厚生労働省の2013年の統計によれば、日本人の健康寿命は男性が71.19歳、女性が74.21歳。平均寿命との差は、それぞれ9.02年と12.4年とされる。そこで、日本抗加齢医学会の正会員でもある管理栄養士の堀知佐子氏は「40代から60代までの間に体を整え、70代以降はそのおつりで生きていくことを目指しましょう」と言う。健康運動指導士の菅野隆氏は、「運動や歩行に問題が出る年齢より前に、筋力トレーニングを習慣化しておくことが必要です」と助言する。
■老化のしくみを理解し、生活を見直せば 「老けない体」をつくることは可能
健康寿命を損なう病気には、心臓病、脳血管障害、糖尿病、骨粗しょう症など、さまざまなものがあります。とくに糖尿病は、他の生活習慣病やガン、認知症の発症リスクも高める怖い病気です。
こうした病気の多くは、加齢に伴う身体の「老化」が原因で起きてきます。老化の進行要因は、以下の3つです。
(1)活性酸素が、細胞を構成する脂質などを傷つけ、「体のさび」が徐々に進行します。活性酸素を無害化する酵素も、加齢とともに減少します。
(2)タンパク質の糖化――生きるために必要なエネルギー源である糖が、体を構成する主成分であるタンパク質を変化させます。その結果、細胞や酵素などの働きが悪くなり、体の機能低下につながります。
(3)ホルモン分泌の変化――若さを保ち、免疫力を維持するDHEA、筋肉量や筋力の維持に関わる男性ホルモン(女性の体内にもあります)、睡眠に関係するホルモン(メラトニン、セロトニン)の分泌が、ストレスが原因で下がり気味になり、さまざまな不具合が生じます。
活性酸素による酸化は、抗酸化物質や、SODの材料となるタンパク質や亜鉛を含む食材を意識してとること、喫煙や暴飲暴食、激しすぎる運動を避けることなどで抑制できます。糖化の予防には、糖質の多い食材を控えめにすること、タレを付けて焼いた肉の焦げ目など糖とタンパク質が高温で結びついてできるAGEs(最終糖化産物)の摂取を控えること、体の満腹サインを受け取れるようゆっくり食事すること、の3点を心がけてください。
ホルモンレベルの維持には、質のいい睡眠の確保が重要です。人の脳や体は、眠っている間にホルモンの力でメンテナンスされるしくみになっているからです。どんなに遅くとも夜12時前、できれば11時前には床につくことが望ましいです。ストレス対策は暴飲暴食ではなく、軽い運動で。DHEAはサプリメントで補充することも検討してください。
■知っておきたい老化の3大要因およびその対策
老化のメカニズムが科学的に解明されるにつれ、それを抑制する方法も明らかに
[1]活性酸素による酸化――体内でエネルギーをつくるときに発生する活性酸素が、細胞を傷つける。
対策:食事の改善。喫煙や暴飲暴食など、体内の活性酸素を増やす習慣を改める。
[2]タンパク質の糖化――体内のタンパク質が糖によって変化し、細胞や酵素などの働きが悪くなる。
対策:糖質をとりすぎない。早食いは避ける。AGEsの摂取を控える。
[3]ホルモン分泌の変化――ストレスが原因で、「若返りホルモン」DHEAや男性ホルモンなどの分泌が減る。
対策:ストレスを極力避ける。できれば11時前には寝る。睡眠時間は7時間がベスト。
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