2014年10月17日

「医療・介護改革にどう対応する」の講演を聞く  超高齢化の先進市・柏の事例から

辻 哲夫氏(東大高齢社会総合研究機構特任教授、元厚生労働事務次官)が、来年の改革の今後の展開などを見据えて、この大改革に対応して「住み続けられるまちづり 」を進めるにはどうしたらいか、アビイホールでお話しを聞きました。300人入る会場は、ほぼ満席でした。
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以前に坂の街・長崎の医療体制について視察したが、地域をかかりつけ医が守るという発想を街の医師たちが率先して取り組んで、ITを導入して進めていた。その際に、柏などを含めた全国の5つほどの緩和ケア医療のモデル地区があることを聞いて、隣市としては心強い思いがした。それが、今は高齢化にも先進例として取り組んでいるとの話は、我孫子市民もスマートな選択をしやすいようになっていけると、ちょっと安心になり聞いて良かったと思えました。わが母も、父を亡くしてからもう二十年近くいなり90歳です。最近まで自ら自動車の運転をして趣味のお稽古に余念がなかったが、ロコモの症状が進んでいます。これに対抗するのは難しいのかもしれないが、本人はまだまだ頑張っているし、こういう社会対応の進展があるなら、明るい気持ちでいられる気がしてきました。

◆東大の研究機構で高齢化への明るい「まちづくり」を目指して
東大・柏キャンパス研究開発領域では5年前からプロジェクトとして、全国でも注目の高齢化率40%とされる柏市豊四季台団地を、高齢化対応モデル事業として「柏プロジェクト」を展開しています。柏市、東大研究機構、都市再生機構の三者による柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会を組織して取り組んでいるものです。

豊四季台団地は昭和39年にできたURの団地で、ベッドタウンとして人々が最初に移り住んだUR団地は老朽化、高齢化の最たるものといえます。日本では75歳以上人口が増え、85歳以上人口はさらに増え、独り暮らし世帯がどんどん増える傾向です。いっぺんに出来た住宅地には都市の高齢化も起きる典型が柏豊四季団地です。こうした背景の中で、柏市医師会が“立ち上がらなくてはいけない”と決意したことは特筆すべき事です。
 
外来受療率は75〜80歳がピークなので、超高齢社会では外来に来れなくなる人が増えます。団塊の世代が75歳を超えた直後を境に外来患者は当然のことながら減っていきます。今後は「午前外来、午後往診」という方向に転換しなければ患者は減少します。それを、患者が減り始める2025年とか2030年に考えても間に合いません。そこで、年をとっても住み慣れた地域で住み続けることができるまちづくり、地域包括ケアシステムをどう作るか考えなければなりません。

一つには、できる限り元気で活躍できるということでは、慣れ親しんだ生活スタイルである“働く”ということに着目して、「生きがい就労」の創成に取り組んでいます。週5日をワークシェアリングする。たとえば農業などは、収穫期など一定時期に仕事は集中しますがそれ以外は毎日でなくてもいい。あるいは保育所では保育士でなければならない仕事以外に、午睡の見守りや朝の子どもの預かりなど一定時間だけの仕事もある。このような仕事を地域にどんどん埋め込んでいって、お年寄りが生き生きと外に出て働く。しかもグループですからお友達もできる。それによって元気で明るいまちをつくるということです。

◆地域包括ケア、地域を在宅医療で万全に
もう1つは地域包括ケアの具現化ですが、柏の特徴としては“在宅医療を保障する”という覚悟です。人生90年の社会は、長生きさせていただく一方で、最後は多かれ少なかれ虚弱になって人のお世話になる期間になります。そこでは夫婦2人世帯ないしは独り暮らしが基本となるので、本格的な介護システムが必要となります。さらにう1つ重要なのが在宅医療です。多くの場合、医療上の不安から救急車で病院に行ってしまいます。ところが、高齢期の入院は寝たきりにつながりやすく、認知症が出て帰って来れないというのがかなり一般的なケースになっているのです。そこで生活の場に在宅医療が及べば、帰してもらえる。本人・家族が望めば在宅で亡くなることも可能になります。

