韓国の朴槿恵大統領が「任期短縮を含めて進退問題を国会の決定にゆだねる」と述べ、実質的に退陣を表明した。これは遅かれ早かれ予想されていたことで、韓国では珍しくない。
軍事政権の大統領は(彼女の父を含めて)例外なく失脚するか殺され、文民が大統領になってもすぐクーデタで失脚したのが、韓国の戦後史(韓国の戦後とは、朝鮮戦争後の意味になる)。
こういう事件が繰り返される背景には、儒教の伝統がある。中国では科挙ですべての国民から官僚を登用したが、この高級官僚は3万人に1人ぐらいしかいなかったので、他の一般公務員は彼の一族を雇った。宗族(親族集団)は結束を固めて秀才を支援し、彼が科挙に合格したら大挙して公務員や出入り業者になって税金を食い物にした。
こうした腐敗で政権が劣化すると、農民反乱や異民族の侵入が起こる。これが300年に1回ぐらい功を奏すると、王朝が交替すると、皇帝の一族も高級官僚も皆殺しにされる。宮廷は徹底的に破壊され、遷都が行なわれることも多い。つまり中国では「革命」のたびに政権が根こそぎ破壊され、その正統性も失われるのだ。
中国の制度をお手本を正当だとして真似してきた韓国では、大統領が交代するたびに政治組織が一掃される。これはカール・シュミットのいう「政治的一神教」だhttp://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51884156.html)。この構造を維持するには、つねにすべての国民の敵を作り出して「われわれ」の同一が必要だ。
旧植民地が旧宗主国を激しく憎み続けてきた。これは、フィリピンや台湾とは対照的だ。台湾の場合は中共という巨大な敵がいるので他に敵をつくる必要はなく、むしろ日本を味方につけないと危険だ。しかし韓国のには、そういうわかりやすい敵がいない。北朝鮮には数百万人の離散家族が残っているので、敵か味方かわからない。
そこで日本を敵に仕立てるシンボルとして使ったのが、慰安婦問題だ。普通は敵にされた側が怒るが、日本では朝日新聞が政府の後ろから弾を撃ってくれたので、韓国にとってはラッキーだった。大統領が変わっても、この構造は変わらない、次が誰かは兎も角、韓国の地政学的な位置が変わらない限り、負のデモクラシーは続くだろう。
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参照:アゴラ 池田 信夫 11/30
2016年12月01日
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