経済産業省は先月、次世代の太陽電池として注目される「ペロブスカイト太陽電池」について、2040年には20ギガワットを賄うという普及目標を発表しました。一般的に1ギガワットは原子力発電所1基分に換算されるので、原発20基分相当となります。
今、「薄くて、軽くて、曲げやすい」という特徴を持ったペロブスカイト太陽電池は、生活の身近なものに実装されて期待がされます。国は補助金などで導入を支援し、再生可能エネルギーの拡大を目指す方針です。
ペロブスカイト太陽電池は桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が2009年に発表した日本発の技術です。
電気を発生する材料のペロブスカイト薄膜を印刷物のインクのように“塗って乾かす”方法で作られます。フィルム状で柔軟性に優れるペロブスカイト太陽電池は、広く普及しているシリコン太陽電池からの置き換えが期待されています。
ペロブスカイト太陽電池の種類は、フィルム型、ガラス型、タンデム型(ガラス)に大別されます。フィルム型は、軽量で柔軟な特徴を活かして、これまで設置が難しかった建物壁面などへの導入が可能です。日本はこのフィルム型で技術的に世界をリードしています。
ガラス型は、ペロブスカイトをガラスとガラスの内側に塗布して作られる技術によって作られます。高層ビルや住宅の窓ガラスなどに“発電するガラス建材”として代替設置が期待され、設置環境に合わせてさまざまなサイズや透過性などに対応できるのが利点です。
タンデム型(ガラス)は、現在一般的に普及しているシリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池を組み合わせたものです。研究開発段階にあり、世界的には巨大な市場が見込まれると考えられています。
国際的に存在感を増しているのが中国で、スタートアップ企業が複数設立するなど国際競争も激化してきています。日本は2000年頃は、シリコン製の太陽光パネルにおいて、世界シェアの50%に達していました。その後中国などの海外勢に押され、シェアは直近1%未満となっています。現在、日本国内では、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた開発を進めており、来年度からは一部の企業で事業化が開始される予定です。
ところで、ペロブスカイト太陽電池の主な原料であるヨウ素は、日本が南米チリに次いで世界第2位の生産国だということをご存知です。 なんとシェア約30%を誇ります。ヨウ素は日本の国土に豊富に含まれる地下水から取り出されるため、原材料を安定した価格で調達できるという大きなメリットもあるのです。資源に乏しい日本では安定供給性のある電力エネルギーをどう賄うか大きな課題ですが、そういう意味でもペロブスカイト太陽電池が大きく期待されています。
ペロブスカイト太陽電池は、電気自動車の屋根などに搭載する開発も進んでいます。トヨタ自動車はエネコートテクノロジーズと2023年から、車載用ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた共同開発をスタートしています。
2030年代後半には、その太陽光パネルの大量廃棄がピークを迎えると想定されています。そこで既存のパネルを廃棄せずに架台として再利用して、その上にペロブスカイト太陽電池を設置する取り組みもあるのです。
あと4ヶ月ほどに迫った大阪・関西万博そこでそこで、ペロブスカイト太陽電池をさまざまな形で披露しようと、国内メーカーが準備を進めています。パナソニックグループのパビリオンでは、ガラス建材と一体化したペロブスカイト太陽電池「発電するガラス」を使った吊りオブジェのアートを見ることができそうです。設置場所の自由度が高い特性を活かして、都市の景観に溶け込むデザインの自由度の高さを体感できる展示内容になる予定です。
出典:パナソニックグループ プレスリリース