【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁は8日、11月の大統領選に向けた共和党候補を選ぶ西部コロラド州の予備選を巡り、トランプ前大統領の参加の是非を問う口頭弁論を開いた。保守派判事だけでなくリベラル派判事からも、前大統領を予備選から排除することに消極的な発言が相次いだ。
コロラド州は多くの州の予備選が集中する3月5日のスーパーチューズデーに予備選を開く。最高裁は同日までに判断を出すとの予想もある。米メディアは、最高裁が前大統領の参加を認める可能性が高まったとの見方を報じている。
口頭弁論は、コロラド州の最高裁が2023年12月、前大統領の同州予備選への参加を認めないとした判決について開いた。前大統領が連邦最高裁に上訴していた。連邦最高裁の判断は他州の予備選にも影響する可能性がある。
米連邦最高裁はトランプ前大統領の予備選参加資格を巡り口頭弁論を開いた
焦点となったのは、コロラド州の最高裁が根拠とした憲法修正14条3項の規定だ。同条項は、憲法を擁護すると宣誓した議員や公務員が米国に対する反乱や反逆に関わった場合、公職に再び就くことを禁じる。
コロラド州最高裁は21年1月の連邦議会占拠事件を「反乱」と認定し、前大統領が関与したと結論づけた。
口頭弁論では大半の判事からコロラド州側の弁護士に厳しい質問が目立った。
リベラル派のケーガン判事は「誰が大統領になるかを、なぜ一つの州が決めるべきなのかという疑問に答えなくてはならない」と問い、州が全米に影響する大統領選の問題を決めるべきではないとの考えを示した。
リベラル派のジャクソン判事は、南北戦争直後に成立した憲法修正14条3項は敗北した南軍側を支持した者の公職復帰を防ぐのが目的で、大統領を想定したものではなかったとの見解を表明。同条項を大統領選の参加資格剝奪の根拠とすることに懐疑的な姿勢を示した。
保守派のロバーツ長官は、「反乱」の定義や基準は州によって異なる可能性があると指摘。コロラド州の主張を認めれば多くの州が党派によって候補を選挙から除外する事態が予想され「非常に難しい結果となる」と警告した。
保守派のカバノー判事は、前大統領を予備選から除外すれば「かなりの程度で有権者の投票権を奪う影響がある」と民主主義を損ないかねないとの懸念を示した。
前大統領は口頭弁論後、南部フロリダ州で記者団に対し、自身の弁護団の主張が判事に好意的に受け止められたとの印象を語り「投票したい数百万人もの人がおり、彼らは私に投票したいと思っている」と主張した。
前大統領の大統領選参加資格を巡っては州によって判断が分かれており、連邦最高裁の早急な判断を求める声が強まっている。
東部メーン州も同州の予備選から前大統領を排除する決定を出し、前大統領側が州を提訴した。中西部ミシガン州やミネソタ州などは参加を認める判決を出した。司法や政策に関するサイト「ローフェア」によると7日時点で19州で係争中となっている。
11月の大統領選で返り咲きを目指す前大統領は、1月の中西部アイオワ州党員集会と東部ニューハンプシャー州予備選で連勝した。対立候補が次々と撤退しヘイリー元国連大使だけとなっている。
連邦最高裁は2000年大統領選で勝敗を決する判断を下した。現在の連邦最高裁は前大統領が保守派判事3人を指名したことで保守派6人、リベラル派3人と保守に大きく傾斜している。