22日に「ミス日本」に椎野カロリーナさん(26)を選出したことで、文化的アイデンティティーを巡る議論が巻き起こった。 ウクライナ生まれのモデルが、日本の美を象徴する時代になった。日本国籍を持つ椎野さんは5歳の時から名古屋で暮らしており、流ちょうな日本語を話す。東京でCNNの取材に応じ、日本人として認められたかったと語った。なおミス日本の26歳での受賞は過去最年長であるとともに、外国から帰化した日本国籍者がミス日本を受賞した史上初の例となった。
主催者のウェブサイトによると、毎年開催されているミス日本コンテストでは、「日本女性の美の最高位」を体現する出場者に栄冠を贈る。欧州にルーツを持つ受賞者を選んだ判断は、美の基準や日本人であることの意味について疑問を投げかける結果になった。
椎野さんは、見た目が原因でなかなか日本人として受け入れてもらえなかったと説明。自身の受賞により、誰を日本人と見なすのかの認識に変化が生まれればと期待を口にした。
私たちは多様性の時代、多様性が必要とされる時代に生きていると椎野さん。自分のように見た目と中身のギャップに悩んでいる人は多いとも述べ、「私は日本人ではないと言われ続けたけど、絶対に日本人なので」自分を信じてミス日本に出場した、認めてもらえて本当にうれしかったと語った。
ミス日本コンテストが最初に開催されたのは1950年。大手紙の読売新聞が主催した。ミス日本は国際的な美人コンテストの一環ではなく、ミス・ワールドやミス・ユニバースのような世界的な大会との関係はない。当初の目的は、第2次世界大戦後の人道援助に対する日本の感謝を米国に伝えに行く親善使節を選ぶことだった。
第1回大会で優勝したのは、後に女優として活躍する山本富士子さんだった。ミス日本コンテストの公式サイトによると、山本さんの「凜(りん)とした気品」はその後、日本女性の新しい美の基準となったという。
15年間の中断を経て、67年には和田静郎氏がコンテストを復活させた。和田氏はテレビで健康美容体操を指導する著名人になった。
現在のコンテストは孫の和田あい氏が運営している。和田あい氏はCNNの取材に、椎野さんをミス日本に選んだ理由について、椎野さんは努力家だが謙虚で、他人への深い思いやりを持つ日本人女性だからだと語った。
X(旧ツイッター)ではユーザーの一人が「カロリーナさんは国籍が日本なんだから、何も問題無い」と書き込み、国際スポーツ大会で日本代表を背負った様々な外国生まれの選手と比較。「彼らもカロリーナさんも日本人です」と指摘した。
椎野さんの日本愛を称賛する声もあった。「日本人ですら日本を大事にできない人が多いのに、小さい頃から住む日本をここまで大事に思い帰化して日本人としてチャレンジしミス日本を手にした事になんの問題があるのか」。Xのあるユーザーはそう問いかけ、別のユーザーも「椎野さんのインスタグラムへの投稿は礼儀正しく丁寧に書かれていた。美しいだけでなく、日本人の和の心を持っている。これこそミス日本」という趣旨の書き込みを行った。
一方、日本人の祖先を持たない人が日本の美の理想を体現できるのかと疑問を投げかける声もあった。日本では、椎野カロリーナの勝利に対する反応が分かれている。この若い女性の受賞によって日本が現代に即したものになると考える「モダニスト」がいる一方、彼女が日本人の親の子ではないという事実に異議を唱える激しい保守派もいる。彼らによれば、新しいミス日本は「真の日本人ではなく、国を代表すべきではない」との立場をとっている。不可避の論争に備えて、一般社団法人 ミス日本協会 理事ミス日本コンテスト大会委員長の和田あい氏は、1月24日にBBCに対して椎野カロリーナは「全幅の信頼を得て選ばれました」と述べ、彼女が日本語や国の慣習を完璧に理解しているため、彼女は「私たちよりも日本人だと感じました」とさえ言い切った。
ミス日本の選挙でアイデンティティの問題がクローズアップされたのは今回が初めてではない。2015年、(アフリカ系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた)宮本エリアナがミス・ユニバース日本代表として優勝した際、彼女に対する誹謗中傷や侮辱が大量に出回った。一部のネットユーザーは、彼女を英語の「ハーフ」から派生した日本語、「ハーフ」と表現した。「彼女は半分しか日本人ではない」として、「純血ではない」と断じるものだった。その1年後、インド出身で母が日本人の吉川プリアンカがミスワールド・ジャパン2016に選出され、中傷などの侮辱を受けた。
そして、2020年10月末に開かれたミス・ユニバース・ジャパン・ファイナルで上位3に選出されたのは、全員ハーフで、多文化のバックグラウンドを持つ女性たちだった。この時の審査員のうち3人が元ミス・ユニバース日本代表だということもあり、過去にどういう人が優勝候補になっていたか、という認識は審査員間で共有されていただろう。その大会では最終的に優勝、2、3位になった女性たちだけが多文化で育った経歴を持つハーフではなかった。このほかにも、柚井愛麗 (スウェーデン系日本人)、リトル満里菜(ニュージーランド系日本人)、平良あすか(ベトナム系日本人)、そしてサイード横田仁奈(パキスタン系日本人)と4人いたのである。これまでの大会と比較しても、日本でこれだけ多様な文化的バックグラウンドを持つ候補者が集まった大会はなかったが、時代の流れは美女たちの中にも止めようもなく表れてきていたのだ。
日本は比較的移民が少なく、民族的に均質な国だ。このため近年では、当局が人口高齢化による穴を埋めるため、外国人住民や労働者の受け入れ拡大に乗り出している。日本は移民に対する保守的な見方と、新たな若い労働者を受け入れる必要性のバランスを取ることに苦心しているが、米調査機関ピュー・リサーチ・センターによる2018年の調査では、移民が国を強くするとの見方を示した日本人が59%に上ってきた。
参照 CNN
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