現行の会計制度では、設備の減価償却や廃炉費用の積み立てが終わっていない原発を廃炉にすれば一度に巨額の損失処理を迫られ、財務が急激に悪化する。ただ、経済産業省は、廃炉費用の分割処理を認めるなど、電力会社の負担を軽減する新制度を近く導入する見通し。そのため年内にも廃炉の会計制度を変更する。運転終了後も10年間は廃炉引当金の積み立てを認め、設備も資産として減価償却できるようにする。費用は電気料金に転嫁でき、利用者が負担する仕組みだ。経産省幹部は「東電が適用第1号になるのではないか」と話す。
そうなると東電にとって、廃炉を決断しやすい環境が整う。
現行制度では電力会社は40年間かけて廃炉引当金を積み立て、電気料金で回収している。運転終了時に引当金が不足していれば、電気料金に上乗せできない損失として不足額を一括計上しなければならない。原子炉格納容器などの発電設備も減価償却期間が終わる前に破棄されるため、損失処理をする必要がある。
積立金不足は平成24年度末時点で5号機が105億円、6号機が162億円。また、設備の残存簿価は合わせて1564億円に上る。現時点で廃炉を決めれば、少なくとも1800億円超の損失が出るというのだ。たしかに、電力会社が原発を廃炉にするコストで倒産したら、社会的な影響は米国のサブプライムローンやリーマンショック程度では止まらないかもしれない。そこへ、国民の血税を投入することになる・・・。なにか、銀行を救済し、企業を救済するさいに、個人の中小零細企業は釈然としない想いに駆られることだろう。
一方、東電は既に、経営再建の道筋を示した「総合特別事業計画」で、12年度から21年度までの10年間で経費を3兆3650億円超圧縮する方針を盛り込んでいる。「コスト削減は既に限界」(東電関係者)との声も漏れ、一段の合理化の余地は限られそうだ。
広瀬社長は「汚染水問題は最大の経営課題。他のものを削り、必要な汚染水対策、廃炉対策に(資金が)回るようにしたい」と強調するものの、1兆円の確保は容易ではない。
茂木敏充経産相は19日、東電への追加的な財政支援について「現時点(すぐに)ではない」と明言し、「まずは(自ら)資金確保の努力をしてほしい」と求めた。
おんぶに抱っこで、育てられたエリート企業だったけれど、頭脳集団としての鉄面皮でなく、心ならずも苦渋の選択で原発作業員として働く人々、多くのかけがえのないものを失った地域の涙や汗をしっかり受け止めて誠意をもって対処してほしいものだ。
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