創業800年温泉宿のアイデア主人
神戸の中心部から、車を使えば30分で到着する有馬温泉。バブル崩壊で客足が低迷、一時、宿泊客は年間100万人にまで落ち込んでいたが、今や170万人を超え、以前皆無だった日帰り客も多く押し寄せている。
その歴史は古事記にも記される日本最古の温泉の一つで、豊臣秀吉も繰り返し訪ねたという伝統ある温泉街だ。その有馬温泉が驚くほどの集客をするようになる大逆転の仕掛け人こそ、創業800年という日本屈指の老舗温泉宿「御所坊」主人の金井啓修だ。喫茶店にベーカリー、和風ホテル、アロマ、おもちゃの博物館まで…町中に様々な施設を作り上げ、ひなびた路地にすぎなかった温泉街の通りを、大賑わいの散策路に一変させた。3輪電気自動車でレンタカーを始めるなど、次々と生み出すユニークなアイデアで街に活気をもたらした、老舗宿15代目の再生術に迫る。
地域に眠る“物語”を資源に変えろ!老舗主人の異色人生
年間30万本を売る“ご当地サイダー”の火付け役「ありまサイダー」。そんな土産品開発でもヒットを飛ばす金井氏とは。そのヒット術を支える考え方が「地域にある物語」をいかに生かすか(「炭酸」と縁深い有馬…だから“ありまサイダー”)。 御所坊の15代目として生まれた金井は、もともと画家志望。しかし、20代の時、偶然立ち寄った十和田湖畔のアンティーク調のピザ屋でヒントを得て「地方にも土地の歴史を生かした店作りができる」と発奮。当時全盛だった大規模旅館で団体客を狙う戦略ではなく、個人客にターゲットを絞った「御所坊」の大改装に乗り出す。
谷崎潤一郎や吉川英治など…宿に泊まった文人の書などを展示し「御所坊」にある“物語”を付加価値としてアピール、単価の高い宿に一変させた。金井はそんな経験を経て、低迷していた温泉街再生のリーダーとして注目を集めるようになり、有馬に眠る様々な物語を発掘し、観光資源に変えていった。金井流再生術の原点とは?
日本全国“美味しい宿”を世界に売り込め!
いま金井が力を入れるのが、日本各地の宿との連携だ。2年前に宿仲間で「日本 味の宿」を結成。料理にこだわり、味わい深い風情のある旅館30軒が一体で、海外への売り込みなどを行う。「この宿に泊まれば日本を楽しめる」そんな横の連携を作り、旅館業界を盛り上げたいという。
2016年02月23日
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