ができず、ひょっとしてスマホからの感染経路も考えておかなくてはなどと言われている。
全国高校野球選手権大会の激闘が終わったが、それに先立つ愛知大会の会場は熱と湿気が籠もりやすい球場であった為、開会式中に中京大中京の4番打者が熱中症で倒れる場面もあった。若い彼らの中でも2人が担架で運ばれ、計4人が医務室で処置を受けたということであった。
中井誠一・京都女子大名誉教授が、厚生労働省の人口動態統計から、熱中症によるとみられる死者数を調べたところ、12年までの45年間で1万1087人が死亡していた。93年以前は年平均で67人だったが、最近約20年では年平均492人に増加、20年前の7倍を超える。記録的な猛暑だった10年には1745人にのぼった。
近年、真夏日や熱帯夜となる日数が増えた。猛暑は、農作物や林業に被害を及ぼし、魚の生息域が変わるなどで水産業にも影響する。熱中症以外の健康被害もあり、循環器や呼吸器の病気を悪化させるほか、温暖化が蚊など媒介動物の生息域を広げ感染症の増加をもたらすとも指摘される。
気象庁は、「高温に関する異常天候早期警戒情報」などで注意を呼びかけ、環境省や厚生労働省などの関係省庁は連絡会議をつくり、熱中症への警戒を促している。気象庁によると、長期間の統計があり都市化の影響を受けにくい全国13地点の平均で、最高気温が30度以上の真夏日は、1931〜40年は年36・6日だったのが、2013年までの10年で44・1日に増えた。07年に新設された35度以上の猛暑日は30年代はほとんどなかったが、近年は年に数日ある。
また、夜の最低気温が25度を下回らない熱帯夜は、40年までの10年間は年11・2日だったが、昨年までの10年間は24・7日に倍増。コンクリートの建物などに熱がたまり、夜になっても気温がさがりにくい「ヒートアイランド現象」が起きやすい都市部では、さらに深刻になっている。気温上昇や高齢化を背景に熱中症で死に至る人が増えている。
熱中症は、高温多湿で体内の水分や塩分のバランスを崩し、体の中に熱がたまり起こる症状の総称だ。めまいや失神、けいれん、嘔吐、頭痛などがある。江戸時代には「中暑」「霍乱(かくらん)」、明治以降は日射病、えつ病と呼ばれた。中井さんは「かつては炭鉱労働者や炎天下で活動する軍隊で発生したことから、労働問題としての対策が中心だった。だが、近年は高齢者、若年者などそれぞれの状況に応じた対応が必要になっている」とする。
高齢者は特に要注意だ。昼も夜も暑い日が続くなか、数日かけて徐々に食欲や体力を失い、持病の悪化や感染症の併発などで、死に至る例が目立つ。最も死者が多かった10年の犠牲者の8割が高齢者だった。それも室内での発症が目立つ。国立環境研究所の調査では、熱中症の発生場所の4割が住宅内だった。小野雅司フェローは「高齢者は長時間を室内で1人で過ごすことが多く、発見が遅れがちになる」と話す。
小児では保護者が様子をよく観察することが必要だ。68年以降に死亡した4歳以下の288人のうち、0歳は158人で半数以上を占める。最近の死者数は減少傾向だが、自分で移動できない乳幼児が車内に置き去りにされる事故が後を絶たない。
小中高校生は学校の部活動などの運動で発症する。日本スポーツ振興センターによると、12年度には4971人の発症例があった。炎天下でのランニングのほか、剣道や柔道など室内競技で発症することもある。
40〜50代の男性に多いのが労働現場での熱中症だ。建設業で多く、作業の初日や2日目といった現場の暑さに慣れていない時期の発症が多い。
東京23区内で昨夏、熱中症で死亡した人の3割以上は、夜間に亡くなっていたことが東京都監察医務院の調査でわかった。そのうち屋内が9割を占め、ほとんどがエアコンを使っていなかった。
異状死の原因を調べる医務院が、7〜8月の死亡例をまとめたところ、原因が熱中症の死者は114人(男性70人、女性44人)で、死亡推定時間帯は日中(午前5時〜午後5時)が48人、夜間が34人、不明が32人だった。このうち7月は日中と夜間の死者がそれぞれ17人、18人とほぼ同数だった。屋内で死亡した人が圧倒的に多く103人。うち90人はエアコンを使用しておらず、66人は一人暮らしだった。
総務省消防庁のまとめによると、昨年6〜9月に熱中症で救急搬送された人は5万8729人で、最多だった10年を上回った。65歳以上が2万7828人で5割近くを占めた。人口10万人あたりの搬送者数は、高知県が約75人、和歌山県が約71人、熊本県は約68人だった。今年6月は昨年を上回る4634人が搬送され、うち6人が死亡し、98人が重症だった。
都監察医務院は「夜間も十分に水分補給したり、エアコンで正しく温度管理したりすることが重要だ」としている。
暑さへの対策としては、外出時にぬれタオルを持ち歩いたり、自宅なら植物のカーテンやすだれで日差しを遮ったりする方法がある。
「赤黄青」の色調などで危険性が一目でわかる「熱中症計」や、環境省のサイトで発表され、熱中症の危険度がわかる「暑さ指数」(http://www.wbgt.env.go.jp別ウインドウで開きます)も参考になる。服部教授は「自分は大丈夫と考えがちな高齢者ほど危険。自分の感覚ではなく、客観的な数値で判断するように気をつけてほしい」。
まだまだ、暑さが続きそう、熱中症対策も油断なくしてください。
「教えて!『かくれ脱水』委員会」(委員長=服部教授)のサイト(http://www.kakuredassui.jp別ウインドウで開きます)で、他にも対策を知ることができる。
出典:
◆朝日新聞【災害大国】あすへの備え
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