たまたま、米国議会での首相スピーチをライブで聞きました。それについて、知人がメルマガで興味深いコメントをしていたのでご紹介します。皆様は、どのよう感想をもたれたのでしょうか。
◆日米「不動の同盟国」(steadfast allies)◆
安倍首相とオバマ大統領の首脳会談は、例年になく親密な日米同盟をアピールしました。
「不動の同盟国」がキーワードです。余力を失った米国の軍事力を日本の軍事力で補完することによって、アジアにおける中国の脅威に対抗しようということになったわけです。日米同盟はある意味で歴史的な変化をします。
共同声明にも、これまでにない言及があります。
尖閣列島への侵攻は日米安保条約の対象になると明記し、有事には共同で敵の侵攻を“撃破”するという勇ましい文章があります。広島と長崎の原爆投下についても明示的に人類対する罪である事を書き込み、そして70年
前には敵対的関係にあった日米が「不動の同盟国」(steadfast allies)になったことを強調し、日韓・日中の関係改善も当事者が努力すればきっとできると言明しています。
ただ、今回見直された「日米防衛協力指針」は、日米協力は平時から有事まで「切れ目のない形で行う」と明記しています。すなわち時間的にも、地政学的にも切れ目なしの連携となります。
「日本以外の国に対する武力攻撃」への対処行動として集団的自衛権の行使を想定し、(1)米艦船などのアセット(装備品など)防護(2)捜索・救難(3)機雷掃海や艦船護衛などの海上作戦(4)ミサイル防衛(5)後方支援
での協力を例示しました。
また、地理的制約が事実上課せられていた周辺事態法を「重要影響事態法」に改正することを念頭に、日本有事以外で対米後方支援が必要となる事態は「地理的に定めることはできない」とし、日本周辺に限られないことを明確にしました。これは地球規模の、いわば“常時接続”の日米連携を意味します。
憲法9条で国の交戦権を放棄している日本にとっては、今回の日米防衛協力の体制は明ら
かに大きく逸脱してくると考えるのは当然で、反発も起きています。日弁連の会長は強く反対の声明を出しています。ただ、護憲派が憲法改正の議論そのものをタブーとして封じこめることは、ヒステーリー症状で道を誤ります。憲法は神聖にして犯すべからずでは戦前の 天皇の統帥権と同じ になって、民主制に反することになります。明治維新の初心に帰り、五箇条御誓文第一条の“広く会議を興し、万機公論に決すべし”で行くべきです。
吉田首相のサンフランシスコ平和条約、歴史的にも冷戦とその後の国際情勢を顧みれば、有識者という知識も安保反対の学生運動レベルであったことが露呈していますから。
残念なのは、野党がはっきりした対応を打ち出せていないこと、パワーバランスを欠いている事です。反対の声を上げても、現在の国際情勢の認識とそれに基づいた安全保障の体制について全く腰が座った対応などからして、見え透いています。
ナショナリストではありませんが、日米同盟の現実は、国策であるとして受け入れていくとなると、国会の承認なしに、総理大臣が自衛隊を簡単に動かすことができるという点については、そここそ厳しい歯止めが必要だと思いますが、その歯止めとなるべく期待できるのあが公明党だけで、最近は保守然と物分かりがいいようするりと歯止めも外れてしまう。あくまで連立政権にとどまって、与党である立場を守りたいというレベルなのでご本尊様は何と思うしなのか。いまや国民は、最後のとりでの公明党のリベラルに期待するところ大なのです。
日米「不動の同盟国」(steadfast allies) 共同声明、TPP妥結へ協力
首脳共同記者会見の要旨
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150430&ng=DGKKZO86288410Q5A430C1FF1000
尖閣で中国「撃破」 日米新ガイドライン合意 「切れ目のない協力」確立
日米防衛協力の指針再改定 集団的自衛権で5分野例示
日米安全保障協議委員会共同発表 4月27日
日弁連会長「日米防衛協力指針」改定に反対声明「恒久平和主義に違反する」
◆安倍首相の米議会演説◆
安倍首相が、米国の上下両院合同会議で演説をしました。
祖父の岸信介元首相の米国議会での演説を引き、日米同盟が祖父から始まったことを強調し、また自分も米国留学の経験があり、米国をよく知る者だと強調した、何よりも英語の演説です。非常によくできた演説原稿であること、関係した方々のご苦労と、その能力の高さが十分に認識できます。
