「日本全体の空き家率が20%を超えると住宅地の荒廃が進むエリアが増える」(野村総合研究所の榊原渉氏)ため、地域にとっても大きな問題だ。空き家を嫌って住民が地域外に流出し、さらに空き家が増えて街が荒れる可能性もある。こうした危惧があるため、15年には「空き家対策特別措置法」が施行された。倒壊する恐れのある「特定空き家」に対し、修繕・解体を勧告したり命令したりする。代執行で取り壊すことも可能だ。相続した実家を持て余す人は「特定空き家」にならないように注意したい。市町村に倒壊や景観を損ねる恐れがある「特定空き家」に指定されると、固定資産税が6倍になる。
これまで、相続税がかからない非課税枠が「5000万円+法定相続人1人あたり1000万円」だったところ、「3000万円+1人あたり600万円」に大幅に減った。それだけ相続税を払わなくてはならない人が増えることになる。相続税の課税対象者は10万人超と、改正前の2倍以上に増える見通しだ。課税対象になる不動産が、売れない事態も起きる。
相続税対策に建てられていた、東京23区や千葉県、神奈川県のアパート空室率は35%前後と高水準だ。相続税対策によるアパートが乱立し、供給過多になっている(不動産調査会社のタス東京・中央)。人口が集中する都市部でさえ、状況は良くない。
空き家の増加抑制には中古住宅の市場活性化も必要だ。住宅流通に占める中古の割合は米国や英国は9割を占めるのに対し、日本は15%程度にとどまる。持ち家を推進するばかりで、ひとたび住めば中古と扱われる住宅政策できたツケでもある。富士通総研の米山秀隆氏は「減税や補助金も活用しながら、良質な中古住宅を循環させる必要がある」と話す。
空き家問題の解決には「税制などを変え、多くの人がセカンドハウスを取得しやすい環境を作り、移動人口を増やすことも有効」(野村総合研究所の榊原氏)との指摘もある。
参照:日経ヴェリタス2016/7/8
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