政府は21日、組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の新設を目指すが、戦前・戦中の治安維持法による監視社会を招きかねないとして、表現活動に携わる人たちが反対の声を上げている。
兵庫県内では77年前、同法違反容疑で文学青年らが逮捕された「神戸詩人事件」が発生。事件に詳しい詩人季村(きむら)敏夫さん(68)=神戸市垂水区=は「権力による表現の自由への介入を許す危険性がある」と警鐘を鳴らす。
事件は1940年に発生。詩の同人誌「神戸詩人」に投稿していた県内の詩人たちが、治安維持法によって逮捕され、長期間、拘留と取り調べを受けた。
季村さんは「さほど影響力を持たない、文学好きの貧しい青年たちだった」と指摘する。その彼らが、国家にとって危険な集団とひとくくりにされ、ある日突然逮捕された。
「ほとんどの逮捕者にとっては、えん罪と言える事件。二度とあってはならない」
改正案を巡っては、作家らでつくる「日本ペンクラブ」(浅田次郎会長)などの団体、戦前の言論弾圧事件の関係者からも反対の声が相次いでいる。
菅義偉官房長官は閣議後の会見で、一般の会社や市民団体、労働組合など正当な活動をしている団体には適用されないと説明。「(改正案では)内心を処罰するものではないことを明らかにした」と理解を求めた。
政府は今国会での成立を目指すが、季村さんは「治安維持法を想起して不安を駆り立てられる」と訴える。
出典:3/21 神戸新聞(段 貴則)
2017年03月23日
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