IOC委員が宿泊するブエノスアイレスのホテル内では、票固めのためロビー活動が続いてきた。長い招致レースはついに最終コーナーを回り、混戦のまま総会に突入する。
猪瀬都知事が国際オリンピック委員会(IOC)総会のためブエノスアイレスに乗り込んだ2日、都内の日本外国特派員協会で原子力規制委員会の田中俊一委員長が記者会見が行われた。そこで、汚染水の放射性物質の濃度を基準値以下に薄めて海へ放出するのもやむなしと田中氏の発言がでたことから、仏AFP通信は「福島の(汚染)放水避けられず」と速報。オーストラリアの全国紙は「海を核の捨て場に」の見出しを掲げ「環境保護論者や漁業関係者、近隣諸国の激しい怒りを買うだろう」と伝えた。
後手に回った汚染水事故が、五輪招致のみならず、日本政府の信用に影を落としている。開催地決定を前に470億円の国費投入を打ち出したことも「東京の集票目的」とみなされ、反応は極めて辛辣だ。
外国人記者の東電への不信感は、世界各地の報道に反映されている。独紙フランクフルター・アルゲマイネは「東電は外国人記者に『原発は制御下にあり危険は全くない』と説明したが、汚染水は太平洋に流れ込んでいた。こうしたウソと隠蔽工作で、東電が本当に事故から学んだのかと国民は疑念を深めている」と非難した。
マドリードに本社を置くスペイン通信社の東京支局の男性記者、アンドレス・ブラウン氏は、震災後に宮城でボランティアをしながら、福島の被災者を取材してきた。参院選直後に汚染水漏れが発表された背景に意図的なものを感じており「東電をウソつきとまでは呼ばないが、事実を矮小化させ発表しているのが分かる」と言う。
フランスRTL放送の記者、ジョエル・ルジャンドル氏は3・11以前から日本で取材している。フランスも原発大国だが、原発への賛否以前の問題として、東電の企業体質に嫌悪感を抱いていると語る。「情報を公開せず、疑惑が浮上するとまず全否定する。ほとぼりが冷めたころに事実を認めるので非常にずる賢い。日本人や日本メディアの忘れやすい気質を利用している」と語った。
東京の招致委員会が現地入り後、初の会見となった4日、経済力の強みを前面に打し、8月に行われた陸上世界選手権の公式スポンサー7社のうち4社が日本企業であることを強調しても、報道陣からの六つの質問中、4問は汚染水漏れに集中。竹田恒和理事長は「東京は福島から250キロ離れ、安全だ。皆さんが想像する危険はない」と懸念の否定に追われた。
しかし、この発言は、東京電力福島第1原発事故に苦しむ福島県民から「東京が安全ならいいのか」「差別的だ」と反発の声が出ている。「『東京は安全』と強調するのは『福島の現状はひどい』と認めるということ」。福島市から東京都練馬区に自主避難している主婦(37)は憤る。(共同)
7日に開かれる国際オリンピック委員会(IOC)総会で決まる。当落の結果は同日午後5時(日本時間8日午前5時)からIOCのロゲ会長によって発表される予定だ。
2013年09月07日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック