食のトレイサビリティー「見える化」無添加と日本初のゼロミッション家電リサイクルに取り組む会社が千葉にあるのだとは知らなかった。
ミートボールで知られる大手食品メーカーのイシイ食品株式会社は、八千代工場の見学にこれも以前に消費者の会で参加して行ったことがあったが、船橋市が本社だった。そして、イシイ会長自らが待ち受けて、ご挨拶頂いたのには、和田さん(消費者の会の代表として、我孫子から全国へ発信、提言を続けている)の実績の重みゆえではないかなどと思いながら、会長の話や説明の女性の話を聞く。


この会社は佃煮、煮豆の製造から業を起こし、調理済み惣菜、特にレトルト食品のシリーズなどで人気がある。実は製造過程においてうま味調味料などの食品添加物を使わない無添加調理に取り組むとともに、原材料の徹底した履歴管理システムを構築してきたのは、知らないままではないか。例えば、「チキンハンバーグ」や「ミートボール」などの製品について、製品に印刷された品質保証番号と賞味期限を自社ウェブサイトの「OPEN ISHII」に入力すると、鶏肉やタマネギなど原材料の産地や加工地、加工日などの情報が表示される。アレルギー対応の乳・卵製品を除去しているなど、学校給食の分野、独居高齢化社会の対応も視野に生産管理している。
石井食品のトレーサ ビリティの仕組みは、日本屈指のレベルにある。
製品 パッケージに印字された「品質保証番号」をインター ネット経由で同社のサイトに入力すると、その製品に 使われている原料の産地や品種、遺伝子組み換えの 有無、アレルギー成分などについて詳しい情報を入手 することができるまでになっている。これらの厳しい食品工程の管理は、2010年7月12日、同社が製造した杏仁豆腐に使用している原材料である杏仁霜(台湾から商社を通じて輸入した)に添加物として表示義務のある香料が使用されていたことを把握せず、原材料欄に表示せずに販売を行った反省にもあった。
この事実の把握がされた時点で、同社自らの申し出により、消費者庁は改善指示を出した。JAS法違反にあたったのが、原材料の一部(杏仁霜)に表示義務のある香料が含まれていたが、それが把握できず【無添加調理】と表示して販売した事が不適切となっていた。同社の国内での製造過程では食品添加物は使用していなかったが、特に同社は【無添加調理当社での、製造過程においては食品添加物を使用しておりません】と併記してきてるように、その後、こうした海外での生産体制には土地、堆肥、無農薬除草の管理などまでも徹底して、情報公開する体制にしている。
加工食品メーカーは、自社の製品を購入した消費 者の問い合わせに応える社会的な義務を負っている。もち ろん興味本位の質問や企業秘密について回答する 必要はないが、安全にかかわる疑問にきちんと対応で きなければ企業としての信頼を失う。「食の安心・安 全」に対して世界一神経質〞と言われる日本市場 では、とりわけ慎重な対応が欠かせない。
こうした、国内での消費者の食の安全意識が一段と尖鋭化したのは、2000年6月に発生した雪印の食中毒事件、翌2001年9月に日本で初めてBSE感染した牛が千葉で報告された頃からだ。既に、病原性大腸菌O157の流行の頃より、食に対する衛生管理は強く企業に求められるようになっていたが、いよいよ官庁が厳しく対策に乗り出し、トレーサビリティ(履歴管理)という耳慣れない言葉が言われ、その後にも製品偽装、産地偽装、賞味期限偽装が連日のようにマスコミを賑わすようになった。
このような国内の状況下で、石井食品は雪印事件の二カ月前からトレーサビリティのシステムの運用をスタートしていた。当初は、同社が構築したシステムが、電話の問い合わせに口頭で回答する仕組みだったが、それでも一部の情報処理の専門家に高く評価され、注目が集まるようになった。それが、BSE騒動の勃発からわずか三カ月後には、ネット経由で情報公開を始め、全国的に脚光を浴びるようになった。
当時は社長だった石井健太郎氏は、農薬やアレルゲンの問題などもあったため、前々からトレーサビリティに取り組みたいと思っていたため、覚悟を決めたのだと話している。一昔前であれば、食品メーカーにとって、製品に使った原料の履歴を一般公開することなど、手間ばかり掛かって何のメリットにもつながらないものだった。逆に、開示情報に誤りがあれば嘘つき会社〞と非難されかねないリスクすらある。「無添加調理」へのこだわりで、自らの首をしめかねない行為だった。
