◆PFASでの水道水汚染
EPAアメリカ環境保護庁がアメリカの水道水の45%に、基準値を超える危険な化学物質PFAS(ピーファス)が含まれていることがわかったと発表し、衝撃を与えています。有機フッ素化合物PFASは環境中で分解されず残り続けるため、「フォーエバー・ケミカル=永遠の化学物質」として問題になっています。しかも、体内にも蓄積し、肝臓や免疫系にダメージを与え、がんのリスクを増大させることがわかっています。
PFASは熱や水、油や汚れに強く、非常に高い強度があるため、厄介なことに、あらゆる日用品に含まれています。防水の服、食品包装、化粧品やシャンプー、おもちゃなど、私たちの暮らしは、PFAS抜きでは成り立たないと言っても過言ではありません。
EPAは今回の発表と同時に、水道水中のPFASをほぼゼロに削減する規制を定めました。しかしそのためには、全米の水道システムで、炭素ろ過や逆浸透膜浄水システムを設置する必要があります。これがどのくらい速やかに実行されるのか、疑問の声も上がっています。
◆米国は鉛水道管の老朽化で汚染も
アメリカの水道は、インフラの老朽化や化学物質の混入により、常に水質汚染が大きな問題になってきました。ニューヨーク州北部のバッファローでは、古い水道管から鉛が溶け出し、多くの子供たちの血液中の鉛濃度が上昇しています。こうした古い鉛管は全米に広がり、1億8千万人が鉛汚染にさらされているという数字さえあります。
PFASに関しても、これまで自治体レベルで問題視されていたのが、今回ようやく国が規制に乗り出しました。ではなぜこれまで放置されて来たのか? 環境活動家は「利益を優先してきた化学業界に責任がある」と指摘します。
その化学業界が今後この規制に対して、法的な異議申し立てを行い、施行が遅れる可能性も懸念されています。
もしトランプ前大統領が11月に大統領選に勝利した場合、就任後にこの規制を弱めるか撤廃することも考えられ、アメリカの水道水からPFASが完全に除去されるまでには、まだまだいくつものハードルが予想されます。
出典 日刊ゲンダイ(4/2 シェリーめぐみ)
欧州においては、REACH規制のもと、PFOAとその塩およびPFOA関連物質はSVHC高懸念化学物質の候補物質として登録されていましたが、2020年6月にRegulation (EU) 2019/1021 POPs規則のAnnex I(禁止物質リスト)に移行し、ひきつづき規制対象となっています。
日本においては、2021年4月21日に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が公布され、「PFOA又はその塩」が、第一種特定化学物質に指定されました(2021年10月22日より施行)。
米国での影響は、米軍基地にも同様におきていた。沖縄県では米軍嘉手納基地周辺の河川や浄水場などで検出されていたが、日米地位協定の影響で、基地内の調査には入れない、そのため健康被害への不安が根強くありました。同様に横須賀基地の影響は東京多摩地区に不安材料をもたらていました。ようやく、2022年度になって環境省が国内の河川や地下水への含有量を調べ、その結果、沖縄、東京、大阪、そして千葉など16都府県の111地点で国の暫定目標値を超えていたわかりました。
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