これまでの厚労省のいう「健康寿命」は、あいまいな主観的なものでした。和田秀樹が言うには、厚労省の「健康寿命」とは大きな開きがあり、ある程度自分のことは自分でできる「自立」基準を、要介護2未満とすると、男性80.0歳、女性84.3歳までは自律可能で、これを「65歳平均自立期間」とみて蓄積してきた国民健康保険中央会のデータがあり、こちらが実態に近い「健康寿命」ではないかと考えています。
令和3年の調査結果によると、65歳男性の平均余命は16.5年の81.5歳。そのうち、自立している期間が80.0歳までとなり、自立できなくなった期間が1.5年でした。65歳女性では、平均余命は22.6年の87.6歳、自立している期間が84.3歳まで、自立できなくなった期間は3.3年でした。
また、日本老年学会・日本老年医学会では、60代後半〜70代前半の多くが心身の健康を維持して社会活動も活発なことから、「75歳以上を新たに高齢者・高齢期と定義すべきだ」との提言を2017年に発表しています。
いずれにせよ、「高齢期」や「老後」と呼ばれる時期は長い。日本全体の平均寿命はおよそ85歳ですから、定年退職後を「老後」とするなら、60歳で定年を迎えた人にとっての「老後」は四半世紀も続くことになります。
樋口恵子 年をとって最後は寝たきりになるにしても、それが長い時間続くと思うと、自身もつらいので、家族にも迷惑をかけたくないし、そうした時機が何分の一かに短くなれば気持ちはずいぶん軽くなります。厚労省が「健康寿命」を用いて、長い長い介護期間が待っているから覚悟せよ、とおどかして不安にさせている。ところが、短期間の寝たきりで亡くなってしまう場合、どんなに数が多くても統計には反映されにくい。
和田秀樹 実際は、寝たきりになってしまうと、残念なことにたいていの場合、そんなに長く生きられず、余命は確か1年に満たないぐらいのはずですよ。もちろん、寝たきりにならないようにすることがいちばん大事なのですが、寝たきりになっても、みんながみんな長期間、というわけではないことは知っておいてほしいですね。
参照 『対談:うまく老いる』