不妊の原因の半分は男性側にあり、その原因のうち、90%を占めるのが「乏精子症」だとされています。帝京大医学部の押尾茂講師(泌尿器科学)らによる調査で、日本人の20代男性の精子の数が40代前後の男性に比べ半数ほどしかないというレポートも明らかにされたのです。東京近郊に在住の20代男性50人と37-53歳の男性44人の精子数を比較したところ、1mlリットル当たりの平均精子数が40代前後の男性は8,400万個に対し、20代男性のそれは4,600万個ほどしかなかったという。ある研究によると、明治時代の男性と比較すると、現代の男性の正常な精子数は半分くらいまで減っていると言われています。そもそも男性ホルモンは30歳ごろから除々に減少し、精液の量や質に影響を及ぼします。米コロンビア大学の研究チームは2006年、加齢とともに精液量は1年で0・15〜0・5%ずつ減少、正常な形態の精子数も1年で0・2〜0・9%ずつ減少すると報告しました。精子の運動率も50歳を過ぎると30歳以下に比べ約30%低下するとしています。つまり、晩婚化によって子供ができない理由は男性の側にも原因がある、しかも日本の男性は精子が減少しているとのことなのです。
日本では日常用いている食器やカップからも微量ながらも環境ホルモンが溶出、精子減少など生殖機能に影響を与えてきたことを思い出さなくてはなりません。少子化傾向にも影響していると警鐘を鳴らすようになったからです。私達の身近にあるダイオキシンをはじめとする72種類の化学物質が環境ホルモン(内分泌かく乱物質)として、健康をおびやかしていることは以前からいわれてきて、学校の焼却炉までも廃止したり、田舎でもたき火も自粛ぎみだが、そればかりでなく、若い男性がよく手にする缶コーヒー、カップラーメンが微妙に影響していたというデータがあるのです。
かつて「ザ・スクープ」(テレビ朝日)では世界各国の環境ホルモンへの取り組みを紹介、日本の対応の甘さが浮き彫りになっていました。精子数が激減しているといわれる日本の1970年代生まれの若者の食生活の実態をリポートし、番組では、化学物質に囲まれた生活習慣を明らかにした。この中で環境ホルモン汚染を検証したが、食器に使われるポリカーボネートから環境ホルモンの一種であるビスフェノールAが検出、またスチール缶(内側に金属が錆びないようにコーティングがほどこされている)からは、330ppbのビスフェノールAが検出されたとした。この他、インスタントラーメンのカップ容器、水道水などについても環境ホルモンのフタル酸エステルが検出されたとした。
1980年に入って米国のフロリダでワニの生殖器異常が確認されたのを皮切りに、90年以降世界の各地で環境ホルモンによる弊害が確認、人類の存亡に関わるとして緊急対策項目となっているのにです。1992年に精子の減少を過去のデータと比べたデンマーク大学病院のスカケベック教授が登場し、世界的な精子の減少傾向について、「世界各地でまちまちだが、1ml当たりの平均精子数は1億から6,000万に推移している」と述べました。また、こうした傾向について、「ここ30年ほどの間に何らかの複合原因により精子が減少したと考えられる」と結論付けたのです。これまで近年の日本における不妊症の増加、少子化傾向についてさまざまに取り沙汰されてきたが、環境ホルモンが大きく関与していることが明確になったというわけです。
各自治体で独自の調査を行なうといった動きも出始め、横浜市など学校給食の食器の安全性について調査に乗り出す方針を明らかにした。学校給食で用いられているポリカーボネート製食器が熱湯を注ぐとビスフェノールAが溶出することが判り、父母たちの不安が高まったためでした。我孫子市では、市内の消費者団体、女性の声を重視して、学校給食の食器はおろか、合成洗剤を使わないということで粉せっけんを用いるようになり、そのために調理室の排水処理も見直して対応したということです。
こうしたことを科学技術庁、厚生省や環境庁とともに、国立環境研究所が中心となり、大学や民間の研究所を交え、--1)環境ホルモンの計測技術と生物に影響を及ぼす濃度評価法の開発、2)異常を引き起こすメカニズムの解明、3)野生生物への影響とヒトの精子の減少の実態調査-の3項目について、総額7〜8億円を投じ本格的な調査・研究を行ない、「必要ならば規制」をという手順だが、さらに「化学物質をどの程度暴露した時、どのような影響が、何年後に出るか」といったことを科学的に立証するまでには膨大な時間を要するので規制までにはいかないのだろうから、対処法として環境ホルモンの少ない容器を採用するようになったと思うが、今やコンビニで個食の容器を「チンする」、田舎の駅でも、スキー場でも自動販売機が24時間ホットなドリンクを提供するなどはさらに頻繁に行われて、世界に類を見ない環境ホルモンの人体事件が継続して行われているような感じです。世界各地の研究機関の検証で、環境ホルモンと「生殖」との因果関係が明らかになり、日本が規制に本腰を上げた頃にはすでにとりかえしのつかない事態に陥っていることなる憂いがあります。自衛、自ら率先して情報収集するしかありません。
2017年01月13日
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