昨日は、消費者の会の定例会だった。食品の表示の問題点などについての話がでたが、豊富な食を楽しめるようになった一方で、その中身も食べ方も昔とはずいぶん様変わりしていると思う。
例えば、生鮮果実の1人1年当たりの購入量は、平成元年には34.4キログラムだったのが、平成23年には27.1キログラムまで減少したとの報告がある。世代別摂取量を見ると、とりわけ20代と30代で少なく、60代の半分程度しかない(平成21〜23年平均/農水省『果実をめぐる情勢』)。一方、果実加工品の購入数量は増加傾向にある。生の果物ではなく、ジュースや菓子類など、加工品での果物を摂る人が増えていることがわかる。 農水省の上記調査によると、生鮮果実を食べない理由として約半数が挙げているのが「手間の問題」だという。
果物屋を営む60代女性はこう話す。
「いまは、一人暮らしの方が増えていますよね。一人暮らしにリンゴ5玉やスイカ1個は多すぎる。大きな果物ほど、売れにくくなっています。それに、若いお母さんがリンゴや桃を、上手にむけない状況が増えています。だから、カットフルーツが売れるんですよ。コンビニにも増えていますが、うちの店頭でも、カットフルーツを出すようにしています。」
“個食”の増加は、複数人で食べるのに向く果物にとって、逆風となっているようだ。もう一つ、背景にあるのが、味覚の変化である。たとえばグレープフルーツの輸入量は、この10年で約半分に減少した。一方で、キウイフルーツは約30%、バナナは約16%、10年前と比べて輸入量が増えている(外務省貿易統計)。いずれも甘味を強めた品種を強化し、日本での存在感を高めてきた。CMを積極的に展開するゼスプリのゴールドキウイは、日本人の味覚に合わせて高い糖度を実現できるように開発された品種だ。「イチゴもどんどん甘くなっています。トマトもそう。酸っぱいものは避けられるようになっています」と、前出の女性は話している。
「味香り戦略研究所」の高橋貴洋さんは、「酸味は本来、腐敗のシグナルで、人間は酸っぱいものを避けようとする傾向があります。果物の重要な味わいとしては酸味だけでなく、糖(甘さ)と酸のバランスが大事です。つまりそのバランスの好みが変化しつつあるということです。世代によっても好みは異なるのですが、特に若い世代と、お年寄りは、甘味が強いバランスを好む傾向があります」
では、なぜ、甘さ志向が強まっているか。高橋さんは、「人間が、本能的に摂取したいと欲する味は、甘味、旨味、塩味など。いずれもエネルギーなど体の組成に必要なものです。一方で、酸味・苦味・渋味などは“毒のシグナル”とも言われ、元来、人が本能的に避ける味です。ですが、人間が成長し、食経験を重ねるなかで、それらの味のおいしさを学んでいく。そうやって味覚を広げていくわけです。ただ、最近は、子供の“個食”も増え、好きなものだけを食べがちになるなど、味の経験を積む機会が減りつつある。その結果、人が本来持っている甘味志向が強まっていると考えられます」と甘味と酸味の成り立ちの違いを指摘する。
甘さの氾濫には、核家族が進んで味覚の経験も不足がちになっているのが関係しているのかもしれない。日持ちするために色々な添加物の入った食品、その表示も厳格なものから緩和措置が進められていきそうだと、消費者の会のメンバーらは危惧しており、せめても勉強会を重ね、国に意見書を送って監視しようという。日々摂取する食品の変化によって、アレルギーも引き起こされて思わぬ死亡事故も起きてくるのだからこうした消費者の知恵と積極的な活動は重要だ。
2013年07月02日
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