一つは、「価値を見出す力」である。
自分の置かれた環境、そこに結ばれる縁、たずさわる仕事等々に、多くの人はさしたる感興も覚えず、それらはたまたまのもの、ありきたりのものと見なしがちである。だが、一業を成した人はそこに独特の強烈な価値を見出すのだ。
もう一つは、価値を「信じる力」である。
一例が京セラ創業時の稲盛氏だ。セラミック製造の作業は埃まみれ泥まみれ、汚い、きつい、厳しいの典型的な3K職場であった。若い社員の顔にはうんざりした色が浮かぶ。深夜作業を終えると、そんな若い社員と膝を突き合わせてラーメンをすすりながら、稲盛氏は熱っぽく語り続けた。自分たちがやっているのは世界の誰もやっていない仕事なのだ、自分たちは世界の先頭を走っているのだ、と。仕事に見出した価値を強烈に信じていたのである。
価値を見出す力。その価値を信じる力。これこそ信念の力である。
信じ念じる力が道のないところに道をつくり、人を偉大な高みに押し上げていくのである。
『石切職人』という有名な寓話がある。
新しい教会を建設している現場で、三人の石切職人が働いていた。
三人の石切職人に「あなたは、今何をしているのか」と尋ねたところ。
一人目は、「お金を稼いでいるのさ!」
二人目は、「この大きくて固い石を切るのに、悪戦苦闘しているのさ!」
三人目は、目を輝かせ、こう答えた。
「多くの人々の心の安らぎの場となる、素晴らしい教会を造っているのです」
自分の仕事に価値を見出せない人は、人生の大半を無駄に過ごすことになる。価値を見いだすとは、仕事にしろ、家事や、ボランティアにしろ、それが人の役に立ち、気持ちを明るくし、世の中を豊かにさせていることに気づくこと。
人の役に立っていることが確信できたら、己の心に限りない力がわいてくる。今、目の前にある仕事に…
価値を見いだし、その価値を信じる力を養いたい。
出典:
藤尾秀昭 『プロの条件』(致知出版社)
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