民主党の岡田克也氏が、小泉首相当時に次のような国会質疑をしたのを思い出す人は何人いるだろうか。
「本日昼に始まった米国などによるイラク攻撃に関し、我々の見解を述べつつ、小泉総理に質問します。とうとう戦争が始まり、この戦争によって、多くの犠牲が生まれ、罪のない命が奪われることは確実です。何とかこの戦争を回避し、イラク問題の平和的な解決ができなかったのか、本当に残念に思い、同時に、私自身、無力感を感じています。私だけではなくて、この議場の皆さんの気持ちも同じだと思います。一日も早く、戦争が終わり、平和が訪れることを強く願いつつ、質問します」と切り出し、ズバッと本質をついた質問をした。
岡田氏は「小泉総理は、イラクの大量破壊兵器が確実に存在し、それが今後、確実にテロリストの手に渡るという確かな証拠をお持ちなのでしょうか」と指摘しています。
これに対して、小泉純一郎首相(自民党総裁)は、「大量破壊兵器の脅威というのは、決して人ごとではありません。武力行使なしには大量破壊兵器が廃棄され得ない状況のもとでは、私は、同盟国として今般のアメリカの行動を支持することが国家利益にかなう」と答弁しています。
おそらく世界的の政治家で大量破壊兵器が開戦当日から存在しない可能性を指摘し、その発言を議事録に残して、憚らずに言えた政治家は極めて少ないだろう。当てが外れて、間抜けな質問が残る可能性があれば不名誉だからだ。
そこをひるむことなく追及する姿勢は迫力がある。「次に、第二の点についてお聞きします。
大量破壊兵器がテロリストや独裁者の手に渡ることは、確かに大変な問題です。しかし、だからこそ、イラクに対して国連の査察団が査察を行ってきたのです。小泉総理は、イラクの大量破壊兵器が確実に存在し、それが今後、確実にテロリストの手に渡るという確かな証拠をお持ちなのでしょうか。査察団が証明できていないことを、いかなる根拠で言われているのでしょうか。また、仮に確たる根拠があったとしても、そのことが直ちに国連無視の武力行使を正当化するものではないはずです。・・・」
最後に、極めて重要なことを小泉総理に聞いていた。
「ブッシュ政権がイラクへの武力行使を正当化する最大の根拠は、国連決議ではありません。昨年九月に発表されたブッシュ・ドクトリンにあります。その中で、従来の自衛権の考え方を大きく変え、単独行動、先制攻撃を認めています。先日のブッシュ演説でも、米国は自国の安全を守るために武力行使の権限を持つ、行動しないことによるリスクの方がはるかに大きいことから我々は今行動するのだ、敵が先に攻撃した後に反撃するのは自己防衛ではなく自殺行為だとまで述べています。
このようなブッシュ大統領の、従来の自衛権では説明できない先制攻撃論を、小泉総理は認めるのですか、認めないのですか。答弁を求めます。
また、このような先制攻撃を認めることは、自衛権の行使と国連安保理の決議がある場合を除いては武力行使は認めないとする国連憲章の考えを大きく変え、今までの平和維持のための国際的な仕組みの根本的な見直しにつながります。唯一の超大国アメリカが国連を無視し、単独行動、先制攻撃を行うとすれば、国連の権威は失われ、世界は極めて不安定になります。米国といえども国家である以上、自国の国益を基準にして武力行使することになりかねません。
ブッシュ大統領は正義を掲げてみずからの戦争を正当化しようとしています・・・・」
「戦争は多くの罪なき命を奪います。そして、国連安保理の決議がないままの大義なき戦争が今後の世界の平和に及ぼす影響ははかり知れません。今日の事態を招いたことについて、政治家として、そして一人の人間として、この議場にいる我々一人一人が大いなる反省を求められていると思います。とりわけ、日本国総理大臣の職にある者として、小泉総理、あなたの責任はとてつもなく重い。しかし、私には、あなたにその認識があるとは到底思えない。」
小泉首相は「我が国は、イラク問題につきまして、アメリカと率直な対話を行ってまいりました。武力行使を支持するということについても、日本国民の多くの方々が反対していることも私は承知しております。しかし、大量破壊兵器の脅威というのは、決して人ごとではありません。武力行使なしには大量破壊兵器が廃棄され得ない状況のもとでは、私は、同盟国として今般のアメリカの行動を支持することが国家利益にかなうと考えまして、これからも、日米、緊密な連携のもとに国際協調を図っていくつもりでございます。」と答えたのだった。
まさか、米国が「大量破壊兵器」があることにしたら、白も黒にしてしまう、武力行使のお手伝いもする、既成事実化してしまえば、いくらでも解釈で済んでしまうと言うことが、始まりつつあるのではないか。
国民は、総理が何でもよくわかっているなどと思いこまずに、よくよく考えたほうがいい。
出典:
[国会会議録データベース]
第156回国会 本会議 第16号
平成十五年三月二十日(木曜日)
2014年07月15日
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