18日、中国南部・広東省深圳市で深圳日本人学校近くで、同校に通う男児(10)が中国人の男性(44)に刺されて19日、死亡した。中国当局は今回の事件について動機や背景などは一切説明していないため、在留邦人社会の不安解消にはつながっていない。
蘇州では6月24日、スクールバスを待っていた日本人の母子が、50代の男から刃物で切り付けられてけがを負った。これまでにも、アステラス製薬の日本人男性社員がスパイ行為に関わったとして中国当局に拘束・起訴された事件などもあり、米中関係の悪化などを受けて社内外から中国事業への見直し圧力を受ける企業も増えている。
外務省の海外在留邦人数調査統計によると、中国の在留邦人は10万1786人おり、2万人近い未成年も在留している(令和5年10月現在)。今回の事件を受け、外務省は19日、中国在留邦人や渡航者に対して注意を呼びかけたが、中国本土9都市に12校の日本人学校には約3700人の児童・生徒が在籍しており、地域によってはスクールバス自体が不足。今回の事件のように徒歩で通学する児童・生徒もおり、全員の安全確保に向けた対策としては不十分だった。
中国に進出する日本企業で作る中国日本商会(本間哲朗会長=パナソニックホールディングス副社長)も今年7月、中国政府に邦人の安全確保を要望していた。両国の国民感情の悪化も懸念される中、日本人学校に通う子供の安全確保を徹底するため、スクールバスに1台当たり警備員1人を配置する計画を立て、子供らの警備強化などを図ろうとしていた矢先だった。
事件を受け、外務省は令和7年度予算案の概算要求で、初めて中国国内の日本人学校でのスクールバスの警備費として、約3億5000万円を計上。
今回の深圳での事件が発生すると、急きょ今年度予算から約4300万円を拠出してスクールバスの乗車時や学校周辺の警備強化を図る方針を示した。
産経新聞【9/19】