母性保護法指定医とは、産婦人科専門医にとって取得そのものは難しくないが、要求される書類や必須の講習会が多く、タダでさえ不足や過重労働が問題視される産婦人科医にとって負担が大きい。また、医師免許は日本全国の病院で使えるが、母体保護法指定医は特定の病院内でしか有効とならないとシステムである。ゆえに、「書類上は院長が執刀医だが、実際の手術は大学病院からのアルバイト医師」のようなケースは、水面下にかなり存在すると思われ、母子保健課の担当者はこういう現状を理解しているからだろう。
産婦人科医の不足は今なお全国的に続いており、若い世代の転入の目立つ埼玉県も参加の窮状は差し迫っている。どうも2006〜9年頃から、妊産婦が亡くなる事故が続き、医師の逮捕もおきて、産婦人科医やお産を扱う病院が激減した。次に起きたのが「妊婦たらい回し」という救急搬送がおきた事件で、周産期医療の現場は様変わりしていたのも表に出てきたのだ。
少子化傾向であるから、なんとか出産のためのベットが確保できるという現状では、女性が輝くとは表面上で言っているが、出産の現場はお粗末な状況なのだ。女性たちも出産後は子育てに大車輪となり、一人出産で終わる場合もあるため、現場の改善が現場からあがりにくい。その上、高齢出産が増えて、異常分娩も増えているので個人病院は、そうした出産が予想されると受け入れは病院へ回しているのが産科状況だという。GICU(一般集中治療室)、(NICU(新生児集中治療室)がある病院が需要が増えて、個人病院でお産が可能であるケースでないと受け入れないし、産婦人科の廃業も増えてしまった。生まれる数が減っているが、不妊治療、多胎出産、高齢出産の割合が増加、そのための異常分娩の対応、新生児医療の高度化が起きて、個人病院での対応が難しくなった傾向がみられる。
男女平等が叫ばれて、リプロ(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)やジェンダーという横文字がバッシングに合いながら、それが「男女共同参画社会基本法」として定着したものの、女性が生み出す命や健康(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)そして、性別に基づいて社会的に要求される男女役割などの社会的性差別(ジェンダー)は依然として改善を求めていかなくては日本の女性が輝くには世界標準に追いついていかない。