杉山芙紗子(ふさこ)さんは、娘であるテニスの杉山愛さんのコーチで、現在も多くのジュニア選手を育成している。一流のアスリートたちの育ち方には共通点があると杉山さんは言う。それは、アスリートたちは小さいうちからスポーツを始めているので、スポーツが家族の共通の話題であり、重要なコミュニケーション手段となっていたこと。家庭には対話が常にあり、コミュニケーション力がそこで磨かれていったという。
小さな頃から、あるスポーツを突き詰めた一流のアスリートたちは、若くして自分なりの哲学や倫理観、そして価値感ができあがるようだ。つまり、独自の深い哲学があるからこそ、素晴らしいコメントを発することができる。
それは、負けた時でも客観的に自分を振り返り、きちんとコメントできる力がある点では共通しています。
ゴルフの石川遼選手のフィジカルトレーナーである仲田健さんは、ある日、石川選手との雑談の中に、「僕は今、ゴルフの調子がいいし結果もでているので、インタビューも多いし、みんなにちやほやされている。でも、いつまでも続くとは限らないし、いろいろな人に感謝することも忘れてはいけない。いつも謙虚でありたい。だから、もし自分が生意気な口を利いたり、そういう態度が出たら注意してほしい」と告げたという話があったそうです。
石川選手が頭角を現してきたのは、まだ彼が高校生の時でした。
その当時からすでに、彼の口からは大人も舌を巻く程の立派なコメントが常に出てきていました。
また、テニスの杉山愛選手はある時、「あなたにとってテニスとは何ですか?」と質問されて、こう答えていました。「テニスは私にとって、自分探し&自分磨きのツールです。どんなスポーツでも仕事でも、普段の生活が全てその中に出てしまうと思うのです。テニスはテクニックだけ磨いてもコート上でいいパフォーマンスはできないし、人々に感動や勇気を与えることもできません。一人の人間として、女性として、充実した生活を送っていることが、いいテニスプレーヤーになることの基本だと思います。強いプレーヤーになることも大事かもしれませんが、もっと大切なことは、チャレンジし続け、それを通して自分磨きをすることだと思います」
また、宮里藍選手も「賞金だけを追うビジネスとして割り切ったゴルフをしている選手には感動や夢を与えることはできません」と言い切っていました。
一つのことを徹底し極めた人の言葉には、普遍的な真理がある。年齢ではなく、仕事や生き様を通して、自分を磨き、独自の深い哲学を身につけていくのだろう。
参考;
『一流選手の親はどこが違うのか』新潮新書
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