5月のソチにおける日ロ首脳会談で、安倍首相は新しい発想と言うことで、経済協力を提案しました。当然プーチン大統領は前向きに歓迎しました。次に9月にウラジオストクで日ロ首脳会談を行い、経済協力についてさらに具体的な提案を行い、そのプロジェクトの進捗を定期的に日ロ首脳会談でフォローしようという提案となりました。もっとも、ロシアはこの時点では北方領土の実効支配を強化し、経済を優先し領土問題は棚上げする姿が報じられています。そして11月ペルーで行われたAPEC首脳会議に際して、プーチン大統領と首脳会談を行い、 12月15日に首相の地元の山口県で首脳会談をすることを確認しました。
その会談後、首相は記者団に領土交渉の進め方について、「道筋が見えてきた」と述べた上で「その手応えを強く感じとることができた会談だった」と語ったのでした。いよいよ12月の来日前にプーチン大統領は読売新聞と日本テレビのインタビューに対し、「北方領土については、領土問題は存在しない」と言いながらも、1956年の日ソ共同宣言の歯舞・色丹の引き渡しを認めつつも、それも無条件ではないと言う「2島?α 」の立場を示し、4島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの日本の立場を、「まったく別の話」と牽制し、クギを刺したわけです。ロシアにとって、北方四島を返す理由をロシア国民に説明できません。ヤルタ協定で第二次世界大戦後の終戦処理として、千島はソ連領となることが認められています。ただ歯舞・色丹については千島列島の一部か北海道の一部か微妙なところがありますから、日ソ共同宣言で歯舞・色丹の返還を認めたのでしょう。ですから、プーチン大統領が切れるカードは「2島?α」しかありません。
安倍首相のこの日ロ外交のプロセスを見ると、外交能力も危うさをしりました。首相の周辺で外交政策を支えているスタッフは、ひとりよがりの首脳外交を見て見ぬふりをしているのでしょうか。日本の主張する北方領土問題はロシアには存在せず、「2島?α」を「2島+ α」に変えることが現実解であることを再認識するひつようがあります。
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