人類が初めて迎える前例のない長寿で、その最先端が日本ですから、体が効かなくなるまでの長生きはしたくないといっても、現実に「いま80歳を越えてもお元気ですよね。あと50年以上の長生きはイヤかもしれないけど、現実にそれは自分の身に起きると覚悟してほしい。僕たち医療サイドがどうこうするのではなく、生活レベルが向上した結果、現時点ですでにみんな長生きして、認知症や痛みなどに苦しんでる場合もある。では、あなたはもっと長くなる未来に備えてどうするんですか? そういう時代なんです」と近畿大学アンチエイジングセンター 教授の山田秀和先生は言います。
日本抗加齢医学会 理事長を務める山田先生は、「予想以上に長生きするよ」ということすら誰が教えてくれるわけでもなく、いざというときまで準備もできないのが現状です。そのため、科学的にわかっていることをしっかりと伝え、できる限りよい選択と準備のため提言することが医者の役割だと言います
「健康面だけではなくハピネス、ウェルビーイングまでを含んで、金銭のことも考えたうえでの健康長寿。僕たちは『エンドポイント』という言い方をしますが、自分の人生をここまでにしようと定める、その終止符はご夫婦なり家族なり、関わる人すべての生きざままでを含めた話になるのです」
もはや墓じまい、家の維持、そこには年金制度、医学と健康の話の枠にとどまらず、どうしても、膨大な行動変容が必要になるのです。さまざまな社会的事象が関与してくると山田先生。
「百寿という事象の前では生活に関連するすべてが『健康』というキーワードに関与してきます。墓じまいをどうするのという話の向こうには『膝が痛くて階段が上れない叔母がかわいそうで』から一歩進んで、『いまはエクソソームを注射するんだよ』と対抗知識を深めながら進んでいくこともできる。物価も金利も上がる、だから現金で持たずに資産運用をしないとねというのとまったく同じ話なんです」
若返りとは「老化速度を遅くする」ことでも実現できる。それは、できそうですよね?
これらを受け入れるとしたら、もう一つ大切なのがどう後ろ側へエンドポイントを動かすか。それが「老化速度を遅くする」ということなのだと続けます。
「認知症、脳卒中、がん、僕らが恐れる病のほとんどは『老化疾患』です。30歳以前の病気には遺伝的な要素もありますが、それ以降はそれまでの蓄積が関係します。
『エピジェネティクス』は『生物学的年齢』という言葉に置き換えることもできます。遺伝子が同じ一卵性双生児であっても、40、50、60歳と年を重ねると環境因子の影響を受けて老化速度に差が出てくるのです」例えばですが、紫外線、運動不足、暴飲暴食、睡眠時間が少ない、大きなストレスがかかった、などの人は老けて見え、また老けて見える人は血液検査の結果でも年を取った数値が出るのだそう。双子であっても同じ結果になるため、後天的な因子で加齢が起きてるとわかるのだそうです。
それでも、「2021年ごろ、ネズミの研究で、加齢を止めるだけでなく、実際に若返りを起こすことも可能だということがわかってきました。ヒトに応用するにはまだ10年から30年かかりますが、少なくとも運動・栄養・精神的な影響までは判明しているので、老化を遅くすることはできそうです」
「60歳からスタート、20年後の80歳のとき、生物学的年齢が70歳ならば老化速度が半分に抑えられ、10歳若くなっていると解釈できます。この競争が始まったため、科学者・医学者が一斉に『生物学的年齢で世界を捉える考え方もありだな』とスタンダードを変えたのがこの3年です。生まれてから何日経過したかの『暦年齢』を見ずにその人の年齢を算出しましょうというのが『エピジェネティック・クロック』、つまり『生物学的年齢』の考え方。これには『DNAのメチル化』というキーワードが深く関与しています」とのことです。
参照HP https://news.yahoo.co.jp/articles/52f8a3dda6204bbdabe209e00fd6dbd170e00d19