90歳への寿命が延びても、出かけることも人前に出ることもできなければ、生きる楽しみもなくなるので、食事も簡単にするようなサイクルになりました。それが、サイコペディアへの入り口に繋がりやすい!?そこで、そうなる前に三度の食事で、いろいろな食品をまんべんなく食べることを心がけ、「食い改め」ました。そうしてようやく、体調を取り戻していったのでした。
食生活改善策のなかでも効果的だったのが「トモ(友)食い作戦」です。
気の合う友に会い、一緒に食べることは楽しく、食への意欲が出ました。楽しい気持ちで食べることは、体にも心にもいい影響を与えてくれます。
少し前のものになりますが、「食育推進施策(食育白書)」[注3]に、食事をともにする頻度が高い人は孤食の多い人に比べ、食事のバランスがよく、食生活が良好な傾向との結果も出ています。
私は医師の娘と同居していますが、彼女とは生活時間帯が違うので、孤食になりがちです。そこで、週に2回、シルバー人材センターに私の食事作りをお願いしています。そして、その日に合わせて、私の助手など2〜3人を誘って、一緒に食事をするようにしました。助手の食事は自分たちで調達します。
何人かで食卓を囲むと自然と食が進み、自ずと栄養もしっかり摂れるというものです。
もし、出かける元気があれば、友だちと外食を楽しむのもいいし、自宅に招いて、持ち寄りでも出前を取ってもいいので、ランチ会を開くのもいいと思います。
「同じ釜の飯を食う」ことで孤食を防ぎ、会話を通して人とのつながりができれば、体調の悪さも吹き飛ぶでしょう。
健康的な食事を取り戻し、生きるエネルギーに
昭和30年代に結婚して数年間、夫の転勤先の社宅で私が専業主婦をしていた頃のこと。
あるお宅で母親が娘に、「あなたは女だからがまんして、お兄さんと弟に(食べ物を)あげましょうね」というのを聞き、まだ家父長的な発想をする人がいるのかと、ショックを受けました。
主婦と呼ばれる女性は、高齢になるまで「食生活の中心」にいたようにみえますが、それは食事の提供者としての「中心」でした。
家族の都合によって自分の食事がおろそかになったり、お昼ご飯は残りものですませるのが習慣になっていたりと、案外、主婦自身の「食」はいい加減だったのだと思います。
健康的な食生活を取り戻すには、やはり「トモ食い作戦」で、ご飯友だちを増やすのが有効です。家でご飯を食べられない子どものために「子ども食堂」があるように、1人暮らしの高齢者のためにも、もっと気楽な「じじばばカフェ」があればいいなと思っています。
1つの小学校区に一か所ずつくらい、高齢者が集まって、食べたり話したりできるような場所を作れば、そこが人との出会いの場にもなります。もしかしたら、散歩や趣味の仲間もできて、孤独感が薄れるかもしれません。
食をともにする機会が増えることは、人とのつながり、社会とのつながりを生み出し、それが生きるエネルギーになることは、間違いありません。