しかも公開すべき情報を準備するのは難しい。元来、食品メーカーは自社製品について購入者に説明する義務があるため、どんな素材を使っているか紙媒体ではデーターを持っている。公開するに当たっては、素材情報をデータベース管理できる体制を構築していなければ出来ない話だった。どこもやっていない時期から、真摯に取り組んでいたのがイシイの強みになった。つまり、無添加調理〞へのこだわりが、トレーサビリティをいち早く実現する素地になったのだ。
同社によると無添加調理とは、「(石井食品の)製造 工程において食品添加物を使用しないで調理・加工す ること」を意味している。本当は完全な〞無添加をめざしているのだが、原材料の一 部にどうしても添加 物をゼロにできないものがあるのだという。たとえば 醤油を精製する際に欠かせない濾過材などに使う添加 物は、石井食品の努力だけでは無くしようがない。それでも同社は、原料、調理ともほとん ど添加物を使わない体制を整えてきた。
無添加の追求を決断した理由は主に二つあった。
まず添加物というのが不安定なことがある。過去に法律 で認められていた添加物が、ある時点から使用禁止になったケースは多い。もう一つ、非常に便利なもので ある添加物に対する疑問も感じていた。色素を使えば 製品を新鮮に見せることが可能だし、味を調整するのも容易だ。しかし、家庭では昔から添加物を使わずに料理を作ってきた。それが企業の工場で作るとなると、一転して大量の添加物を使いはじめる。コクを出すために添加物を使い、見た目が悪ければ合成着色料を加える。このような食品製造に疑問を持った石井社長は、添加物との決別という経営判断を下した。
このとき石井氏の頭には、70〜80年代に盛んに議論された食品の安全・衛生問題があった。大手メーカーと差別化していくうえでも、すべての消費者に理解してもらえるかたちで安全〞をアピールできれば、同社の特色につながる。そのためには口で言うだけでなく、作り方や材料まで含めて家庭〞という原点に戻ろうと考えた。
そう目標を定めた同社は、1995年から無添加路線へと本格的にカジを切ったのだった。素材次第で最終製品の味は変わってしまう。同じブランド名の製品の味が均一でないという事態は、加食メーカーとして許されない。必然的に素材の質や鮮度にこだわる必要が生じる。同社サイトにデータを入力すると製品情報が表示される
例:石井食品トップページ→「OPEN ISHII」→「品質保証番号検索」→「おべんとクン」→「テリヤキお弁当ミートボール」→品質保証番号87805777、賞味期限2005年12月27日と入力 石井食品トップページ
そうして、会長はこういう、「無添加によって社内のモラル が高まったことが最大の収穫」。実際、社員の笑顔を育て、ご自身も72歳とは見えない。頭もスタイルも誠にスマート、見習いたいと思うのだった。大鵬親方(船橋で治療を受けたさいに、ちゃんこのスープを商品化)もファンになったことはうなづけた。
このように、現代では、企業の行動はサイズの大小にかかわらず、企業が行おうと目指していることが社会に影響を与えるのだ。わけても、生活者の日々の活動にとって、特に食は重要だ。
生活者が自分で判断するためには、あるがままの情報が必要だ。そうはいっても、なかなか到達できないと諦めてきていた。しかし、時代は、多くの試練を与えつつも、人々が賢い選択をするようになっていくのをイシイ食品の姿をみせてもらって、少なからず信頼は相互理解して得られると思えた。
だから、正しく情報発信することを心掛ける会社が千葉にあったことは、嬉しかった。お互いに分かち合える、その会社の製品を食べることが楽しいと思える結果は意識の転換になり、なんだか日本に暮らすことの内なる自信になった。そして、千葉県人として、そうした地域に住めることを選べると東京にない楽しさが見つけられるのかもしれないと考え方の転換が出来た。
秋の最中、こうした発見を満喫できる千葉ならではをウオッチしていこうと思う。
つづく
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