内閣府が15日発表した昨年のGDP(名目国内総生産)速報値によると、ドル換算の年間名目GDPが4兆2106億ドルとなり、米国、中国に次いでドイツの4兆4561億ドルで、日本はそれを下回って世界4位になったことが明らかになりました。
ところが独キール世界経済研究所の経済予測部門のシュテファン・クーツ部長は「ドイツでこの逆転はほとんど話題になっていません。(比較される)名目GDPはドル建てです。日本の名目GDPは日本銀行の金融緩和によって円安になり、為替レートに左右されている面が大きいです。ドイツが喜べるような話ではない」と言います。10年代半ばに欧州で「一人勝ち」と呼ばれたドイツも、今はロシアによるウクライナ侵攻などを受け「多くの大きな問題を抱えている独GDP世界3位については高いインフレ率に押し上げられた結果で、重要だとは受け止めていません。」と話します。
過去20年をみると、ドイツは物価の影響を除いた実質GDPの成長率で日本を上回ってきました。「ドイツの物価の動きを示す『GDPデフレーター』は22年は5.3%で、23年は6%以上と見込まれます。これはインフレの高止まりを意味します。物価が2年以上にわたってコントロールされていないことを示すものです。GDPで3位になったところで、この国の問題が解決されたということでは一切なく、逆にこの国の問題を示しているとも言えます」。クーツ部長はインフレの高止まりをドイツの問題としていますが、日本の金融アナリストの中にはそれに加え、メルケル政権時代に行った「輸出の中国依存とエネルギーのロシア依存を高め過ぎた」問題も大きいとの指摘があります。また、日独に共通する自動車産業の成熟でも、ハイブリッド技術をもたず、米国市場に食い込めていないドイツの方が問題はより大きいとの指摘です。
日本のメディアはネガティブ材料を報道する傾向にあり、それは良く言えば日本人の謙虚、自重的な態度、やや皮肉っぽく言えば自己肯定より自己否定が好きな国民性に根差しているのでしょうが、もう少し、前向きな動向にも目を向けるのも大事だとそのアナリストは指摘しています。
それは、為替が1ドル=150円まで来たことで、日本の物価、賃金、特にドル換算の物価、賃金が安くなり、多くの外国人が日本に旅行に来る。また、日本に生産拠点を作る動きが盛んになっている点です。特に、経済安全保障が重視される中、台湾のTSMC(台湾セミコンダクター)が熊本に1工場1兆円もする半導体工場を2工場、場合によっては3工場建設する計画があり、かつ、ラピダス社が最先端の半導体工場を北海道・千歳に作る動きが出て、半導体産業復活への期待が出てきているのは大きいと言います。
現況で、日経平均株価がバブル期のピークである38,915円の高値に急接近してきている中で、東京エレクトロンを筆頭に半導体関連株が先導役になっているのを見ると期待しても良いのかと思うのです。新NISAもですが、株式売買も推奨されるような時代になって、皆さまは現状をどうご覧になりますか。
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