「奇跡のリンゴ」の映画は実話をもとにした感動の話題作、みごとに感動です。
『世界で初めて』を成功させて、現役でご活躍中の木村さんのあの雰囲気を演じる。出稼ぎまでして、貯金も底をつき、電気も止まり、無農薬リンゴを作るためにそこまで10年も苦労してできないなら、普通は途中でやめるでしょ。ところが妻も夫の姿を見て笑顔で頑張ろうと支える、奇跡の物語です。今まさに何かをあきらめかけている方が観て、この家族に比べたら、もう少し頑張れるような、そんな映画です。木村さんのくしゃくしゃに笑った顔、雰囲気はそう簡単に出せるものではないと思っていたら、阿部サダヲがうま味を出していました。
木村さんの妻役の菅野美穂も、津軽弁のアクセントを捉えて流石の女優だと思わせ、好感度が更に高まりました。
「オーガニックが盛んですが、農薬なしに農業に挑むことが、こんなに大変だとは思いませんでした。無農薬はヘルシーで楽しい事だと思っていたのです。とりわけ、りんごの果実を実らせるのがこのような困難を乗り越えての末のことだとは。木村さんは、誰もやろうと考えなかったやり方を想像して、創造しました。その艱難のはじまりは、農薬にアレルギーのある奥様をその苦しみから解放してあげたいという愛情だったというのが、なんと素直で優しいことでしょう。私は、木村さんの妻、美栄子の役をやらせて頂くのですが、この、素直で優しく、猪突猛進の木村さんを受け止め、あたたかく見つめるのがつとめだとおもっています。艱難辛苦汝を玉にす。りんごの実が丸くなったのは、ご夫婦の困難が実った結果に他なりません。私は両親が東北の岩手県出身ということもあり、何か縁を頂いたようにも感じています。津軽魂ではありませんが、東北魂で頑張りたいと思います。」との彼女のコメントはこの物語が奇跡を生む過程を語り、成功してもなお、みんなの為にまい進する夫婦を演じ切りました。実話の夫婦の絆も凄いなあと気持ちよく、爽やかになれるお話です。
http://www.kisekinoringo.com/index.html
木村さんの義理の父を演じる山崎努という俳優の存在感は圧巻でした。義理のお父さんが戦争でラバウルに行った時の話がとても印象的でした。
金策尽きて困っている婿に義理の父が、ラバウルの土を瓶に入れて持っているのです。
義理の父が、ラバウルに行った頃はもう終戦間近で、撤退しても帰還できないので、飢餓、マラリアでどんどん死んでいく。食べるものも何もなく、ヘビでもカエルでもトカゲでもなんでも食べたし、ジャングルの中に畑を作って自分で野菜を育てたと話すのです。
「化学肥料も農薬もなにもなくて、草ぼうぼうだったけども、ナスもできたし、サツマイモなんかこんなに大きくなった」 と言う。それでも、ラバウルの戦友たちは、戦争が終わったのにマラリア熱や食料がなくて、バタバタ死んでいった、つまり闘うどころか、餓死した方が多かった。その時の体験を婿に語りながら、「戦争だと思ってがんばれ」と貯金も全部だして、応援してくれたのでした。義理の父さんが持って見せたのは、ラバウルの畑の土だったのです。
調べてみれば、南方での戦いは、食料が手に入らないで命を落とし、その死者の多さに現地では日本兵のいたあたりを白骨街道と言うそうです。http://kyoto-np.jp/info/syakai/sennsoutoma/060822.html
そうしたやり取りの末に、覚悟を決めて、リンゴの土づくりと草を大切にする方針に切り替えて取り組み、死も覚悟しながらの極貧生活から、ようやく明るい兆しが見えてきて、りんごも実りはじめました。
リンゴの無農薬栽培は神の領域と言われたそうですが、それを人の手でも実現可能なこをと証明して見せた木村さんだったのです!
木村さんのりんごが実り始めて10年越しの挑戦も実り始めたころ、義理の父は亡くなります。
手には、木村さんのりんごをしっかりと握って、お医者さんが指を広げようとしても外れません。
こんなに硬い死後硬直は初めてだというお医者さん。
そのままに握らせておいてくださいという木村さんと奥さん。
木村さんの義理の父は、ラバウルの戦地で感じた土の力の偉大さと植物の生命力を、義理の息子が証明したのを見届けてから、旅立たれました。
さら後日談がありました。感動の輪は、故ジョン・レノンの妻である小野ヨーコを通じて、FACEBOOKでこの話を英語訳にして出版することが申し出られています。
偶然にNY行きの飛行機を待つ間に手にした本から、英語に訳してより多くの人に無農薬のリンゴが奇跡的に作れた経緯を知らせ、自然農法の可能性を追求しようとの展開が始まっているのでした。
確かにそうして作ったリンゴは、味わいが本当に濃い。リンゴの季節なのに台風で身が落ちてしまった農家もありますが、寒さがやってくる季節にいい映画を見て、心が温まりました。
2013年10月30日
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