結婚後に職場で旧姓使用が認められず人格権を侵害されたとして、私立の中高一貫校「日本大学第三中学・高校」(東京都町田市)の30代の女性教諭が、同校を運営する学校法人「日本大学第三学園」に旧姓の使用を求めた訴訟の判決が11日、東京地裁であった。小野瀬厚裁判長は「職場で戸籍上の氏名の使用を求めることには合理性、必要性がある」として、教諭の請求を棄却した。
今回の判決について、原告代理人の早坂由起子弁護士は「現代の社会の実情が見えていない判決だ」と批判し、控訴する意向を示した。学園の高瀬英久常務理事は「学園の主張が裁判所に理解されたと評価しています」とコメントした。
今回の判決は、男性裁判官3人が判断した。旧姓を使える範囲が社会で広がる傾向にあることを認めつつ、「旧姓を戸籍名と同様に使うことが社会で根付いているとは認められない」と結論づけた。理由として、「既婚女性の7割以上が戸籍名を使っている」とする新聞社のアンケート結果や、旧姓使用が認められていない国家資格が「相当数」あることを挙げた。
旧姓使用をめぐっては昨年12月の最高裁大法廷判決が、「旧姓使用が社会的に広まっており、戸籍名に変わることでの不利益が一定程度緩和される」ことなどを理由に、夫婦同姓を「合憲」と判断している。
棚村政行・早稲田大教授(家族法)は、今回の判決について「時代に逆行している判断で、社会の現実が見えていない。最高裁の判決から大きく後退しており、残念だ」と話す。「女性が夫の姓に変えざるを得ない現実を無視しており、判決は旧姓が使用できないことによって失われた『利益』への配慮が欠けている。個性を大事にする教育現場こそ、個人の意思が尊重されるべきだ」
昨年の最高裁判決は、結婚後の姓の問題について「国会で論じ、判断するものだ」とも述べたが、国会での議論は進んでいない。
「結婚などで姓を変えざるを得ない人たちが安心して働く環境を、(判決が)壊している」。判決後の記者会見で、原告の教諭は涙を浮かべながら悔しさを語った。「結婚前に書いた参考書や講座の名前など、自分が築いてきた実績と名前を切り離したくない」
判決は、結婚前の姓より戸籍上の姓のほうが「より高い個人の識別特定機能をもつ」と述べた。代理人の早坂由起子弁護士は「これは明らかな誤りだ」と指摘。教諭は生徒や保護者、同僚から旧姓で呼ばれている。一部の管理職だけが戸籍姓で呼んでいるという。こうした学校の対応について、弁護団は「一種のパワーハラスメントだ」と語る。
政府の「女性活躍加速のための重点方針」では旧姓使用の拡大がうたわれ、住民票の写しやマイナンバーカードでの旧姓併記も検討されている。弁護団は判決について「国の動きにも逆行している」と語り、控訴する意向を明らかにした。
ヒラリー・ロドナムークリントンは、結婚後も旧姓を使っていたが、夫の初めの州知事選に落選後、周りの話をいれて、クリントン姓を名乗るようになったという。欧米の流儀を入れた日本はアジアの中でも女性は夫の姓に改正することになった。儒教の慣習に従っていれば、中国や韓国のように夫婦別姓だったはずだ。(子供は父親の姓になるが・・・)
参照:朝日新聞 10月11日
2016年10月13日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック