2015年09月24日

大規模洪水、災害弱者への対応が遅れる

大規模な洪水に見舞われた茨城県常総市では、発生から11日経った21日も、1300人の市民が市内外の避難所で生活を続けている。水道は21日夜になって、市内全域で復旧したが元の生活に戻れる見通しは立たない。障害のある人や、自閉症の人がいる家族は不自由な毎日を強いられている。

 石下(いしげ)総合体育館で避難生活を続ける斎藤哲雄さん(66)は文字が認識できない「視覚失認」という障害があり、妻の純子さん(61)は全盲だ。

 洪水が発生した日、2人は自宅2階に取り残され、ヘリで救助された。視覚障害者が使う白杖(はくじょう)は、つり上げられる際、置いていかざるを得なかった。2日後にボランティアの車で白杖や、時刻を音で知らせる腕時計を取りに行けたが、周囲に人が多い中で動きづらい状況が続く。

 避難所でラジオをつけたままにもできず、被害状況や復旧の情報は、新聞を読んでもらったり、人に聴いたりして得た。「耳からの情報が少なくて不安だった」と2人は言う。

 自宅にヘルパーを派遣してくれていた市社会福祉協議会の職員と連絡が取れたのは、1週間ほど経ってから。一時的に入所できる福祉施設を探してもらっている。自宅は損壊が激しく「このまま老人ホームに入るか、新しい家を探すか」。先行きが見えず、2人は不安を募らせる。

 「やっぱり集団生活を続けるのは無理。それを実感しただけ」。市内の木村敬子さん(55)は、自宅でそうつぶやいた。

 自閉症の長女(23)と三女(20)がいる。泥水が迫り、他の家族も含めた4人で自宅を出た。子どもがかつて在籍し、宿泊訓練も積んでいた特別支援学校(つくばみらい市)に助けを求めた。しかし避難所になっておらず、入れなかった。

 つくばみらい市内の避難所の体育館へ行った。20世帯ほどしか来ていなかったが、娘2人は落ち着きをなくし、長女は突然外に出て行った。三女は備え付けのピアノをいじり出した。「避難者が増えたらもっと落ち着かなくなる」。トラブルの恐れもあるため、1時間で避難所生活を断念。友人宅に1泊だけして、浸水した地域にある自宅に戻った。

 広瀬勇さん(38)と両親も、自宅が床上30センチ余りまで浸水し、避難所に行ったものの、半日で水浸しの自宅に戻った。母のツギ子さん(66)は昨年12月、脳梗塞(のうこうそく)で倒れて左手と左足がまひし、要介護3に認定されており、電動ベッドがないと寝起きが難しいためだ。

 ツギ子さんは自宅近くの通所介護施設で毎週2回、リハビリをし、介助を受けて入浴してきた。だが、この施設も機器が水につかり、10月まで受け入れができないという。勇さんは「避難所にも介護施設にも行けない」と嘆く。

 ツギ子さんは14日、常総市に隣接する下妻市から迎えに来た介護施設の車で1時間かけて移動し、10日ぶりに汗を流し、簡単なリハビリをした。ツギ子さんは「本当に助かった。でも遠くて体がつらい」と漏らす。だが15日以降、リハビリも入浴もできていない。勇さんは「施設を探し回るしかない」と話す。(酒本友紀子、赤井陽介、池田良)

■常総市、福祉避難所の開設求めず

 鬼怒川の堤防が決壊して大規模な洪水が発生した茨城県常総市は、災害時に高齢者や障害者、妊婦ら一般の避難所では生活が困難な人を対象とした「福祉避難所」を開く協定を、市内6カ所の介護施設などと結んでいたのに、今回、開設を求めていなかった。市の防災担当者は「災害対応に追われ、関連部署間で連携ができていなかった」と話す。

 福祉避難所は、市区町村が指定できる。内閣府の2014年10月1日時点のまとめでは、791自治体(45%)が指定している。東日本大震災でも、高齢者や障害者を含む家族が避難所に行けず、情報や物資が届かないケースがあり、内閣府は13年8月、自治体向けに「福祉避難所の量的確保」と「周知」などを求めた。内閣府によると、石川県輪島市は、福祉避難所の設置運営訓練や要援護者の避難訓練などをしている。

 常総市は13年2月に協定を結んだが、今回は福祉避難所の開設まで手が回らなかったという。市高齢福祉課の瀬尾則昭課長は「救済システムがあるのに使わないと意味がない。職員にも福祉避難所に対する認識が足りていなかった」と話した。

 現在は茨城県が、周辺自治体の介護施設などへ受け入れを要請し、18日時点で常総市内を含め97カ所で394人の受け入れができるようになっているが、あまり知られていないとみられる。

 内閣府の「福祉避難所ワーキンググループ」で座長を務める矢守克也・京大教授は「日ごろからの周知や開設の訓練をすることが必要」と指摘する。
posted by Nina at 00:00| 千葉 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お世話になります。
危機管理アドバイザー尾下と申します。

朝日新聞の社説で「災害と教育」で、郷土の弱点に関する記事が載っていました。
その中で「災害弱者」と表記されています。本表現は、上から目線の表現で、差別標語に該当するのではないかと、平成25年6月の災害対策基本法の改正で「災害弱者」を「要配慮者」と表記することとなりました。朝日新聞で、ましてや社説に載せるとなれば、多くの国民が目を通していると存じます。
本件につきましては、公共放送のNHKにも訂正のお願いをいたしました。
各方面から反響があります。尾下拝
Posted by 尾下義男 at 2015年10月29日 20:27
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