サンスクリット語は、現在では母語話者数は少ないものの、ヒンズー語の成立に関わった言語です。お釈迦様が生まれたネパールで使われる表記文字がサンスクリットであり、同様にインドの22の公用語のひとつとして認知されています。
現在のネパールはヒンズー教が主で、仏教徒もおり、インドはヒンズー教以外に、イスラム教、シーク教、ジャイナ教や仏教の礼拝用言語としてサンスクリット文字が使用されています。
日本では、故人やご先祖様を供養するために卒塔婆(そとば)にサンスクリット(梵字)が用いられています。墓石の後ろ側に立てられている1〜2mほどの細長い板のことです。卒塔婆は、もともと仏塔という意味のサンスクリット語でストゥーパが語源とされています。
仏塔を意味するストゥーバは、お釈迦様の分骨を納めた塔のことで、日本の五重塔の由来とされていています。五重塔を基にして、その後、五輪塔が作られて、五輪塔を簡略化したものが卒塔婆といわれています。また、五輪塔の五輪は、仏教での宇宙を構成する5つの要素(空、風、火、水、地)を表していて、仏教では人間もこの5つの要素によって生かされていると教えられています。
★卒塔婆の目的
仏教では、卒塔婆を立てることは善行とされていて、生きている人の善行は、故人やご先祖様の善行にもなり、故人やご先祖様の冥福につながると考えられています。卒塔婆を立てる目的は、故人やご先祖様の冥福につながる追善供養を行うということになります。
追善供養は生きている人が亡くなった人に対して行う供養のことで、命日に法事や法要を行うこと、お盆やお彼岸に卒塔婆を立ててお墓参りをすることは、故人やご先祖様の冥福を祈る追善供養になります。
では、卒塔婆に書かれている梵語について、大まかには6つの項目について書かれています。
・戒名
戒名は別名、法名とも呼ばれ、亡くなった故人が仏の弟子になったという意味で、僧侶に授けていただく名前になります。
・没年月日
没年月日は、いわゆる命日のことで、故人が亡くなった日のことです。
・経文
経文は、仏教の教えを記した書物である経典に書かれている文章やお経のことになります。
・梵字
梵字(ぼんじ)は、インドから経典が中国に渡り、6世紀ごろ日本に仏教が伝来。のちは、神秘化され魔除けとして使われていた文字になります。
・施主名
卒塔婆の作成を依頼した人の名前になります。
・供養年月日
お墓に卒塔婆を立てた年月日になります。
これら6つの項目のうち、戒名、没年月日、経文、施主名、供養年月日の5項目は卒塔婆の表面に書かれ、梵字は卒塔婆の裏面に書かれることが多いようです。木製の卒塔婆に文字を書く時には、墨を使っての手書きが一般的でしたが、最近では、墨を使った手書きに代わり、プリント印刷をすることが増えてきているようです。