厚労省の「2019(令和元)年財政検証結果レポート」によると、現役時代の所得の何割を年金でカバーできるかを所得代替率としてみると、2019年時点では61.7%。ところが、約30年後の2052年(令和34年)には、それが36(現状の61.7%の6割弱)〜52%(同8割程度)まで減少するとの推定になっています。つまり、将来の年金は、今の高齢者が受け取っている水準の6〜8割に減っているのです。それとは裏腹に、日本人の寿命は延び続けます。
内閣府によると、1950年の日本人女性の平均寿命は62歳、男性は58歳でした。それが、2021年には88歳、82歳になりました。内閣府の予測では、2040年には90歳、84歳になります。2050年には全5261万世帯の44.3%に当たる2330万世帯が1人暮らしとなり、うち65歳以上の高齢者が半数近くを占めると想定されます。
この30年間で、日本人の平均寿命は6年も延び、65歳を迎えた女性の2人に1人、男性の場合は4人に1人が90歳まで生きることが予想されています。高齢世帯の過半数が、少ない収入でやりくりしているのが現実です。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、高齢者世帯の平均所得金額は332.9万円で、高齢者世帯と母子世帯を除いたその他の世帯(689.5万円)の約半分なのです。60〜80歳を豊かで自由に過ごすために、どれくらいの支出がありそうなのか、どれほど稼げばいいのかを早めに把握しておくことが重要になるだろう。
高齢期の多くが不安に駆られる一つは保健医療費ですが、実際のところ、それほどの額ではありません。
実際に65歳から74歳において家計簿をみると、保健医療に関する支出は平均月1.7万円となっています。(『ほんとうの定年後』より)
住宅費に医療費、さらには教育費(60代後半からはほぼゼロ)などから解放された定年後には、生活費がぐっと下がっています。
もっとも、内閣府の「2019年度 全国家計構造調査」によれば、65歳以上の単身者の3割は貧困状態にあります。つまり、一人暮らしの高齢者が3人集まると、そのうち1人は貧困に苦しんでいるという状況になります。
総務省の家計調査報告書を過去10年にわたって追っていくと、そうした高齢世帯の赤字額の平均値は、夫婦世帯で月5万円、単身世帯で月3.5万円です(実収入から支出を引いた不足分の2010〜2019年における平均値。つまり、夫婦世帯なら5万円×12カ月で年間60万円、単身世帯なら3.5万円×12カ月で年間42万円ものお金が不足することになります。
老後生活を仮に25年間とすると、年金をもらっていても不足する金額を概算すると、夫婦で1500万円(60万円×25年)、単身でも1050万円(42万円×25年)になります。年金をもらっても、それを補うだけのお金がなければ、生活資金のほうが底をついてしまうのです。
これは、現在の高齢世帯の推定数字です。そのため、将来の高齢世帯ではもっと割合が高くなる可能性が高いと思われます。彼らが将来もらえる年金は今より少ない可能性が極めて高いからです。
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