揚水発電とは、夜間などの電力需要の少ない時間帯の余剰電力を利用して、下部貯水池から上部貯水池へ水を汲み上げておき、電力需要が大きくなる時間帯に上池ダムから下池へ水を導き落とすことで発電する水力発電方式のこと。揚水発電による発電量は、ロスが3割程度あると言われて発電そのものは効率は良くないので、ダムを用いる巨大蓄電池、蓄電所と言うべきものと位置付けられてきた。しかし、21世紀現在では世界的にスマートグリッドの一環として、巨大な本物の蓄電池で余剰電力を蓄える構想が進められており、実証実験も始まっている。
関西電力の昨夏の最大電力需要は、2784万kwで、供給電力 3010万kw、そこにもし揚水発電所を加えると、約3500万kw以上となり、電力消費割合は76%となり、コストを度外視するなら余裕がある。危険と隣り合わせてよりは、スマートにできる実際に可能な選択肢であるということだ。
電力が不足回避に原発再稼働というが、そのまえに電力会社の「埋蔵電力」揚水発電所で発電できる揚水発電の余剰が原発5基分に相当するという事実を知らないままでいるのは片手落ちだろう。関西電力でも設備容量506万キロワットに対し、供給力は449万キロワットと1割程度少ない。
で、関西電力の揚水発電を調べると、以下のようになる。
三尾 34,000 木曽川・牧尾ダム木曽ダム混1963年長野県関西電力
喜撰山 466,000 淀川・喜撰山ダム天ヶ瀬ダム純1970年京都府関西電力
奥多々良木 1,930,000 市川・黒川ダム・多々良木ダム 純1974年兵庫県関西電力
奥吉野 1,206,000 新宮川・瀬戸ダム・旭ダム 純1980年奈良県関西電力
大河内 1,280,000 市川・太田ダム・長谷ダム 純1992年兵庫県関西電力
合計4.916.000kw。
その他に電力会社が調達できる再生可能エネルギー容量は759万キロワット(原発約7基分)あったが、考慮しないでいいのだろうか。
こんな中で、日本原子力発電社員であり敦賀市議会の要職を兼務する議員が中心のほか、美浜、大飯、高浜の原発推進議員が、原発大臣である民主党細野の元へ陳情にいった。日本原子力発電社を後ろ盾に絶対推進の立場をとる河瀬一治市長が、そのトップに立ち行政の采配を奮って5期となる。敦賀市の河瀬一治市長をはじめ原発推進派議員は福井県議会に対し、日本原子力発電・敦賀原発1、2号機の再稼働。同3、4号機の本格着工。高速増殖炉「もんじゅ」の存続と研究継続≠ニいう内容の原発再稼働の要望」を出した。
福井県は「日本の原発銀座」と言われ、原子力発電機関の集中する。安全神話の崩れた後となって、福井県議会議長会はこれを否決した。建設後40年を超えた原発を不安のまま動かして良いのか、原発は巻き添えになるのはごく近傍の住民だけではないとの気持ちに動いたのだ。
敦賀の商用炉1号機は日本最古、本来、2009年12月に役割を終え廃炉になる予定であった。
3、4号機の設置が遅れたことから運転期間の延長が模索されてきた。日本原子力発電は、老朽化を踏まえた保守管理方針を策定した上で、運転の継続を経済産業省原子力安全・保安院に申請し、2009年8月3日に申請が認められたことから、2016年までの延長運転に備えた準備が進められていた。若狭に面した1、2号機の敷地内を浦底―柳ケ瀬山断層帯(浦底断層)が通っており、これら原発群(関西電力美浜1号が41年目、高浜1号37年目、大飯1号33年目、日本原電敦賀1号41年目など)琵琶湖まで30kmだ。もう一つの大飯原発は、ストレステストで"おおむね"稼働再開に問題なしとしたので、枝野氏は福井県知事に再稼働の要請をしている。もっとも原発事故時に重要な役割を果す「免震事務棟」の建設完了時期を平成27年度になるほか、新たな非常用発電機の設置についてはこれから「検討する」とい但し書きがつく。つまりこれから数年間、原発の安全が担保されないが、おおむね問題ないという訳だ。危険が目の前、隣り合わせて住んでいる人に納得できなくなったのだ。いったん事故が起きれば制御できないメルトダウン、数年先に安全対策が先延ばしのままおおむね評価で安心できるはずがない。事実、絶対安全のはずで、福島ではオフサイトセンターも機能しなかった。おおむね安全が、より安全なはずがない。結局は名ばかりの安全対策で、再稼働ではなんの教訓にも生かされない。
http://www.taro.org/2012/04/post-1188.php
環境エネルギー政策研究所(ISEP)の指摘によると、需要は猛暑想定のままで節電対応のピークよりも353万kWも多く、需給調整契約88万kWも活用しない。供給力予測には融通の増加も、太陽光活用も自家発の増加も入れていないが、融通については中部電力と中国電力にはあわせて800万kWの供給余力がある。需要削減と、発電設備の活用、隣接する中部電力および中国電力からの受電で、原発全停止でも余裕を見込むことができる。今、焦って過去最高の猛暑だった2010年夏の需要と全原発停止という想定で、需要ピーク時に9・2%の供給不足になると試算したシナリオに合わせて、再稼動の判断など必要無いのではないだろうか?
原発地域は補助金まみれであり、巨額公費を投入して原子力推進し、Co2を出さないクリーンエネルギーだ称して、トイレも自動で蓋が開くという芸当まで組み込んだオール電化になって電力消費を激増させた。家庭用太陽光発電などへの補助などへの補助は微々たるものできていた。送電線網の電力大手による独占は高い電力を買わされていたこと、東海、首都直下型などと予想される大地震の周期あるのに原発は活断層や津波の影響にあう可能性が高いことが分かってきた。原発ゼロで夏を乗り切ることができたら、多くの命を犠牲にした東日本大震災の教訓が多少とも生きることになる。太陽光、風力ばかりでなく、波力・潮力、流水・潮汐、温泉の地熱、バイオマス等、自然に恵まれた日本の環境を生かして、世界に再生可能エネルギーへの転換の選択を宣言し、世界にむけて脱原発へ向けてアピール出来る千載一遇の機会となった。打ち水、よしず、かき氷、行水、という昔のお母さんたちがささやかに行っていた生活文化を見直し、熱中症にも対処できていた時代に習おう。
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