2015年09月18日

「違憲立法」採決は 平和憲法を介錯

強まる国民の反対の中、安全保障関連法案をめぐる与野党の攻防は最終局面を迎えた。与党はあくまでも週内に成立させる構えだ。

 歴代内閣が「憲法を改正しなければできない」と明言してきた憲法解釈を覆し、安倍内閣が集団的自衛権の行使を認める閣議決定をしたのは昨年7月。以来、憲法学者や元内閣法制局長官らの専門家が、そのおかしさを繰り返し指摘し、学生、子育てする世代、戦争経験のある戦中派に代わって若い国民のデモ参加が目立ってきた。もはや、戦後ではない、組織・政党によるデモが目立った時代とは違う、個人の意思を示す国民が平和を求めるデモだ。

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 ■裏道をたどった政権

 その決定打が、違憲立法審査権を持つ最高裁の長官を務めた山口繁氏の次の言葉だ。「従来の憲法解釈が、9条の規範として骨肉と化している。集団的自衛権を行使したいのなら、9条を改正するのが筋であり、正攻法だ」

 もはや最高裁の判断を待つまでもない。集団的自衛権にかかわる立法は違憲だと考えざるを得ない。なぜ、集団的自衛権を行使できるようにしなければ、国民の生命や財産を守ることができないのか。この根本的な問いに、安倍首相は日本人が乗った米艦の防護や中東ホルムズ海峡の機雷掃海を持ち出したが、その説明は審議の過程で破綻(はたん)した。

 それでも政権は法成立へとひた走った。これは、安倍内閣が憲法を尊重し擁護する義務を守らず、自民党や公明党などがそれを追認することを意味する。

 法治国家の土台を揺るがす行為だと言わざるを得ない。 安倍政権がたどってきた道筋を振り返ってみよう。

 2012年末に政権復帰した安倍氏は、9条改正を視野に、まず憲法改正手続きを緩める96条改正を唱えた。ところが世論の理解が得られないとみると、9条の解釈変更へと転換する。有権者に改憲の是非を問う必要のない「裏道」である。

 真っ先に使ったのが、違憲立法を防ぐ政府内の関門であり、集団的自衛権は行使できないとの一線を堅持してきた内閣法制局の長官を、慣例を無視して交代させる禁じ手だ。

 法制局の新たな体制のもと、政権は集団的自衛権の「限定容認」を打ち出した根拠としたのは、59年の砂川事件最高裁判決と72年の政府見解だ


 ■法の支配を傷つける
 だが、砂川裁判では日本の集団的自衛権は問われていない。72年見解は集団的自衛権の行使は許されないとの結論だ。「限定」であろうとなかろうと、集団的自衛権が行使できるとする政府の理屈は筋が通らない

 その無理を図らずも裏付けたのが「法的安定性は関係ない」との首相補佐官の言葉だった。そのおかしさにあきれ、怒りの声が国会の外にも大きく広がったのは当然である。

 安倍首相は「安全保障環境の変化」を理由に、日米同盟を強化して抑止力を高め、国民の安全を守ると繰り返してきた。こうした安全保障論にうなずく人もいるだろう。

 一方、自衛隊を出動させるという大きな国家権力の行使にあたっては、政府は極めて抑制的であるべきだ。どんなに安全保障環境が変わったとしても、憲法と一体となって長年定着してきた解釈を、一内閣が勝手に正反対の結論に変えていい理由には決してならない。

 そんなことが許されるなら、社会的、経済的な環境の変化を理由に、表現の自由や法の下の平等を政府が制限していいとなってもおかしくない。 軍事的な要請が憲法より優先されることになれば、憲法の規範性はなくなる。

 つまり、憲法が憲法でなくなってしまう。


 ■立憲主義を問い直す

 これは、首相が好んで口にする「法の支配」からの逸脱である。自衛隊が海外での活動を広げることを歓迎する国もあるだろう。だが、長い目で見れば、日本政府への信頼をむしばむ。

 裁判所から違憲だと判断されるリスクを背負った政策をとることが、安全保障政策として得策だとも思えない。首相は「夏までに成就させる」との米議会での約束をひとまず果たすことになりそうだ。

 一方で、法制局長官の交代に始まるこの2年間を通じて明らかになったのは、たとえ国会議員の数のうえでは「一強」の政権でも、憲法の縛りを解こうとするには膨大なエネルギーを要するということだ。

 憲法は、それだけ重い。

 憲法学者や弁護士の有志が、法施行後に違憲訴訟を起こす準備をしている。裁判を通じて違憲性を訴え続け、「もう終わったこと」にはさせないのが目的だという。憲法をないがしろにする安倍政権の姿勢によって、権力を憲法で縛る立憲主義の意義が国民に広まったのは、首相にとっては皮肉なことではないか。

 改めて問い直したい。憲法とは何か、憲法と権力との関係はどうあるべきなのか。

 法が成立しても、議論を終わりにすることはできない.


朝日新聞:9月17日
posted by Nina at 20:00| 千葉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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