演説のクライマックスの演出も凄いものです。日本軍20,129名の戦死、米軍は戦死6,821名・戦傷21,865名の計28,686名という、日本軍を上回る損害で、あの壮絶なるノルマンディー上陸作戦における戦死傷者数をも超えた第二次大戦最高の激戦地となった硫黄島攻防戦に、海兵隊大尉として上陸したローレンス・スノーデン元海兵隊中将と、硫黄島守備隊司令官の栗林忠道陸軍大将の孫、新藤義孝国会議員が、傍聴席にいるという中で、「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉をたたえることだ」というローレンス・スノーデン元海兵隊中将の、硫黄島での日米合同慰霊祭での言葉を引用しています。
かつて戦火を交えた日米の『和解』の象徴として紹介された2人は、傍聴席で握手を交わし、議場の出席者が総立ちとなって2人に拍手喝采を送ったとなります。演説の要旨は、先の大戦での反省、先の大戦におけるアジア諸国民対する「痛切な反省」(deep remorse over the war)を表明しています。ここで、このremorseという単語が注目されています。そして第二次世界大戦で戦死した米国の若人に対しては「Deep Repentance」という表現を使っていることが注目されます。
村山談話での「deep remorse」という表現を使っていますが、村山富市首相談話で使った
「heartfeltapology(心からのお詫び)」は口にしていません。すなわち村山談話の「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」の前半を踏襲し後半を割愛したわけです。これは『政治』です。
歴史認識という点では、村上春樹さんは「歴史認識の問題はすごく大事なことで、ちゃんと謝ることが大切だと僕は思う。相手国が「すっきりしたわけじゃないけれど、それだけ謝ってくれたから、わかりました、もういいでしょう」というまで謝るしかないんじゃないかな。謝ることは恥ずかしいことではありません。細かい事実はともかく、他国に侵略したという大筋は事実なんだから」と作家の言葉を語っています。政治と文学のこの間で一般国民は『和解』の落としどころを悩みます。
後半は、安全保障体制としてのTPPの実現を呼びかけ、日本の改革をコミットしています。そして最後は、「希望の同盟」の呼びかけで締めています。
議会演説の際、聴衆らが立ち上がって拍手を送る場面が10回以上あり、終了後は米議員から相次いで握手を求められた、とありますから、今回の安倍首相は良い仕事を成し遂げる事はできたと評価していいと思います。
反応は、当然に賛否ありますが、十分な摺合せで、かつ米国に対する最大限の気配りの演説ですから、キャロライン・ケネディ駐日大使は「非常に力強い演説」と高く評価しています。議会指導者の評価もいいですが、韓国ロビーを意識してか、米国メディアは謝罪がないということで辛口の評価も忘れていません。
また安倍首相は演説で、女性の人権侵害のない社会の実現を訴えた一方で、慰安婦問題には直接言及しなかった。そこで、日系3世のマイク・ホンダ議員は元慰安婦を招待して反日をアッピールして批判しています。彼は、むしろ韓国ロビーの中心的人物になったことで、組織票を得ており、2007年7月30日に下院本会議で日本政府への慰安婦に対する謝罪要求決議案の採決を用意周到に成功させていました。この時の採決は、議事進行簡潔化の為にサスペンションルールが適用され、議場にいた10人は反対意見がないことを確認し、決議は可決されたとあります。米国議会では午後3時以降は議員の退席が認められていて、その際に議事委任が条件です。此の議案を最後の議案にして残った議員10名で採決したわけす。彼はこの件のロビー活動としては非常に反日的な有能ぶりを発揮したのです。
首相、先の大戦「痛切な反省」 米議会で演説
Japan PM Expresses 'Deep Repentance' For WWII
首相の米議会演説の全文
「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)
村上春樹さん、時代と歴史と物語を語る(下)
マイク・ホンダ 日本名:本田 実
「非常に力強い演説」…ケネディ大使、高く評価謝罪明確にしなかった…米メディア、厳しい評も
中国、焦点絞り批判 安倍演説 韓国メディアは「不十分」
他方、元米兵捕虜の遺族団体「バターン・コレヒドール防衛兵記念協会」のジェン・トンプソン代表は、「旧日本軍による捕虜への虐待に言及しなかったことに失望した」と話しました。
2015年05月03日
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