在宅医療をいかに柏市で普及させるか、そのポイントは病院のかかりつけ医です。在宅医療専門の診療所も必要ですが原則は、かかりつけ医が自分の患者さんが来院できなくなったら往診するという診療スタイルに少しずつ転換しています。医師会が「かかりつけ医は在宅医療をする」という方針を掲げ、柏市との間で合意ができたことは意味が大きかった。市役所が事務局になって、医師会が呼びかけ人になって、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、ケアマネジャー、病院の退院時担当者、介護事業者といった多職種みんなが話し合う場をつくっていきました。この連携ワーキングという場を基本にして、連携のルールをつくるために在宅医療を含めたシステムを実際にモデル実践する。かかりつけ医だけでは過重負担となるので主治医−副主治医制を採り入れました。その結果、明らかになったことは、副主治医の出番が少ないことでした。そして、退院する際に病院側からの情報がシステムとして出てきていないことへの対応や、急変時の病院の受入態勢など、ルールを話し合ってつくってきました。

地域包括ケアのいわば出発点となるモデル施設づくりを始めたのが柏豊四季団地です。URの公募により介護棟が70戸、自立棟が35戸のサービス付き高齢者向け住宅を誘致しました。1階には24時間対応の看護・介護サービスがあり、ケアマネ事務所や地域のかかりつけ医、最後をバックアップする在宅医療専門診療所も誘致して、本人・家族が望めば看取りまでできる。さらに公募の条件には、周辺地域に対しても同様の24時間サービスを提供することが含まれます。通常のサ高住は内付けサービスですが、デリバリー型のサービスモデルを基本です。

◆医師会、行政の取り組みが要
そこで考えられたのが、医師会から推薦されたかかりつけの医師と、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、ケアマネ等の連携当事者がともに、かなり高度な事例についてグループワークをする方法です。各職種はベテランですが、一方で医師は在宅医療の経験がない人です。訪問看護師や薬剤師が在宅医療についてよくわかっているので医師はそれを知って大変安心し、病院で多様な症例の修練を受けている医師は、他職種と議論する中で「自分にできないわけがない」と、グンとモチベーションが上がっていきます。他職種は、かかりつけ医と本気で議論したことがなかったので親近感を覚える。もちろん各団体の推薦で受講していますので、各団体に情報がフィードバックされることで、どんどん職種間の関係が良くなって市内のチームビルディングが進みます。それを土台に今度は「顔の見える関係会議」で毎回150人くらいの多職種が集まって簡単なグループワークを行う。そのときのファシリテーターは最初に研修を受けた医師が引き受けます。これらを繰り返すと好循環となって一挙に変わり、事実、感動的ともいえる変化が起きました。

柏ではサ高住をベースに周辺地域に開かれたサービスモデルとして、地域包括ケアシステムへの展開が可能にしていこうとしているのです。行政が中心になって調整役を担わないと進んでいかないということでした。徐々に24時間サービスが市内に浸透し、最終的には地域全体が地域包括ケアのシステムにします。がん末期でも病院にいたら、朝から晩まで検査結果に一喜一憂して、病人として暮らしますが、同じ病状でも在宅にいれば生活者としていろんなことが味わえるわけです。隣を気にせず音楽も聴ける、ペットの頭をなでたり、鍋物も一緒に家族と食べられる、お酒を飲むのも可能。痛みは医師や訪問看護師がコントロールしてくれる。生活者として自宅で過ごす選択です。

これまで病院を中心に発展してきた医療ですが、病院医療と在宅医療が並立する事によって高齢化への医療対策が完成するのです。かかりつけ医といっても病院の専門外来を担当していた医師が開業しているのですから、病院システムそのものです。自宅で自分らしい生活をして、友達とも会い、好きなものを食べて、必要なときにはケアに来てもらいたいということであれば、そういう環境のあるところに移り住むことがされていきます。住まうエリアを高齢問題に対応できる病院を中心に変えるモデル事業が始まったのが柏です。地区医師会長が地域における病院長で、市の介護保険課長が事務長です。だから病院のコンサルティングだけでなく地域医療を、在宅医療を含めてシステム化することも視野に入れていく。そのノウハウは、柏で5年間以上かけて丁寧に構築してきていました。国の研究機関が関わり、行政・医師会も積極的に対応を考えていること、ましてそれが柏であるのは頼もしいですし、頼るばかりでなく市民も自ら考えて声を上げてほしいと言われました。我孫子市民であれば、当市の高齢化率も高いので、11月に向けて用意される市内のこの種の講演は、聞いておくべきですし、来月に当方で開催のミニサロンへもお誘いします。

明日のブログをご覧ください。


posted by Nina at 00:00| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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